第14話 冒険者登録で無職回避!

 朝から疲れ果て、朝食をとる。


「今日はまず冒険者ギルドに向かい、ギルドマスターを紹介いたします。そして、あとはモニカに街を案内させます。私は商人ギルドに向かおうと思います。よろしいでしょうか、ルシア様。」


「タニカルさん、ありがとう、助かります。」


 タニカルさんは、いえいえと言って、では行きますかと立ち上がる。シルキーに夕方には戻るからと言って、みんなで冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドは、街の中央区と南区の境に位置している。商人ギルドは中央区と西区の境、騎士団詰所は中央区と北区の境、魔術学院は中央区と東区の境に位置しているそうだ。


 ど真ん中には賢者の塔ビュアロス支部がある。他に生活に欠かせない施設はおいおいモニカに案内してもらえるようだ。


 町並みは綺麗で2階建以上の建物がたくさん見かけられた。人通りもエルフにドワーフ、オーガに小人族、ありとあらゆる亜人が何の隔たりもなく行き交う。


「昨日も思ったが、活気があって良い街だな。」


 心から思う。


 前世では仕事と家の往復中に街をあまり見た記憶がない。視界には入っていただろうが、興味がなかった。早く帰ってゲームしたくて、帰りの電車はスマホを見るか、漫画見たりしていた。


 今はスマホも漫画もない。だからか周りの風景が目に止まるのだろうか。もっと前世の街を見ておけばよかった。きっと、楽しいことがあったに違いない。自分で世界を狭めていたと後悔している。


 もっといろいろ経験しておけば、今ここでも役に立っただろうか・・・。そんなことを思う自分に私は驚いている。懐かしがっているのだろうか。ちょっと感傷に浸っていると、モニカが心配そうに見ている目とあう。


 モニカが興味本位で入ってこないとは、それより心配させてしまうとは、年長者失格だ。


「モニカ、とりあえず、街の案内で最優先はうまい飯屋とスイーツ屋を頼むな!」


 戯けてモニカに頼み込む。


「任せて、おすすめのお店を教えてあげる!」


 グッと拳を握って、嬉しそうに言う。タニカルさん夫妻がそんな会話を微笑ましく見ている。



 しばらく進むと、周りの建物の中で異彩を放つ建物が現れる。中央区の建物は漆喰のようなものが塗られた建物が多かったが、冒険者ギルドの建物は全部木製で太く分厚い木を使ったと思わせる重厚感のある大きめの建物だった。


 景観が悪い、わざとか?


「ルシア様、驚かせましたかね。西区からの街並みからのこの違和感、これは現ギルドマスターの好みです。以前はもっと大人しかった。」


 好みかよ!ギルドマスターに会う事に一抹の不安を覚えながら、西部劇に出てきそうな押し扉を潜る。


「おう、タニカルじゃあねえか!珍しいな!ルモアも相変わらず美人だな!おおう、モニカちゃんもいつも通り可愛いじゃねえか!」


 ずいぶん、ワイルドだが、気さくな親父っぽいな。


「マスター、お久しぶりー。」


 モニカも気さくに手を振る。


「お世話になっております。ギルドマスター・ヴィフト。」


 タニカルさんが恐縮して挨拶する。


「お、そいつは誰だい?いつの間にかモニカちゃんに弟でもできたか?」


「そうそう、可愛いでしょ!」


 モニカが話に乗っかって言う。


「モニカ!あまり調子に乗らないの。」


 ルモアさんが嗜める。


「実は、こちらのルシア様を冒険者ギルドに登録していただきたいのです。」


「ほほう、あのタニカルの推薦とは、どう言うやつなんだ?」


「できれば奥を使わせていただいてよろしいでしょうか。」


 タニカルさんが奥に目線を向ける。


「ああ、いいぜ、来な!」


 奥はギルドマスターの部屋、社長室的な物か。う〜ん、人の趣味をとやかく言えた義理ではないが、一言で言うと、山賊の頭の部屋だ。


 壁には斧がクロスして架けられて、悪趣味な色の椅子と来客用のソファー。もと山賊なのかな?


 まずは自己紹介をする。そして、タニカルさんと知り合った経緯とここにくるまでの経緯も話した。


 タニカルさんには信頼のおける人だから全て話したほうが良いと言われていたので、それでも転生勇者関連は伏せたが、それ以外は全て話した。


「タニカルが嘘つく訳ないし、だとするとすげえやつだな、オメー。」


 いやいや、だから凄くないって!過大評価って嫌なんだよ!やめてくれ!とも言えず、そうですかね〜と言っておく。


「わかった!タニカルの推薦だし、すぐに手配しよう。」


 すんなり行ったが、逆にギルドマスターにお願いしないと登録出来ないぐらいハードル高いのか?


