第7話 生徒会解散!(爆!)
この現状を作るきっかけとなった、忌々しい写真。この写真さえなければ、生徒会の仕事を押し付けられることも無く、彼女との関わりもなかったはずだ。
「この写真探してたのよね。見つかって良かったわ」
「もしかして、無くしてたんですか」
「無くしたわけじゃないわよ。ただ、いつの間にか手元から消えていたのよね」
一般的にはそれを無くしたと言う。
俺にとっては今後の人生がかかっている写真だ。それが他人に見られたらどうなるか。これ以上、普通の学校生活が送れなくなると考えるとぞっとする。
「懐かしいわね。あの頃の小野寺くんの小野寺くんはカッピカピだったわ。あの本で少しは潤ったかしら?」
小野寺くんの『
あと俺の息子はそんなにカッピカピじゃない。多分。
「知りません。あれから一切見てないので」
「見てない……?」
如月先輩は一瞬ぽかんと目を丸くする。が、すぐにキリッとした表情を浮かべ、熱く語り始める。
「小野寺くん、それは損してるわ。あれは今まで読んできたエロ本の中で、ランキング上位に入るくらいのお気に入りなのよ。それを読まないなんて考えられないわ! あ、分かった。ジャンルが好みじゃなかったんでしょ。確かに性癖は人それぞれだし、私だってオカズを探すのに一時間かけたりすることもあるから、その気持ちは分かるわ。あれは青春イチャラブ系だったから、激しいNTR系とかが良かった? あ、もしかして虫とかに興奮する特殊性癖持ちだったりするかしら。それならいいのがあるわ」
あるのかよ。普通にどんな内容なのか気になる。
って、駄目だ。また如月先輩のペースに持っていかれる。
「そんなんじゃないです。ただ、怪しい人から貰ったエロ本なんて、怖くて見れたもんじゃないので」
「でも読んでたじゃない」
如月先輩は写真をつまんでひらひら揺らす。
駄目だ。これ以上、この話を続けたら、この意味もないカスみたいな会話で一日が終わってしまう。何とかして話を逸さないと一生仕事が終わらない。
「その時はたまたまっていうか……。って、そんなことよりも、生徒会の仕事手伝ってください」
「えー、めんどくさいわね」
だらーと机に伏せ込む如月先輩。いかにもめんどくさそうなオーラが溢れ出ている。
とりあえず、何とか話を逸らせれて良かった。ちなみにあのエ◯本は大切に保管しています。(使用済み)
「何で仕事なんかしないといけないのかしら。生徒会に入ったらもっと無茶苦茶なことができると思ったのに、いざ入ってみたら仕事、仕事、仕事。やってらんないわ」
やってらんないのはこっちだけどな。
喉まで出かかったその言葉を飲み込む。
「でも、生徒会を辞めたら、あの変態黒服集団に囲まれて下ネタも言えなくなるだろうし……。辞めたら辞めたで本当に好き勝手できなくなるわ」
さすがの如月先輩も、四六時中監視されていることは辛いようだ。普段、如月先輩は学校の中で黒服に監視されており、以前のように好き勝手できなくなっている。しかし、(交渉の結果)生徒会室の中では自由にすることが許され、黒服もついてこない。
どんな交渉をしたのか気になるところだが、聞いても『聞かない方があなたのためよ』と絶対に教えてくれない。謎だ。
「ここだけが私の楽園よ。絶対に来年も生徒会長になってやるわ」
まて、来年もこの地獄が続くっていうのか。寒気がする。あ、でも……。
「生徒会長にさえなれば、やりたい放題だし、便利、じゃなくて、優秀なメンバーも生徒会長特権で自由に入れ放題! 自由すぎて最高だわ!」
「……一応聞くんですけど、生徒会は最低でも三人揃わないと、選挙に勝ったとしても強制的に解散させられるって知ってますよね」
「え? ど、ど、どういうことかしら」
やっぱり知らなかったのか。こんなに動揺している如月先輩は初めて見るかもしれない。ちょっとだけ、一矢報えたようで嬉しく思う。
「就任しても半年までに三人集められなかったら、今の生徒会は無くなって、再選挙でまた新しい生徒会が作られるってことです」
「そんなの聞いてないし、聞いたこともないわ!」
「一応、他のメンバーも選挙で決められるので、一気に辞めていかない限りは大丈夫なはずなんですけどね」
如月先輩が生徒会長に就任したことによって、他のメンバーが辞退していった。そのため、生徒会解散の危機。果たして、今までこんなことはあったのだろうか。
