第1話 ナニコレ⭐︎性禁止条約!?
いつも通りの時間に学校に行き、いつものようにスマホを見て時間を潰す。そして、普通に授業を受けて、普通に業務をこなして帰る。それが俺の日常だ。
今日も何も変わらない一日を過ごす。そう思っていた。
「おーい。ガキどもさっさと座れー」
チャイムが鳴ったと同時に入ってきたのは、担任……じゃなくて、誰この人。
びしっとした黒のスーツに身を包み、前髪をぱっつんにした女性。かなりの美人で、遠目で見てもスタイルの良さが伝わってくる。
「え、誰?」
「新しい担任?」
「てか、すごい美人じゃね?」
教室が一瞬で騒がしくなる。
まあ、俺にとっては担任が変わろうが変わらないがどうでもいいけど。
「ねー、先生名前なんて言うの?」
「前の担任と交代したんですか?」
「先生、ちょー美人! 彼氏とかいるの? 募集中なら俺が……」
ドンッッッ!!!
突如鳴り響く轟音。空中を舞う破片。
よく見ると、教卓に拳サイズの穴が空いていた。
「座れって言ってんだろ。次騒がしくしたら、次はお前らの頭をかち割るからな」
え、怖。産まれて初めて、心の奥から恐怖を感じた。
みんなも同じなのか、そそくさと席に座っている。うるさい陽キャすら、一切騒がない。
「よし。あんまり手焼かせるなよ。えーと、まずは自己紹介か。えー、私はー、西条グループで近侍、つまりメイドをしてまーす。名前は遠藤でーす」
メイドって言われても、この品のかけらも無さそうな人が? てか、西條グループって言ったよな。西條グループってあの大財閥の……? そんなまさかな。
「まあ、普通は頂点に値する西條グループが、こんな豆腐の端っこみたいな場所に来るわけないからな。だから信じてもらえないと思う」
豆腐の端っこ……。
いや、それはどうでもいい。
確かに、西條グループは総資産100兆円を超える大財閥の一つであり、日本だけではなく世界でも名を轟かせている。教科書にもその歴史が出てくるほどだ。
そんなグループの人がこんな普通で平凡な学校に来るはずがない。
「だから、証拠を持ってきた」
そう言うと、彼女は側に置いてあったアルミケースを教卓の上に置き、素早く手慣れた手つきでアルミケースを開ける。その中には、札束がごっそりと詰まっていた。
「一億だ。もちろん、本物だ」
初めて見る大金に思わず唾を飲み込む。宝くじでも当てるか、よほど仕事を頑張らない限り、一億という大金を生で見ることはできないだろう。
しかし、それは西條家を示す証拠には適していた。
「結局のところ、金を見せるのが一番手っ取り早いからな。まあ、これで何となくは信じてもらえたはずだ。……さて、そろそろ時間だな」
彼女はアルミケースを閉じると、腕時計を一目見る。
「よし、ガキども立て。体育館に移動するぞ。騒がしくすんなよ」
脅しの言葉に恐怖を感じ、体育館へと早足で移動する。体育館には俺達のクラスだけではなく、全校生徒・全教員が集められていた。みんな突然のことで混乱しているようだ。
そのまま五分ほど待っていると、舞台袖から校長が出てきた。心なしか顔が真っ青に見える。
「えー、みなさん、これから大事なお話をします。突然のことで驚いているかもしれませんが、しっかりと聞いてください。今からお話しすることは、この学校全体で守らなければなりません。ではよろしくお願いいたします、西條様」
……ん? 西條様?
「みなさん、初めまして。西條家の総長、また、西條グループの代表を務めている、
これが空いた口が塞がらないってやつか。テレビや新聞でしか見たことない人が、俺たちの目の前にいる。
こうなってくると、ますます訳が分からなくなってきた。何でこの人がこの学校に?
「何で西條家の党首がこんなところにいるか、ってみなさんは不思議に思っているはずだ。なので、簡単かつ迅速にお話ししたいと思う。まず、私がここに来た理由、それは皆様にお願いがあるからだ」
お願い?
「私には一人の愛する孫娘がいる。今までは歴史ある学校で学校生活を送っていたわけだが、突然この高校に入学したいと言い始めたんだ。愛する孫の願いでなかなか断ることができなくてな……ということで、明日からこの学校に入学することになった」
その言葉をきっかけに周りがうるさくなる。
俺だって信じられない。騒ぎたくなる気持ちも分かる。だが、黒服のみなさんはそれを許してくれないらしい。じっと俺たちを睨みつけると、辺りは一瞬で静かになる。
「ただ、一つだけ問題があってな。これは西條家の話になってくるんだが、西條家には【成人するまで卑猥な言葉やものを一切知ってはいけない】という決まりがあるんだ」
……は?
「今まではそういうのに触れない環境にいたんだが、ここではそう簡単にはいかないだろう? ということで私はあるルールを作った。【性に関する言動を孫の前で絶対にしてはいけない】というルール、即ち性禁止条約だ」
…………は???
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます