第15話 居候という名の社畜社員?

 モニカのお腹もひと段落ついたのでギルドに向かった。ギルドに入るとタニカルさんとルモアさんが武装して『待っていた』。


 危険な匂いがしたので180度方向転換し、ギルドを出ようとすると、後ろからきたモニカに捕まり、逃走に失敗する。


 モニカに連行されながら、タニカルさんがいるとこに向かう。


「お父さん、どうしたの?武器なんか持って。クエストやるの?」


 モニカがワクワクして尋ねる。どうやら、新米パーティーが1週間経っても帰ってこないらしい。行った場所は調査し尽くされたダンジョンで、新米冒険者の訓練に便利な場所らしい。


 今回のクエストは、スライムゼリー10個の納品と、最下層地下3階にある湖の水を小樽5本分持ち帰るというものだった。モンスターも出るが、確実にクリアして、2〜3日で帰ってこられる程度のクエストだったが、いっこうに帰ってこないため、調査隊を出すことにしたらしい。


 どうしてもスライムゼリーがドロップせず時間がかかっている可能性もあるが、1週間は異常と判断されて、救出クエストが作成されたらしい。


「それは大変だ。それでタニカルさんが行くことに?」


「ええ、今、ワイバーン討伐が長引いて、中堅以上の冒険者が出払っているのです。今動けるのは私たちしかいないようなのですよ。さすがに新米冒険者が行方不明になったクエストに新米冒険者を向かわせるわけにはいかないので。」


 確かに、同じレベルの冒険者を送ればミイラ取りがミイラになる可能性があるな。


「なら急いて助けに行かないといけないですね。タニカルさん、気をつけてください。」


「ルシア様、できれば一緒に来ていただけませんか?」


 いやいやいやいや、おかしい!中堅以上のクエストですよね。


「さっき、マスターも言っていたでしょ、無謀なクエストは薦めないって、私は1レベルのモブ魔術師だよ。」


「そうだ、ギルドカードできていますよ。どうぞ、手にとればパラメータとかが浮き出てきます。」


 ギルドカードを渡されて、ギルドカードに文字が刻まれる。


職業:魔術師

レベル:1

能力値

筋力:6

器用さ:12

敏捷さ:12

体力:7

魔力:12

知力:11

直感力:12

精神力:15

最大生命力:80 (体力*10+レベル*10)

最大魔法力:160 (精神力*10+レベル*10)

物理防御:3(体力/2)

魔法防御:7(精神力/2)


スキル

・言語(人族語)

魔法

 『火矢』『熱操作』『水作成』『水纏い』『空気作成』『風纏い』『足絡め』『石弾』『小治療』『浄化』『聖属性付与』『暗視』『闇矢』

 

「ギルドカードにもあるでしょ!マスターも言っていたじゃ無いか、危険な事に首を突っ込むなって忠告してくれたでしょ!」


「それは、普通の冒険者で、ルシア様は規格外なので。お願いします。私の勘が危険と言っているのです。」


 その危険に私を巻き込むって、あんた、どゆこと?


「ルシア様は私が守るから!」


 モニカが言うと、私が疑うような目でん〜〜〜?と言うと


「今度は本当だから!」


 さらにん〜〜〜〜?とモニカを見上げて言う。


「本当に本当だからあ!」


 はあ、タニカルさんには世話になりまくっているし、この先も世話になりそうだし、家主だし、最悪、就職先でもあるし、やるしか無いか。


「・・・、はあ、わかりました。一緒に行きます。」


「ありがとうございます。ルシア様がいれば安心です。」


 買い被りすぎだ!プレッシャーかけないで!


「でも、ダンジョン探索なのでしょう、その手の冒険者をつけてくれないのですか?」


「それはもう、用意済みだ。ベルタ、入ってこい。」


「ああ〜、ベルタ〜。」


「モニカ、一緒に冒険なんて久しぶりだな。」


 先ほどあったベルタだった。ギルドに用があると言っていたのはこれに呼び出されていたのか。


「タニカルさん、ルモアさん、また勉強させていただきます。ルシアさん、いきなりパーティーを組むことになったね。まあ、タニカルさん達もいることだし、気楽にいこう。」


 まあ、確かにタニカルさん夫妻がいれば大概のモンスターはなんとかなる。

ベルタもモニカより数段しっかりしてそうだし、大丈夫そうだ。確かにいくら強くても治療なしでも潜るのは無謀だ。仕事は治療担当程度であろうか。


「ベルタ、私、すっごい成長したんだから、見せてあげるね!」


「それは、楽しみだが、あまり暴走しないで頂戴ね。」


 神の悪戯か?やっぱ神様は私の事、嫌いなの?