まあ、俺にとっては解散してもらっても構わない。まだ一か月しか活動してないし、生徒会の仕事と下ネタしか思い出がないし。
「ちょっと待って、私が生徒会長になったのが十二月で、今は五月の後半あたり……って、あと三日!?」
あと三日で生徒会解散という紛れもない事実。
どうするんだろーって思ってたが、こんな結末になるとはな。
「たった三日しかないなんて……。そもそも、いきなりこんなこと言われてもどうしようもないわ! 普通は学校側から事前に通達されるものじゃないの!?」
スマホを開き、L〇NEを開く。そこから『琴葉(如月先輩)』と書かれてあるところをタップする。悲しいことに、友達が少ないため、すぐに見つけることができた。
「これ、ずいぶん前に送りましたよね」
如月先輩にトーク画面を見せつける。そこには、一か月前くらい(生徒会就任直後)に送った『生徒会存続について』という題名のプリントの写真が載っている。もちろん、学校からだ。
「学校はちゃんと通達してくれてましたよ。それに、このプリント、直接渡しましたよね? L〇NEも未読無視だし、ちゃんと見たんですか?」
も、もちろんよ、と答える如月先輩。明らかに見てないな。動揺具合からひしひしと伝わってくる。
「まあ、百歩譲って学校は悪くないとして、どうしたらいいのかしら……。仕方ないわ、あれを使うしかないわね。小野寺くん」
如月先輩は俺を呼び出すと、カバンから一冊の分厚い本を取り出した。
「はい。ここのページを百部くらい、今すぐ印刷してきて」
なになに、『万人向けエ◯漫画TOP10リスト』? は?
「あまり公表したくはないのだけど、つべこべ言ってられないわ。これを印刷して、多くの人に配るのよ!」
「いやいやいや、そんなことしたらやばいですよ! ていうか、そもそも、その本なんなんですか!?」
「これ? 今まで読んできたエ◯漫画を全てまとめた本よ。それで、この中で特に良かったのをランキングにしてるの。ほら、あなたが生徒会に入るきっかけになった一冊も乗ってるわ」
確かにあのエロ本は凄かった。
小さな恋心から芽生えていく性への関心、やがて二人は止まらなくなり堕ちていく……。ありがちなストーリーにも関わらず、描写表現が丁寧でめちゃくちゃ感情移入できる。その上、絵も綺麗でめちゃくちゃ濃く、エロい。
ん!? ちょっと待て、これが十位!? じゃあ、一位はどれだけ凄いんだ!?
「ふふ、一位、気になるでしょ? 印刷してきてくれたなら貸してあげてもいいわよ」
一位のエ◯漫画……。っ、駄目だ。心の底から気になるが、この人の言いなりにはならない。
両手で思いっきり頬を叩く。目が覚めたような気がする。
「なに? 自虐的興奮?」
「違います! 俺は絶対に手伝わないので、勝手にやってください」
「ケチくさいわね。ただ印刷して配るだけじゃない」
「え、俺が配るんですか?」
「当たり前よ。私が配ろうにもあの黒服に囲まれて配れないだろうし、あなただったら、西條家のご令嬢様がいなかったら自由に配れるじゃない」
それ俺が変態扱いされるやつじゃないか。
ちょっと想像してみよう。校門付近で『万人向けエ◯漫画TOP10リスト』を配る俺、喜ぶ男子、気持ち悪い目で俺を見る女子、最終的には先生にこっぴどく叱られる俺、精神病院に行くことを勧められる俺。
ジ、エンド。俺の学校生活、終わり。
「絶対嫌です!! 俺、変人だと思われるじゃないですか!」
「もう思われてるんじゃない? だって、こんな生徒会に居続けているあなたよ? 普通の人から見たらあなたも異常じゃない」
何を今更、みたいな顔で言うな。あと、自分で『こんな生徒会』って言うな。
「とにかく俺は絶対に手伝いませんから」
そう言うと同時に、小さな舌打ちが聞こえたのはきっと気のせいだろう。
「じゃあ、どうしろって言うのよ。もう小野寺くんを脅すしかないのかしら。えっと、写真、写真……」
「普通に人権侵害ですよ。訴えますよ?」
「冗談よ。流石にそんなことはしないわ。あーあ、誰でもいいから入ってくれないかしら」
「そんな物好きな人いますかね?」
「さあ。どうかしら。この学校、無駄に生徒が多いから、一人か二人はいるんじゃない? その一人か二人が訪ねてきてくれたら最高なんだけど、そんなこと起こりは————」
その時、ノックの音が聞こえた。
「「……え?」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます