第2話 極変態で性知識100%の生徒会長
――――性禁止条約。
突如、変な条約が作られてしまった。そもそも『成人するまで性知識を知れない』って、なんなんだ。俺だったら成人になっても、“性”を受け入れるのは無理なような気がする。
「まあ、性禁止条約と言っても、それは愛しの孫娘の前だけでの話だ。それ以外の場所では自由にしてくれればいい。それに、公共の場でそんな言葉は普通は言わないだろう。少し気を付けてくれれば、いつも通りでいいんだよ」
それもそうだ。もし下品な言葉を言うとしても、それは大体友達とふざけあう時だし、そもそもこういう系の話はあんまり堂々とできるものではない。
……それが普通の人だったらな。
「その条約とやら、私は反対です」
静寂の中、一つの声が上がる。
彼女は人混みから抜け出し、教卓へと一歩ずつ向かっていく。物怖じせずに堂々と歩くその姿は、容姿の良さも相まって美しい。ただ、それは見た目だけの話だ。
「初めまして。好きな乳房のサイズはDカップ、好きな陰茎の長さは13.56cm。特技は、体位を見ただけでその名称を答えることができること。嫌いなことは萎えること。失礼、自己紹介が遅れました。私はこの学校の生徒会長を務めている、
そう。容姿がいいのにも関わらず、口を開けば下ネタの嵐。性に関する問題行為も何度か起こしており、この前も全生徒に手作りコ◯ドームを配ろうとしていた。
彼女に関する噂は絶えない。そのせいなのか、生徒会長だからか、この学校で彼女を知らない人はいない。彼女がどうやって生徒会長になれたのかは謎だが、なぜか他の生徒の10倍くらい票を集めていたらしい。噂によると、何か
「ふむ、実に丁寧で卑俗な自己紹介をありがとう」
「卑俗、ですか?」
「そうだ。よく人目も気にせずにそんな低劣な言葉を発せるな。そもそも、君は私の前でそんな口を叩ける立場か?」
これが西條家・グループのトップの貫禄か。たったの一言で、一気に空気がピリついた。流石にあの人もこれ以上は言えないはずだ。しかし、
「不快な気持ちにさせてしまったなら、申し訳ございません。しかし、性は切っても切り離せないもの。私たちは性から始まり、性で終わります。つまり、性は平等……性を語るのは立場など関係ありません」
無茶苦茶な理論で切り抜けてきた。俺には彼女の言っていることが理解できない。
「そうか、そうか。これは一筋縄ではいかなそうだな。この手は使いたくなかったが、仕方ない。入ってこい!」
勢いよく扉が開く。そこから、黒服が計五名入ってきた。黒服達は彼女を取り囲む。周りから見たら、かなり異常な光景だ。
「この人達は?」
「今日から君を監視してもらう者たちだ。学校生活では四六時中、この者たちが付いてくると思ってもらえばいい」
「……あの、一つお願いがあります」
「お願い?」
「はい。この方たちのスリーサイズ、そして、チン長を教えて欲しいんです」
とんでもない発言だ。
思いがけない言葉に西條さんは動揺しているようだが、当の本人は堂々としている。
「ち……し、知るか! そもそも、そんなことを知ってどうなるんだ」
「私の近くにいるのなら、その方々のことをよく知っておきたいのです。あと、実は今、職業による平均部位のサイズ(スリーサイズ・チ〇コの長さ)を調べていて、それのデータが欲しいな〜って」
「完全に後半が本音じゃないか! 却下だ。お前にそんなことを知る権利などない!」
「そうですか。じゃあ、いいです。自分で測るので」
そういうと、彼女はポケットからメジャーを取り出し、信じられない速度で測定を始めた。あまりの速さに姿が霞んで見える。
「ふう、彼女は84・56・84で、彼は12.45㎝。あらかた予想通りって感じね。あ、おまたせしました」
どこか満足そうな彼女。
その裏腹に、西條さんは顔を真っ赤にして震えている。おまけに血管が浮かび上がっていた。うん、これは相当怒ってるな。
「……私もあまり怒りたくはないが、こればかりは君のせいだ。おい」
その合図をきっかけにスクリーンが降ろされる。数分後、映ったのはどこかの部屋だった。様々な実験道具が置かれている。そして、奥の棚にはいかがわしいおもちゃが積み上げられていた。
「こ、ここは!」
「そうだ。ここは君の大切な場所なんだろう? いいか、これ以上ふざけた行動を取ったら、ここを破壊する。破壊されたら困るだろう」
「っ! そこには、長年研究したローションの秘伝レシピや特製おもちゃが大量に……」
彼女は悔しそうな顔をしながら、膝から崩れ落ちる。
「これで邪魔する人は誰一人いなくなった。性禁止条約の締結だ」
こうして【性に関する言動を孫の前で絶対にしてはいけない】というルール、即ち性禁止条約が始まった。
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