第13話 異世界居候生活開始?

 準備が整い出発する。出発の時には村人総出で見送ってくれた。また、立ち寄るからと村長や子供達に約束をして別れた。良い村だったな。絶対また来よう。


 荷馬車に揺られているとだんだん眠くなってきた。朝に魔法の訓練を頑張りすぎて、魔法力を使いすぎたかも知れないな。眠そうにしている私を見てモニカが正座に座り直して、太腿をポンポンと叩いて、膝枕してあげると言い出す。


 う〜んと考えて、今はしっか魔法力を回復しておきたいから丁重にお断りした。あと、寝顔を覗き込まれない様に、布を頭に載せて、荷馬車の荷台の壁側に横を向いて寝る。後ろでモニカが「ケチー」と文句を言っている様だが、眠気に勝てず、意識が薄れていく。


 荷馬車も振動とのどかな気候で睡魔に負けた。しばらくして目が覚め、ステータスを確認する。全快まで回復していた。モニカに夜這い?昼這いはされなかった様だ。モニカは真面目に教本を黙々と呼んでいた。


 私が起きたのに気づくと、「後で読み聞かせしてあげるから待っていてね!」と言って気合入れて勉強していた。やる気になってくれて嬉しいが、そんなに読み聞かせるのが楽しいのだろうか。


 保育員さんとかそういうのが大好きだからやっていますとかテレビで言っていたが、あれはテレビだから言わされていると思っていた。そういうものか・・・。


 途中、休憩所で荷馬車を止めて昼食をとる。他の商人と会い、タニカルさんが情報交換していた。なんか、その商人さんから物々交換で桃の様な果物をもらっていた様で、剥いて食べさせてくれた。


 なんて平和でのどかなんだ!そうだよ、こういうのがしたかった。心躍る冒険なんかより、平和・安全・安心が大事!もう、命が関わる様な事は絶対しない!


 毎回言っているのだが、これがフラグというものなのか?


 3日ほどで遠目からにもわかる、大きな城壁に囲まれた街が見える。その間、とても平和だったが最初の2日は、またモニカが夜泣きしたので、タニカルさんの頼みで「仕方なく」添い寝をする羽目になった。3日目には治ってくれた。


 毎日は辛い。


 何がキツイかと言うと、そもそもモニカの筋力の高さだ。戦士としても高い能力の持ち主で、抱きしめる力も半端無い。しかも、寝ぼけるので、何度も死にかけた。


 流石に攻撃魔法を撃つわけには行かないので、脇をくすぐるなどで抵抗するが、そのまま寝てしまうと、朝には死んでいるとか無いか不安になる。


 あとはモニカの双丘による窒息死の問題もある。色々、生命の危険性を秘めているのだ。気持ちいいのはモニカが眠るまでのひと時だ。防御魔法とかが欲しい。


「街に着いたらお別れか・・・。」


 私がそういうと、モニカが肩を震わす。今にも泣きそうな顔をする。そんな顔をしないで!こっちが辛くなる。


 でも、モニカにはお父さんの手伝い、家族とは一緒にいた方がいい、私はまだ方針は決めていないが、少なくとも一緒に行く事はないよ。


 そんなモニカを見かねてかタニカルさんが提案してくる。


「ルシア様はここらに知り合いもいないでしょうし、身元を証明する人もいないでしょう。冒険者ギルドのギルドマスターとは顔見知りで登録や、この町での身元証明などさせていただきます。あと、いきなり知らない街で生活も大変でしょうし、街の案内や、当分の宿泊場所を提供できます。まだまだ娘の命の恩人に返す恩には全然たりませんが、どうでしょう。」


 確かに、何も後ろ盾もなく街にいても、私みたいなモブ魔術師は露頭に迷うのが落ちだ。お金も全く無いし、地理にも疎く、生活できるとは思えない。冒険者ギルドなりに入れば何とかなると思っていたが、現実そうは甘くないだろう。


「確かにタニカルさんの言う通りですね。申し訳ありませんが、もうしばらくお世話になります。」


 頭を下げる。


「やったー。」


 モニカが戯れてくる。随分懐かれたものだ。タニカルさんには敵わないな・・・。でもこれで露頭に迷わないで済むか。今のうちに一人でも生きられる様に情報を集めないと。まずは、金か・・・。


 街の前に銀色のフルアーマーに身を包んだ騎士団風の集団を見つける。荷車にドラゴンぽいモンスターをいくつも載せていた。話によると村を襲っていたワイバーンを討伐に出撃していたそうだ。


 この自由都市ビュアロスはビュア王国から市政と商取引の自由を保障された街で、警護のため、ビュア王国から派遣された騎士団が常駐している。荒事は冒険者ギルドに入り、手に余る事案に騎士団が出るシステムらしい。


 城の衛兵や街の衛兵の強さは上位冒険者くらいの戦闘技術を持っていて、騎士団ともなれば、冒険者ではほぼ勝てないレベルらしい。


 いわゆる、国から給料をもらい、専門の先生に技術を学び、専門の魔術師に魔法を習い、国お抱えの鍛冶屋に作らせた高品質の武具を与えられるエリート達である。


 対して冒険者達は我流で強くなり、生きていくためにクエストを受け、怪我したら金を出して治療し、次のクエストのために武具を買い、そして闘う。長期間訓練する暇は無い。


 だから、街の衛兵はいくつかの魔法も使える魔法戦士である。よく、物語では冒険者の方が強い様に描かれることもあるが、腐敗した王国でない限り、国の衛兵は皆、基本的に強い。


 自衛隊員と街のチンピラとの違いの様な感じである。だが、別に騎士団は冒険者を見下したりしない、適材適所、戦闘技術や専門技術が高ければ全て解決できるわけではないことを知っている。


 冒険者の様な柔軟な戦い方でしか解決できないこともある。少なくともこの国の騎士団や衛兵は冒険者を見下さないらしい。とモニカの教本読み聞かせで知った。


 良い教育をしているなあ。ビュア王国といい、イヤレスの村といい、しっかりした国だ。そして亜人を差別しない自由都市、ビュアの王様とかに会ってみたくなる。


 街に入る時にタニカル家族は身分証明書を見せて、私は街に入るための税金をタニカルさんが払ってもらう。もう、世話になっている。さっきの発言は何も考えていなかった。こう言うところだよね、私の考え無しのところ。


 税金は銀貨8枚だった。貨幣価値をルモアさんに聞く。銅貨10枚と銀貨1枚が同じ価値で、銀貨30枚で金貨1枚と同じ価値、金貨100枚で大金貨、あとさらに上にも貨幣があるそうだが、基本国家間でのやりとりぐらいでしか使われる事はないらしい。そして、普通の宿屋で宿泊のみで銅貨10枚程度、安い食事なら3〜5枚の銅貨で食べられる。


 銀貨10枚あれば1週間は寝泊りして食事ができ、金貨1枚で1ヶ月は民宿暮らしが出来る計算になる。貨幣は賢者の塔と呼ばれる機関が作成しており、その賢者の塔が提供する板に貨幣を置くと偽物か本物かわかるそうで、もう数百年貨幣を偽造する事件は発生していないらしい。


 安心して商売ができるその大事さをちゃんと皆分かっているのだろう。誰がその賢者の塔を始めたか分からないが、素晴らしい事だと思った。


 もしかして、召喚勇者が現代の経済知識を持ってきていたりして・・・。賢者の塔は世界の発展を願う中立機構であるが、平和を愛する機関ではないらしい。世界の発展に戦争も必要と考えているからだそうだ。


 なので、国家間の戦争に無干渉を貫く。ただ、市民の避難はしてくれるそうだ。もちろん魔族との戦争にも無干渉だそうだ。


 魔族による世界統一もそれが世界の発展に必要な要因であれば許容するようだ。また、国家間の約定は中立の立場で仕切ってくれたりする。


 ちなみに、この機関の創設メンバーに大賢者エンドゥーも居るようで、ステータスを配布し、スキルの概念を世界の広めたのも賢者の塔を使って行われたらしい。



 街に入り、タニカルさん夫妻は荷馬車を家に置きに行くそうで、当面の宿泊場所としても使って欲しいとのことだった。


 街の西部に位置し、中間層の市民や商人が住む西区、西区専門の衛兵がいて治安も良いらしい。街中央部と川で区切られており、端の関門でそこの居住者のみが通れる様になっている。


 あと、街の北部の丘の上には貴族や王族、常駐騎士団の住む超高級エリアがあり、

東部と南部は平民層の住居エリアがある。


 そして、南の平民層のある南門の外側、街の城壁の外にスラム街がある。ただ、このスラム街は別に貧民街ではなく、市民権を得られていない移民が作った街で、市民権を与えられないが税金も納めなくてよく、通行書があれば街にも入れるので、そこまで市民権に気にしない者、旅の者が宿とかを安く済ましたい場合などに使われており、街の発展に一役買っている。


 なので、貴族とかはスラムの民を見下している者もいるが、平民区の人たちは仲良くやっている。でも、ちょっと治安が悪いのもあるので、行く時は護衛がいる場合もあるところらしい。


 政治のことはわからないけど、移民を完全に受け入れられない事情があり、それでも追い出さないところを見ると、良い領主様が統治しているのだろう。



 タニカルさん宅につく、ちょっとした屋敷だった。もしかしてまあまあ稼いでいる?少しびっくりしているとタニカルさんが冒険者時代にあるクエストの恩賞で貰ったそうだ。屋敷をもらえるクエストって何だ!国を救うレベルじゃないか?


 いや、国を救うレベルなら貴族区に屋敷をもらって、地位をもらっているか。なら何か大きな討伐の恩賞ってところか。と考えているとモニカがあっさり答えをいう。


「お父さんとお母さんはドラゴンを討伐したんだよ、討伐の成功報酬でもらったんだってー。」


 マジか!タニカルさん夫婦はドラゴンスレイヤーだったのか!


「説明不足にも程があるね、モニカ。ルシア様、ドラゴンの討伐隊は騎士団から50名、斥候や遊撃部隊として冒険者のいくつかのパーティーが参加したのです。私たち二人で倒したわけではありません。それにドラゴン討伐で一番活躍したのは騎士団ですよ。」


 なるほどね。でも選ばれた冒険者ってことならすごいことだ。


 しかし、この前の戦闘でもタニカル夫妻の戦闘技術は凄かった、素人の私が見てもすごいのは分かった。だが、騎士団はそれ以上ってことか、化物ばっかりか!それともちゃんと訓練することはやはり大事ってことかもしれないな。


 家は洋風の屋敷って感じで、ゾンビが出てくるゲームに出てきそうな屋敷だ。別館とか離れとかは無いようだ。


「ただいま〜。」


「お帰りなさい、モニカ。」


 モニカの挨拶に屋敷から返事があった。へえ〜、メイドさんがいるのか。と思ったら違った。家事手伝いの妖精だそうだ。


 以前、冒険で弱っている所を助け、自分の家に住まわせたらしい。

う〜ん、タニカルさんらしいか。野良猫とかもバンバン拾ってきそうだもんな、私とか。


「こちらはルシア様、モニカが馬鹿やって瀕死になった所を助けてくださったり、モニカが馬鹿やって死にそうな所を身を呈して助けてくれた方だ。」


「モニカ、また馬鹿やったの?」


「みんな、馬鹿馬鹿言い過ぎ!反省してるから!もうやらないから!」


 モニカが口を尖らせる。


「ルシア様、この館のメイドをしておりますシルキーです。よろしくお願いします。」


 シルキーって名前?種族名?でも聞けないのでそのまま受け入れる!


「よろしく。」


「ルシア様はしばらくここに住んでもらおうと思っているのだけど、一部屋用意してもらえるかな?」


「わかりました。喜んで。」


 無表情だが、喜んでいる様だ。やはり家事妖精というのは屋敷に住む人間が増えることを喜びにするのかな?


「そんなに長居は申し訳ないので、最低限で構わないから。」


 私がそういうと、とても残念そうな顔をする。その横でモニカも一緒に残念そうな顔をする。


「・・・、お任せします。」


「私も手伝う〜。」


 モニカとシルキーが仲良く二階に向かう。タニカルさんは私がこういうのを断れないヘタレだって知っていて、家に招待したのだな!タニカルさんは私の眼差しに気づいたのか素知らぬふりをした。


 まあ、しばらくはご厄介になりますよ。でも、ちゃんと一人で生きていける様になってやる!なんか、現役ニートみたいな事言っている私。


「ルシア様、冒険者ギルドに行くのは明日にしましょうか。今日は夕食後ゆっくりしてください。」


 そうだな、荷馬車や地べたに毛布で寝ることが多かったので、気を遣ってくれたのであろう。でも1ヶ月近く、毛布も何も無い洞窟の地べたで寝ていた私にとっては毛布があるだけで幸せだったので、それほど辛い旅路ではなかった。


 むしろ、楽しかった。今思うと洞窟生活は辛い1ヶ月だった。1ヶ月で終わってよかった。生きていてよかった!神様に感謝!でも、神様、きっと私の事嫌いですよねえ!


「部屋ができたよ〜。」


 モニカがニッコニコで呼ぶ。二階に行くと角部屋にあたるところでモニカとシルキーが手招きしている。このシルキー、ずいぶん人間味あるな、この世界では普通なのか?


 部屋にはベッドと机、椅子、クローゼット、あと、鏡があった。鏡のところには木箱を置いてくれていた。ちゃんと身長のことも気にしてくれているとは、至れり尽くせりだ。


「私の部屋は隣だから寂しくなったらいつでもきていいからね!」


「シルキーさん、この部屋には鍵かけられますか?夜這いの心配があるので。」


「それってどういうこと!?あれは、本当に怖い夢を見て眠れなかったんだよう!」


 シルキーさんにモニカが説明する。


「ああ、さっきモニカが言っていた、モニカが腰を抜かして、身を挺して守ってくれたってやつね。」


「そう、その時のモンスターがすごく醜悪で怖かったんだよう。」


 シルキーが頭を下げて謝る。


「ルシア様、申し訳ありません。この部屋には鍵をつける予定でしたが、やめました。ご了承ください。」


「え?つける予定だったのなら付けてくださいよ。」


「付けないほうが面白そうなので、やめます。」


「シルキー、ナイス!」


 家事妖精っていたずらも好きってあった様な・・・。とても楽しそう。


「そろそろ夕食の準備をします。モニカも手伝って。」


「はーい!ルシア様、美味しい夕食期待していてね!」


 シルキーさんとモニカが仲良く出ていく。


「ふう、なんか疲れた。でも、なんだかんだで、前世より幸せだと思う。」


 死ぬ様な目に何度もあったけど、生きているって素晴らしい!これからは・・・。フラグになりそうなので言わないでおこう。



 しばらくすると下からモニカの呼ぶ声がしたので階段を降りていく。食堂に行くと、今までの宴会ほどでは無いが美味しそうな料理が並ぶ。おお、どれもすごくうまそう。で、モニカが作ったのはどれかな。モニカを見ると、恥ずかしそうにして、


「いろいろ失敗しちゃって、シルキーに止められて今回はなし!今後にこうご期待!」


 と言って自分の席に着席する。


 ほ、よかった。漫画とかアニメとかヒロインが失敗したのを主人公が無理して食べておいしいと言って、ヒロインが喜ぶのがあるが、あれはとても失礼だよね。失敗したのを食べさせる発想がそもそもおかしい。


 ちゃんと練習して次はおいしい料理を出す約束をするのが正しい。シルキーさんもグッジョブです!


 そして無事においしい料理にありつけ、平和で幸せな一コマを過ごす。ただ、お酒が出なかったのが惜しい。あとでシルキーさんに聞いてみると、モニカがとても酒癖が悪くめんどくさいので、基本この屋敷で来賓があるとき以外は出さないと言った。

私はその行為を大絶賛した。


 シルキーさんも理解者がいて嬉しかったのかウンウン頷いていた。夕食後、お風呂をもらい(この屋敷にはお風呂がある!しかも魔法具製!)就寝する。ベッドは柔らかく、お日様の匂いがした。


 シルキーさんはタニカルさん達が不在の時でも毎日、お日様に布団やシーツを干しているのだろう。最悪、帰ってこない場合もあるのに。そう考えると、少しウルっとくる。


 だが、お日様の匂いと柔らかさで睡魔に勝てずに意識が薄れる。ああ、寝る前に魔法の訓練するつもりだったのに・・・。シルキーさん恐るべし・・・。


 翌朝、何か柔らかいものに包まれている感覚で目が覚める。なんか、前にもこんな感覚が、ハッと目を開けるとモニカが私をぬいぐるみの様に抱きしめて寝ていた。


 パジャマの胸のボタンも外れていて、綺麗で破壊力のある胸が視界を覆っている。わ、ば、た、取り乱し、慌てて離れてベッドから落ちる。ってー。モニカもむにゃむにゃしながら起きたようだ。


「ああー、しまった。ルシア様より早く起きて朝の寝顔を見ようと思っていたのに!」


 そんな事のために潜り込んだのか!いつから!それより胸のところを閉じなさい!そこにシルキーさんが入ってくる。


「昨日は、お楽しみでしたね。」


 と棒読みでいう。このシルキー、宿屋の主人か!?


「モニカ、何で潜り込んだ!また怖い夢でも見たのか!?」


「え、ああ、うん、そう、怖くて怖くて、だから、またルシア様が可愛かったから、抱きしめて寝ちゃった。」


 言っている途中で正直にゲロした。


「シルキーさん、やっぱり鍵を付けてください。身の危険を感じます。」


「えー。ただ抱いて寝るだけだよう。ぎゅーとするだけだよう。」


 それがあかんと言うとるヤロー、言ってないか。


「シルキーは味方だよね!」


「・・・・、ルシア様、今日中に鍵をつけておきますのでご安心を。」


「ええー、シルキーが裏切ったー。昨日は面白いからって言っていたのにー。」


「人の尊厳を傷付けてまで、悪戯するシルキーではございません!」


 よかった、シルキーさんは悪戯好きだが、悪い人ではなさそうだ。今回は度が過ぎると判断してくれたようだ。


「そろそろ、朝食にしますので顔を洗って、降りてきてください。」


「はーい。ルシア様、お水頂戴〜。」


「は?自分の部屋にあるんだろ、自分の部屋で顔洗ってきなさい。」


「飲み水だよう、前に飲ませてくれたじゃん。あれを飲むと1日すごい元気出たんだから!お願い!」


 手を合わせて首を少しまげてウインクしてねだってくる。おい、可愛いな!くそ!そんな懇願されたらおじさん勝てるわけないじゃん!


「しょうがないな・・・。」


 ベッドに座っているモニカの前に立って、手を合わせて「水作成(5消費)」を発動し、合わせた手の器に水が溜まり始める。モニカがその手シャクに唇を付けて飲み始める。コクコクと飲み、口から溢れた水が一筋の水滴となって顎を伝って首をつたい、胸の谷間に流れ落ちる。


 そして飲み切り、「ありがとう、美味しかった。」とお礼を言って、スクっと立ちあがり、部屋を出ていく。私は疲れ果て、ベッドに倒れ込む。


「お疲れ様です。モニカがここまで強力な兵器に成長しているとは思っていなく、申し訳ないことをしました。あなたの心血を注ぐ抵抗に免じて最高の鍵をご用意いたします。」


 シルキーはヨシヨシと頭を撫でながら言って、部屋を出ていく。

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