SS2 彼シャツ
「お風呂お借りしました」
お風呂場から出てきた瑞希は、キッチンに立ってお茶を淹れている母さんのところへ行く。
「お帰りなさい瑞希さん。体は温まったかしら?」
「はい」
何があったのかというと学校の帰り道、急に雨が降ってきて傘を持っていなかった俺と瑞希は、全速力で家を目指して走った。
だが、走っても服はびしょびしょで、雨宿りのため彼女は俺の家に来た。
「これ温かいお茶よ。雨が止むまでゆっくりしていってね」
「ありがとうございます、陽菜乃さん」
紅茶が入ったティーカップを持った瑞希は、ゆっくりとリビングへ移動し、ソファに座る。そしてティーカップを目の前にあるセンターテーブルへ置くと隣に座る俺の方に体を向けた。
「碧くんは、お風呂大丈夫なのですか?」
瑞希は同じく雨で濡れた俺のことを心配してくれたので濡れた髪をタオルで拭きながら答えた。
「俺は大丈夫だよ」
「そうですか。あっ、これお借りしてます」
そう言って瑞希は、上に着ている服を俺に見せた。
彼女に言われるまで自分の服を瑞希が着ていることに気付かなかった。
自分の服を瑞希が着ていると思うと何かドキドキするな。じっと彼女のことを見ていると髪が濡れていることに気付いた。
少し時間を置いてから髪の毛を乾かすのかなと思いながらも俺はある提案をする。
「瑞希、後で俺が髪の毛乾かそうか?」
「いいのですか?」
「うん、瑞希が嫌でなければ」
瑞希の髪の毛を乾かすのはこれが初めてというわけではない。前にお泊まりしたときに一度したことがある。
「では、よろしくお願いします」
「あぁ、わかった」
髪を乾かすのは5分後にし、その間は母さんが淹れてくれた紅茶を飲む。
ゆったりとした時間を過ごしていると洗濯機を回し、ハンガーにかけた制服を持った母さんが来た。
「瑞希さん、良ければ今日は泊まっていかない?」
「お泊まりですか? 嬉しい話ですが、私、泊まれるようなものは何も持っていませんよ?」
母さんがこう言い出したらあらそうなのねと諦めるわけがない。
「大丈夫よ、私が何とかするわ」
瑞希は悩み、俺のことを一度チラッと見てから口を開いた。
「では……泊まらせていただきます」
「やったわね、碧」
(母さんの泊まって圧が凄いんだよなぁ……)
瑞希は泊まることを父親である明人さんにスマホを使ってメッセージで連絡していた。
「碧くん、では、髪の毛お願いしますね」
「あぁ……うん、わかった」
洗面所へドライヤーを取りに行き、近くのコンセントへさしてから彼女の髪の毛を乾かすことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます