気だるき一日生きるだけ

オーミヤビ

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 気だるき一日生きるだけ。


 そう、こんな回文みたいに。

 人生というのは、世界というのは繰り返しなのである。

 どうやったって変わりはしない。

 

 決まった時間に朝起きて、決まった時間に学校あるいは仕事に行って、帰って、ウダウダしたら寝る。


 みんな、機械のように決まった動きをしながら、生きている。


 例に則って、僕らもきっと、何かのパーツなのだ。

 

 永遠とも言えるこの世界、ひとりの意志では変化なんてできやしない。

 

 夢も希望も全部空想。


 ────〇〇にしたい。

 ────△△になりたい。

 ────⬜︎⬜︎を変えたい。

 

 


 そんなことを考えるのも、もはや意味はない。


 どこかの歯車が狂えば、何かが変わったりするのだろうか。


 

 ぼーっと、虚空を見つめながら思う。



 何か、面白いことが起きればいいのに。

 例えば、『僕は実は選ばれし救世主だったことが判明する』とか


 行動を起こさず、ただ浪費していく毎日。

 生きているだけ。


 用もなく、スマホをつけたり消したり触ったり。

 無意味な行動…


 今日でもう何度目になる。


 ハぁ、とため息を吐いた。

 

 もう既に、陽は堕ち切っている。

 

 

 ---


 

 胸に手を添えて、そっと目を閉じた。



 この力を使えばあるいは……。

 あぁ、どうかかつての平穏を取り戻して欲しい。




 ────だから全てを“コレ”に。



 既に遠い昔。

 達観したフリをしつつ、若き青春を駆け抜けていたあの頃。


 懐かしい記憶だ。


 

 今はもう、何もかもが失われている。

 輝きも記録も、思い出も能力も


 きっとみんな忘れてしまっただろう。


 全ては闇に葬り去られた。


 もう思い出すことはできない。


 

 いったい、何時いつ歯車が狂った。


 少なくともあの時までは順調だったのに。


 あの時はみんな笑顔を見せた。


 決して犠牲がなかったとはいえないが、それでも全部を解決するために最善だったはずだ。

 

 

 ヤツらの兵器を奪った。

 それを元に攻撃を仕掛けた。


 作戦は好調に進み、敵の物資倉庫を下した。


 長らく苦戦を強いられてきた我々にとって、起死回生の一手。



 ……今、思い返せば、全部ヤツらの思惑だったのだろう。


 途中の成功も、きっと筋書き通り…。


 結局、我々はヤツらの手の上で踊らされていたのだ。

 

 全総力を上げての作戦を決行して………、失敗した。



 我々は敗北した。

 

 救いようがない。

 もう、この世界は変わり果てた。


 

 ハぁ、とため息を吐く。


 体がグラつく、ガタが出始めている。

 出血はひどいし、元より病に侵されている身だ。


 もう、長くない。



 手元を見て、その事実を噛み締める。


 人類に残された希望……


 『時間を遡る』という神をも超越した装置………


 最後の“光”に手を添える。


 ははッ、これだけは、ヤツらも想像できまい。


 ここからが、本当の本当の起死回生だ。


 ポツリと、呟いた。



 「生かせ、異世界」


 

 ひび割れた天井の隙間から、西陽が指している。



 全ては無に帰した、を遮るモノはない。

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