 どうやら、身元不明の者の冒険者登録はよほどのことがない限りやらないようだ。

だから、ある程度この街で信頼をおける人からの推薦がないと冒険者にすらなれない。


 冒険者は職業で、世の中の不適合者や無法者がなれるわけではないらしい。まあ、普通はそうだよね。誰でもなれるなら冒険者はチンピラの集団と同じだ。誰も依頼してこない。


 ちゃんと信頼ある組織でないといけないのである。


 異世界物の話って、どこからともなく来た主人公を何の疑いもなくギルドに登録しているが、それは企業として間違った採用だ。とても悪い人間だった時、すぐさま冒険者ギルドの信頼はなくなる。

 

 「裁量は本人に任せていますから。」なんて言い訳出来ない、国から認定されている組織なら尚更である。


 ギルドカードの精製は少し時間がかかるから、昼過ぎになったらまた来てくれ、その前に、この水晶を少しの間握ってくれと拳大の水晶を握らされる。


 この水晶がギルドカードの原料になるようで、本人の登録情報と本人のパラメータと保持スキルと魔法が表示されるようになるそうだ。


 クエストによってはパラメータの提示が義務付けられる場合がある。左腕のステータス表示は他人にも見せられるが、項目の隠匿が出来るので、ギルド用のカードでギルド内のみ閲覧出来るようにするそうだ。


 あまりにも無謀なクエスト選択は出来なくなっている。クエストは仕事で失敗しないようにギルド側も責任持って斡旋しないといけない、それが仕事だから。


 聞くとずいぶん夢も希望もなく、心躍らないが、私としては安心だ。私のパラメータを提示したら絶対やばいクエストには進められないだろう。このシステムを考えた人に感謝だ!


 ここでパラメータの話が出たので、タニカルさんやヴィフトさんに最近のパラメータの上がり方を相談してみることにする。ギルドマスターならわかるかもしれないし・・・。


「それは、おそらく神の恩恵だな。」


 あっさり答えが出てきた。


(は?)


「神の恩恵とは、1レベルとかとても低いレベルの時に、死にかけたり、死ぬ思いをして窮地を脱した時に与えられる恩恵と言われています。私も実は幼少の時にルモアと二人でダンジョン攻略ごっこをした事があり、本当のダンジョンに入ってしまい。死にかけて、当時6歳で神の恩恵を受け賜ったことがあります。」


 神の恩恵でもらえるものは千差万別で、パラメータアップやスキルの開眼、ユニークスキルの付与、特殊能力といろいろらしい。


 ちなみに、タニカルさんは、闇・炎耐性の特殊能力、ルモアさんは回復力上昇(生命力の回復スキル・魔法・アイテムが自身に使われた時、5倍の回復効果が発生)だそうで、この経験から冒険者になると決心したらしい。


「でも、それってしょっちゅう起きることなのか?」


「いえ、おそらく一生で1回起こるかどうかです。」


「神の恩恵目あてで、超難易度クエストをやって本当に返ってこなくなくなったやつを沢山知っているよ。本当に稀で、狙って起きるものではない。それに1レベルやそこらで死ぬような目から帰還出来る可能性もほぼ0だ。それに打ち勝てた褒美、だから神の恩恵と呼ばれるんだろう。」


「でも私は3回ぐらい経験していると思います・・・。」


「ルシア様、それはおそらく魔術師の呪いの経験値取得不能が原因かもしれません。神の恩恵を賜ると共通して数千の経験値をもらえるようです。それで数レベル上がるので、そのご神の恩恵を得る資格を失うのだと思います。ですが、ルシア様はこの呪いで、賜った経験値が取得出来無い為レベルが上がらず、まだ神の恩恵を受ける資格を保持していると思います。」


 タニカルさんの推測はすんなり入ってきた。それでは辻褄があう。神の恩恵か、私は神様に嫌われていると思っていたが、実は好かれていたのかも知れない。


 ということは最初の2回ほどのパラメータアップは死ぬかも知れない事だったのか。確かにほぼ体を休めずに昏倒睡眠を繰り返し、魔法を鍛えまくっていだが、あれを数日限界までやっていたのって、実は死と隣り合わせだったことになる。


 後1回昏倒睡眠をしていたら、そのまま起きて来なかった可能性があったってことか!こわっ!いわゆる過労死寸前だったってことか!あっぶね〜!睡眠はきちんと取らないとダメ!


「だが、気を付けろ、さっきも言ったが、神の恩恵目あてで無茶すると死ぬことの方が多い、と言うか高い確率で死ぬ。そうでない場合、恩恵は発動しない。無茶だけはするな!」


「いやいや、しないしない!私は一度だって危険な事に自分から飛び込んだ事はない、なぜかそうなっただけ、今後も決して飛び込まない!絶対に!」


 私の必要以上の決意を見て大丈夫と判断したのだろう。大丈夫そうで安心した。とギルドマスターもほっとした。優しい山賊おじさんである。


「でもでも、ルシア様すごい!やっぱりすごい!」


 モニカが盛り上がる。


「モニカちゃん、あんまり煽るなよ、いくら沢山パラメータが上がっても、たとえ全パラメータが20超えしても並の一〇レベル冒険者より弱いんだから、調子こいてたら簡単に死んでしまうぞ。」


 そうなのだ、パラメータも大事だが、この世界はレベルの方が大事で、スキルや魔法には、習得条件にレベルが存在する。


 1レベルの私はいくらパラメータを上げても習得できる魔法が限られている。魔法レベルを元値に計算される威力も1。だから自ずと強くなれないのだ。魔法力も生命力もほとんど上がらない。


 だが、とりあえずほっとした。あまりの異常で寿命を削っているのでは無いかと心配していたが、これで安心して寝むれる。


 それに、もう危険な事はしないし、危険なクエストも受注できないし、何とかここで生きていけそうだ、よかった。ん?今のフラグか?なわけないよな。


 あと、当面のお金だ。流石にお小遣いをタニカルさんにもらうわけにはいかない、言えば出してくれそうだが、私は子供じゃないので、そんな事は言えない。尊厳の問題だ!


 そうなると、私の持ち物で売れるものとなると、ほとんど酒なのだよな〜。売るのも惜しいが、背に腹は変えられない。


「ここらで、酒を買い取ってくれそうな所ってないですかね。」


「ほほう、どんなさけだい?」


 山賊マスターは興味を持ったようだ。マジックボックスからいくつか持ち出す、オーガ酒、オーガ殺し、イヤレスの穀物酒(日本酒風)、イヤレスの穀物酒(焼酎風)だ。


「うおおおお、オーガ殺しだと!ちょ、ちょっと確かめさせろ!」


 まあ、本当か確かめるべきだよな。山賊顔が持ってきたグラスに少し入れる。


「う、う、うまい!いい酒だ!売ってくれ!俺が買う!オーガ酒、ひと瓶金貨1枚でどうだ!」


 マジか、金貨1枚と言えば、普通の宿に寝泊り食事付きで1ヶ月暮らせる価値があるとかだったかな。前の世界では金貨1枚10〜20万円くらいだろうか。


 10ぐらい万円の酒、いや、流通もしっかりしていないこの世界ではさらに貴重なのかも知れない。もうすこし、引き上げてもいいが、今後いろいろ世話になりそうだし、山賊の言い値で手を打つか。


「はい、金貨1枚交渉成立で、何本入りますか?あと13本ありますが、私もチビチビ飲みたいので、10本までなら融通しますが。」


 イヤレスで5本大盤振る舞いしてしまったのと、道中チビチビ飲んで20本もらったのが13本になっていた。


 もっともらっとけば良かったか、いや、こんな価値があるものを沢山もらうわけにはいかんな。


「う〜ん、保存用の魔法の箱も5本が限界だし、とりあえず5本くれ!」


 悩んだ末、5本が売れた。使いやすいように、金貨4枚と銀貨8枚と銅貨20枚にしてくれた。あと革製のお財布つきだ。気前もいいし、気遣いも嬉しい。だてに山賊のかしら、じゃなくギルドマスターって事か。


「タニカルさん、こんなに需要がアリそうなものをなんで、オーガの里で買わなかかったのですか?」


「良い酒って扱いが難しいのですよ。まず、木製の入れ物で運搬すると、木の匂いや成分が染みて、味が変わってしまいますし、運搬中の温度管理も大変、ガラス瓶にすると、匂いはつかないが、割れやすい。まともに商売するには魔法蔵が必須になるのですよ。ですから、どうです?ルシア様、私と一緒に商人になりませんか?魔法蔵の使用だけで売り買いは私がしますので。」


 タニカルさんは本気かどうか判らない目で笑いながら言う。モニカが「それがいいよ!」と言っているが、謹んでお断りした。まだ決めるのはまだ時期早々だ。


 だが、モブ魔術師の私に1レベルで出来るクエストだけではまともに生きていけなさそうな時は、お願いする可能性もある。


 さっきもギルマスが言っていた、レベルに見合ったクエストしか斡旋しないと言う。まず、私はパーティーに呼ばれにくい。一人だけレベルが上がらないとなると、長くパーティーを組めない。即席パーティーならあり得るかも知れないが・・・。


 そうなるとソロで1レベル用のクエストになる。薬草つみとか、微妙な物しかないだろう。最悪、全くクエストを貰えない可能性もある。そう考えると、就職先が別にあると言う事はありがたい。最悪、お世話になります。と言っておく。


「魔法蔵って持っている人ってどれくらいいるのですか?」


「そうですね、一万人に一人ぐらいの割合と聞きます。収納量もまちまちらしく。小銭入れぐらいの人もいるそうです。」


 あまり見せびらかすのも良くなさそうだな・・・。


「なので、あまり見せびらかすとトラブルに巻き込まれやすいので、気をつけて下さいね。」


 おっと、考えている事を言われた。大事な事だから言ってくれたのか。安心して!私のリスクヘッジは相当なものだから、多分。


 とにかく、財布はマジックボックスに入れて、取り出す時に懐の中で、マジックボックスから取り出そう。ちょっと練習する。ホイホイホイと、いけそうだな。


 さて懐もあったかくなったし、ギルドカードが出来るまで、街の散策に出かけるか!冒険者ギルドを後にして、タニカルさんとルモアさんは後で冒険者ギルドで合流しようと決め、商人ギルドに向かい、私のモニカは街の散策をする。


 モニカは「ルシア様とデート〜」とか言ってルンルンだ。毎回思うが私のどこがいいのだろうか、冗談で言っているのか?それともやっぱり弟が欲しいのか、あまり変なこと言うと誤解しちゃうよ、私。


 ルモアさんからは、「モニカは小さい物が好きで、小人族を目で追ってしまう少し残念な子」と聞かされている。親から残念認定されてしまうのはとても残念だが、そういう事なのかもしれないか。あとは命の恩人補正やらで、ちょっと気になる小さい生物と思っているのだろう。



 まず、さっき言った美味しい飯屋に行く。飯屋は定食屋っぽくて、若い冒険者や街の労働者がよく来る安くてうまい店って感じの店のようだ。


 店主のおかみさんとモニカが話している。まだ、お腹もそれほど空いてないのでまた来ると言って、自己紹介だけ済ませる。


 パワフルなおかみさんで、お客から親しげにおかみさんと呼ばれている。いいねえ、こういう大衆食堂っぽいの、前世でもこう言う店で昼食とっていた。騒がしいが癒される。


 実はスイーツも絶品だそうで、この店の旦那さんが甘いお菓子やケーキを作るらしい。2階がカフェになっているらしく、女性に大人気出そうだ。


 話しかけられないが何かきっかけがあるかも知れないと、それだけでこの店に来る若者も少なくないはずだ!きっと!


 あとは、各所要施設をざっくり教えてもらう。モニカもそこらには興味が無い様で説明もざっくりで、図書館においては「本読めるとこ」だけだった。入ったこともないのだろう。


 案内中、よくモニカに軽い挨拶をする男子も見受けられたが、ナンパしてくる者は居なかった。タニカル夫妻はドラゴン討伐に参加するほどの実力者、娘も馬鹿だが剣や格闘の実力は高い、ナンパする命知らずはいないと言う事か。そのせいで男慣れしていないのかも知れないな。男共がんばれ!


「ルシア様、あれ食べたい!」


 モニカが屋台の大きな串焼きを指差す。懐もあったかいし、まあ、いいか。


「おじさん、2本いくらだい?」


「お、姉弟仲よくていいねえ。うちの子供と大違いだ。2本で銅貨2枚だよ。」


 懐でマジックボックスから財布を出し、懐から財布を取り出し、銅貨を2枚出して渡す。


「姉弟じゃないよ、はい、銅貨2枚。」


 銅貨を私ながら耳元を見せて小人族である事を教える。まあ、あえて教えるほどではないのだが、モニカが調子に乗っていろいろ口走りそうだったので、それを封じる為におじさんに話した。


 おじさんはそうかそうかと串を私ながら笑う。肉の串はでかく、ボリューミーで、焼かれたタレの香ばしい匂い、思わずかぶりつく、脂も乗っていてる。


 うまい!こう言うジャンクフード的なのも良い。あたりは屋台街で、いろいろな屋台がずらりと並ぶ。これは時間をかけて全部制覇せねば。


 お、お酒を出す店もあるではないか、夜にでも一人でこよう!横ではモニカがもう全部食べ切っていた。このボリュームをぺろりか!私は残りをモニカに差し出す。


「モニカ、まだ食えるか?俺にはちょっと大きすぎた、食べてくれるとありがたい。」


「しょ〜がないな〜、しょうがないからお姉さんが食べてあげるね。」


 お姉さんはそんなにガツガツ食べないと思うが。ああ、口の周りベトベトにして子供だ!


 懐(マジックボックスから)タオルを取り出し、「水作成(3消費)」で濡らして、「熱操作(7消費)」で冷やして、口元を拭くように渡す。


「ありがとう!気がきく〜。」


 本当に子供だな。


「ふう、じゃあ、デザートにスイーツ食べに行こ。」


 まだ食うのか!甘いものは別腹というやつか、まあ、私もお酒は別腹なのだが・・・。最初に行った大衆食堂の2階に行くと、モニカが走り出して、カフェにいた女の子と手を取り合ってぴょんぴょん飛ぶ。


「モニカー、久しぶりー。」


「ベルタも久しぶりー。」


「ベルタ、紹介するね、ルシア様!私の命の恩人!」


 どんな紹介だ!


「ええと、ルシアです。よろしく。」


「ベルタよ、よろしく。」


 少し性格がキツ目のショートカットの中性的な美少女と行ったところか。歳はモニカと同じか、ちょっと上にも見える。モニカのように子供っぽさが無いからか。


「モニカ、弟が欲しい欲しいって言っていたから、とうとう誘拐してきたのかと思ったわ。」


 やっぱり、弟欲しかったのね。


「そこまでするわけないでしょ!もう!」


 冗談が言い合える仲か、モニカにも友達はいたのだな、ほっとした。


「それで、何をしていたの?またスイーツ巡り?」


 モニカいつもそんな事をしていたのか?ジェーケーなの?そうなの?


「いつもじゃないよ!ルシア様を街案内していたの、冒険者として当分この街にいるから。」


「へー、じゃあ、いつかパーティーを組むこともあるかもね。担当は斥候よ、面白いダンジョン探索があったら呼んでね。」


「魔術師をやっているけど、まだ1レベルなので組む事は無いかもね。」


「へえ、1レベルなのにモニカの命の恩人ってどういう事?やっぱり、誘拐してきて洗脳して、そういう設定にしているんじゃ無いの?モニカ。」


「ひどいよ、ベルタ、本当なんだから、ルシア様はすごいんだよ!2回も私を救ってくれて、超かっこいいの!」


 モニカの目は節穴のようだ。私がやれやれと思っていると、「あんたもモニカのお守りなんて大変だね。」と憐憫の眼差しを向ける。


 ベルタさん、良い子、わかってくれた!


「じゃあ、私、ギルドに用があるから、またねモニカ。」


「うん、またね〜」


 ベルタが階段を降りていく。


「モニカの友達にしてはしっかりした子だね。」


「どういう事よう!」


 ぷ〜と頬を膨らます。そういう子供っぽい所です。かわいいけど。


「ルシア様、あれ食べたい!あのクリーム乗っているやつ!」


 本当に子供だった。自分はお腹いっぱいと言って頼まず、モニカだけ食べさせた。

ケーキ1つで銅貨3枚と割高と思ったが、砂糖はおそらく高いだろう。普通の相場かも知れない。


 モニカが頬にクリームつけながら食べていた。子供のために濡れタオルをもう一度作って、頬のクリームを落としてあげる。


「ルシア様、優しい!」


 私に女の子の頬のクリームを落とす行為を平然と出来るわけない。でもできたって事はやっぱり、モニカを子供と認識している事か・・・。


 でも、たまに見せるエロモードは反則だ!実はモニカの掌に乗せられて、コロコロ転がされているのでは無いかと思ってしまう。


 おじさん、いつか通報されそうで怖いよ。



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