 私がマジックボックス持ちと言うこともあって、詰め込めるだけの食糧を持たされる。遭難した新米冒険者が腹を空かせているかも知れないからだ。私はこのために呼ばれたのかも、それなら危ないことはさせられないだろう。無理やり自分を納得させる。


「へえ、魔法蔵持ちなら、レベル関係なくパーティーに呼ばれそうだね。」


 ベルタさん、迂闊なこと言わないで!ああ、モニカが向こうで目を光らせた!


「ルシア、魔法力ポーションだ。持っていってくれ、生憎、ワイバーン討伐で大半持ってかれて、5本しか無いが、我慢してくれ。」


 5本、500ポイント、十分だ!モニカが魔法力ポーションを見て顔を赤らめる。


「モニカ、顔真っ赤にしてどうした。トイレは今のうち行っておいで。」


 ベルタに言われて、「違うもん!」って言って、うにうにしている。私に口移しで飲ました事を思い出したのだろう。


 モニカはこんな(見た目が)少年にキスしたぐらいでうにうにしてしまう子供なのか、ショタ好きなのかどっちなのだろうか、モニカの将来に一抹の不安を覚える。他に、ロープやザイルなど登攀用道具もいれる。


「本当に、ルシアは便利だな。もう少し小さかったら、リュックに入れて冒険できるのに。」


 ベルタが笑って言う。アイテム扱いされる。


「ベルタ、ルシア様はアイテムじゃ無いんだから、・・・・でもそれはそれで可愛いかも、リュックに入れられるルシア様・・・。」


 ベルタは冗談で言っただけなのだが、ベルタはモニカから距離をとる。私もモニカから距離をとる。モニカが気づき、「違う〜〜。」と怒りだす。ルモアさんが見かねて無言の威圧で皆を黙らせる。


「緊張しすぎるのもよく無いけど、ね。」


 美人の目が怒っている微笑みって超怖い。ちびるかと思った。悪いのはベルタとモニカです。私は何も発言していませんよ!



 タニカルさん、ルモアさん、モニカ、ベルタ、私の五人パーティーは、新米パーティーが行方不明になったダンジョンに向かう。徒歩でも半日程度の距離にある森の奥にある。道中は至って平和、街の近くってこともあり、盗賊もモンスターもエンカウントしない。


 遠方だがワイバーン討伐などで各国の冒険者や騎士団が集まっているらしく、今の時期、このあたりで馬鹿する奴はいないのであろう。ワイバーン討伐というより、ワイバーンの皮、鱗、角、牙などの争奪戦とも言われている。


 ワイバーンにとってはとてもかわいそうな事だ。ま、私には一生関係ない事だがね。森に着き、森を進み一時間ほどで洞穴に到着する。


 昔から水の洞窟と呼ばれ、スライムが多く棲息し、最下層に湖があり、その水はとても美味しく、料理や、酒の原料に重宝されるらしく、新米冒険者はその水を持ち帰るクエストをよく受ける。


 適度な戦闘もあり、見返りも良いので、人気のクエストだ。また、水を欲する人も多く、クエストが品切れになることもない。なので、しょっちゅう冒険者が来るので、スライムが放置され大繁殖とかも起きないし、近場の村も冒険者がよく立ち寄ってくれるので、盗賊やモンスターに狙われないので、このダンジョンは皆に慕われていたりする。


(もちろん、村人は入らないが。)


 普通、ダンジョンが近くにあると嫌悪する村が多いはずだが、こういうこともあるのかと感心する。そのうち、ダンジョンの入り口に宿屋や飯屋ができるのでは無いだろうか。


 ダンジョン内は松明を必要としなかった。魔法の光源が要所要所に設定されていて、困る事はなかった。これも新米冒険者にはありがたい。だがこんなもので経験になるのだろうか・・・。


 ダンジョンでの隊列はベルタが先頭で、罠や敵を警戒、そしてすぐに攻撃に入れるルモアさん、前衛に立ったり、弓で攻撃したりと多彩に動く、そして自称ルシアのガーディアンのモニカ、そして荷物持ちの私、しんがりはタニカルさん、防御力も高く、不意打ちやバックアタックにも強い。


 なかなかの布陣だ、あと、やはり斥候がいるのはデカい。罠感知も絶対では無いが安心度が違う。


 ただ、ベルタは身軽に動くためにショートパンツの姿で、太腿が眩しい、ルモアさんもモニカもショートパンツは履いているが、スカートと足首上ぐらいまでの腰マントを履いているのでベルタほど露出はない。


 おじさん目線をモニカが感じ取ったか、ジト〜と見ている。おっとっと、最近モニカの勘が冴え渡っているようだ。気をつけよう。子供の教育に悪いからね!


 どうやら罠とかは無く、いつも通りのダンジョンで、新たに何かが現れた気配も痕跡もないらしい。とりあえず、スライムが多い地点を見た後、最終目的地の湖に到着した。


 ベルタが手で皆を制する。いつもと様子が違うようだ。湖の手前に、今までなかった大穴があるそうだ。


 あたりを警戒したが、モンスターとかはいなかった。大穴が追加されているだけらしい。


 大穴の周りにパーティーがキャンプしたと思える痕跡があったので、休憩しているときに大穴が開いて、落ちてしまったように見える。


 穴の下まで深くて見えない。石の落下音で高さを測ろうとしていたベルかを静止させ、落とそうとした石に「聖属性付与(5)」を発動する。これで落下音だけで無く落下場所や穴の側面を確認できる。


 ベルタが、親指を立てて「いいね」して、石を落とす。ベルタは数を数えているようだ、しばらくして、カツーンと音がする。落ちるまで穴の側面を確認すると人の手を加えられた壁であった。


 どうやら、この湖は大きな人工的な滝の中腹で、流れ込む水がなくなり、流れ出るところが埋まって出来た湖だったようだ。


 大穴は出来たが、以前のように水は流れ出さなかったのは幸いした。大穴と同時に流れ込んでいたら、新米たちは無事では済まなかっただろう。


 このダンジョンは何かしらの水を使った施設だったのだろう。水の洞窟って名前はあながち間違っていなかった。穴の底には新米たちはいなかった、おそらく登ることは不可能と考え、別の脱出経路を探しているのだろう。


 とりあえず、ロープを硬く固定しおろし、下に降りて見るとこにした。

ロープを伝って下りるにはちょっと時間がかかるので、縦穴の距離を計算し、「風纏い(8消費)」を五人分発動し、全員にかける。


 自由に飛ぶ事は出来ないが、落下で軟着地できる事はあまり知られていない様だ。

モニカはやった事があるので、「わーい。」と言って落ちていく。


 ベルタも最初は躊躇していたが、モニカを見て覚悟を決めて飛び降りる。

30秒ぐらいで降りられた。ロープを使っていた場合、同時にロープを何人も使えないし、安全に気をつけて下りようとすると、何十分かかっただろうか・・・。


「この子、本当に役にたつな、ポケットに入れて持ち歩きたい。」


 ベルタがまた私をアイテム扱いする。ベルタ、その冗談は、モニカを壊すからやめろ!奥でモニカが「手乗りルシア様、可愛い。」とかボソって言っている。


 怖い。


 そんな魔法とかないよね!


 落下地点にはキャンプの跡があった。1日ほど登れないか挑戦したのだろう。

だが、無理だったため別の脱出経路を探しに行ったのだな。


 前世の世界では遭難したら動かない事が鉄則だが、それはレスキュー隊がいる事が前提だ。この世界では必ずしも救援がくるわけではない、体力があるうちに探すのもアリかも知れない。


 ここからは松明が必要だ。魔法の光源は見当たらない。私以外松明を持ち、火を付ける。私が松明を持つと、周りの人に当てかねないので、持たない方が良いとなった。ただ、みんなのダガーに「光魔法(10)」をかけた。


 モニカが鞘に仕舞えば光を咄嗟に消せるし、松明が消えたときに咄嗟に光源を作れるから便利なのだよ。と自慢げに言う。ベルタも「ヘ〜。」と曖昧に答える。


 現在魔法力は95消費、今ポーション飲むか悩む。5ポイントでも無駄に出来ないな、あと4ポイント以上使ったら飲もう。5ポイント使うと昏倒しちゃうからね。


 横穴が一つある、とりあえず、そっちを進む。今までと違う、みんな慎重にとタニカルさんも気を引き締める。モニカもうんと無言にうなずく。



 横穴も人の手が加えられていて、ちゃんとした通路になっている。だが水路ではないとは断言できない。水が来る事はないと思うが、慎重に行かなければ行かない。

水路なら罠が無いだろうから、それはそれで安心なのだが・・・。


 罠はあった様だ、警報タイプ、だが綺麗に解除されていたらしい。新米とはいえ冒険者、ちゃんとうまく解除できていると褒めていた。腕の良いスカウトがいれば生存確率もぐんと上がる。まだ望みはありそうだ。


 一本道を進むと、半開きの扉があった。扉には閉まらない様にくさびが打たれていた。閉じ込められない為の対処だ。


 ベルタが真剣な顔をしているが、少し誇らしく「えらいえらい」と言いながら、あたりを警戒して進んでいく。知り合いだろうか・・・。


「戦闘の音がする、この先100メートルの扉の向こう側!」


 ベルタが叫ぶ!タニカルさんとルモアさんが走り出す。罠は新米のスカウトを信じて全速力、ベルタも走り出す。モニカは私を脇に抱えて走り出す。


 こら、物の様に扱うな。走れるから!


 まあ、歩幅が小さい分少し遅いが。扉はしまっていてびくともし無い、閉じ込める罠が発動したのだろう。今までちゃんとやっていた様だが、失敗したか、何かがあったか、扉の向こう側で今も戦闘が継続されている様だ。


 タニカルさんが叫ぶ、「もう少し頑張れ!すぐに助ける!」向こう側から、救援だ!とか聞こえる。ベルタが扉の罠を解除している。難航している様だ。


 モニカが「がんばって!」と応援を送る。私は魔法力4ポイントなんて気にしていられ無い、ポーションを1本飲む。


 扉の罠を解除できた様だ、扉がギギギーと開く。開き切ったところに、ベルタがくさびを2本入れ、剣を鞘に入ったまま振り切って、くさびをさらに押し込む。


 戦闘状態は部屋の角にパーティーが追いやられて、前衛がなんとか後衛を守りながら死守している。


 後ろで意識を失っているのか死んでいるのか倒れているメンバーが二人いる。敵は4本の腕の化け物が2体、全ての手に剣を持っており、斬撃を繰り返している。


 防御に徹しているおかげで辛うじて耐えている。タニカルさんとルモアさんが背後から4本腕に攻撃を入れる。皮膚は硬く致命傷にはならなかったが、2体の4本腕はターゲットをタニカルさんとルモアさんに切り替えた様だ。


 タニカルさんが間合いを開けつつ、新米パーティーから4本腕を引き離す。その隙を見てベルタとモニカ(と抱えらられた私)が新米パーティーのところに駆け出す。


 倒れているのは魔術師風の少女と神官風の少女、倒れた二人を庇っていたスカウト風の少女と攻撃に耐え続けていた二人の青年、よく頑張った!


 魔術師風の少女と神官風の少女は首を切られて気絶しており、盗賊風の子がずっと抑えていたのだろう。


「そのまま押さえていろ!」


 私も右手で魔術師の女の子、左手で神官の女の子の首を押さえ、各手の「小治療(10消費)」2倍がけを4分割にわけ、傷口に一列になる様に配置し、継続局所治癒、終了条件は魔法力が無くなるか、終了命令を出すまで!


 発動に計、40消費し、残り110を流し続ける。今回は生命力への接続はなし、ごめんだけど、赤の他人にそこまででき無い。助けられなかったらごめん。


 魔法力が残り10になった時に、二人が目を覚まし、傷が消えた事を確認して魔法を止める。


 モニカの時のような、肩から心臓までの袈裟斬り程の傷ではなかったからか。そして、ポーションを1本飲んで、前衛二人を「小治療(10)」を2回ずつ掛けてあげて、ちょうど残り50ポイント、もう一本ポーションを飲んで、タニカルさんに加勢に向かう。


「タニカルさん、全員無事だ!」


 そう伝えて戦況を把握する。タニカルさんでさえ苦戦していたが、モニカとベルタの参戦で、少しこちらが有利になる。


 だが、4本腕の斬撃と固い肌がいつでも戦況を覆す可能性を秘めている。何か、決定だが欲しい。だが、2体と4人の乱戦状態、下手な援護魔法は返って邪魔になる。


「タニカルさん!そいつは火が弱点だ!リコのファイアージャベリンだけがまともに通っていたから!」


 タニカルさんが足元の松明を蹴り上げて、片手で取って、殴りつける。4本腕は怯んだが、斬撃で松明を切り伏せる。効きそうだが、火力が足り無い。


 燃え上がらせ無いといけ無い。炎か、だが私の「火矢」程度が通るとは思え無い。

火、炎、火・・・・・。行けるか!


 最悪、みんなで、ダッシュで逃げる羽目になりそうだが、このままではじりじりやられる。


「タニカルさん!ルモアさん!2体を一カ所にまとめ、5秒で良い、隙を作ってください!」


 タニカルさんと、ルモアさんは戦いながらうなずく。


「モニカ、ベルタ、離れていろ!」


 タニカルさんが言い、ルモアさんと肩を並べる。そして二人のコンビネーションで斬撃を弾いていく、そして背中同士の位置につき、何の合図もなく二人は別方向に避ける。2体の4本腕の斬撃が同士討ちをする。


 さすがタニカルさん夫妻だ。最強の二人!これは賭けだ、また賭けかよ!


 また初めての試み、成功するかわから無い、だが成功する。成功し無いわけがない、大した話じゃ無いからだ。


 だが、魔法の強制力で失敗する可能性がある。それだけだ、できるはず!

意識をマジックボックスに向けながら、左手で「石弾」に近い魔法を構築する。


 右手で「火矢」を構築する。別の魔法の同時構築、だがこれが問題では無い、左手で行うのは、石では無い物の発射である。


「石弾」は術者の認識している地属性の物を打ち出す。マジックボックスの石も認識していれば打てた。


 だが、射出するのはオーガ殺し、オーガ殺しの瓶は土器で地属性のはず、火が付くアルコール度数、油を持参しておくべきだったと後悔する。


 今回は神様、恩恵いりませんよ。2体の4本腕にオーガ酒を2本射出、4本腕がオーガ酒を浴びる。そして「火矢」を正確に精密に高速に打ち込む!


 一瞬で4本腕が燃え上がる。身悶える!火を消そうと剣を捨て手で体を拭おうとする。


 だが、油やお酒とかは拭って落ちるものでは無い。燃え続ける。念の為に、もう2本オーガ酒を撃ち込む。さらに燃え上がる。1本金貨1枚の価値がある酒の味はどうだ!


 4本で金貨4枚だぞ。残り4本だ、畜生!勝負はついたが、念の為、タニカルさんにとどめを刺しておいてもらった。



 新米パーティーがヘロヘロ状態でタニカルさんにお礼をいう。


「いや、お礼はルシア様に言ってくれ、ルシア様がいなければ危なかった。」


「いやいやいや、タニカルさんたちがいなかったら、扉開いた瞬間終わっていたよ!私は、ただ燃えるお酒を投げて火をつけただけだ。それも、二人の超連携が有ったからこそ実現できた。順番にやっていたら、何人か死んでいただろうし、私が目をつけられて最初に死んでいただろう。」


 もう、過大評価やめてって!


「タニカルさん、この小人族の方は?」


「私たちを何度も窮地から救ってくださった方だよ。」


「ちょ、言い方!変な誤解を産む様な言い方やめてくださいよ!」


 タニカルさんほどの人の窮地を助けるなんて、それにリコたちのあの傷を治せるのって、すごい人なのではないか!?


 神官風の女の子が、上級魔法のグレートヒールじゃないと無理な傷だったはずなのですが、とか言っている。


「と、とにかく、どうする。一度帰って、ここの探索はワイバーン討伐が終わってから、できる人たちに任していいのでは・・・。」


 タニカルさんもそうですねと言っている。


「ですが、取り返しのきかない場合もあるので最低限は調査しておきましょう。」


「あの〜、申し訳ないのですが、何か食べ物を持って無いでしょうか、もう3日もまともに食べて無いのです。」

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