第7話 ヘタレにはラッキースケベはストレスです

 ファルスの里に着くと大歓迎だった。どうやら英霊の解放後、里に英霊が帰っていたらしい。英霊ロナワ(ロナワと言う名前と聞いた)とは話すことはできなかったが、里の皆には帰ってきた事がわかるらしい。


 里の者達は討伐に向かった者の剣を持ち帰ったファルスを勇者として祝った。ファルスから勝因として紹介され、全オーガからもてはやされる。到着が夕方だったが、すぐに宴会が始まった。

 

 里で一番大きい天幕で盛大に始められた。地面に炉端とたくさんの果物と肉が並べられ、酒もたくさん並べられている。そして周りをオーガ達が埋め尽くす。

壮観な景色だ、小人族からすると、大柄な人間が、ガツガツ御馳走を平らげていく。


 乗り遅れた!


 せっかくの人の手の加わった料理!夢にまで見た甘味!食うぞ!負けじと片っ端から食べて行く。肉、肉、肉、果物、何かの甘味、肉、肉と食い溜めするかのごとく食べて行く。


 ちょっと行儀が悪かったかと思ったが、オーガ達には好意的に映ったのか、どんどん料理を前に並べてくれる。奥では、ファルスが戦いの事を自慢げに話していた。


 まあ、自慢していい話だ、多いに自慢しろと思った。たまに、こっちを指して何か言って、周りのオーガが「おおおお!」とか「すげえーーー(っぽいこと)」を言っている。ファルスは何を言っているんだろう。


 『剣狩り』を倒したのはファルスで私はサポートと足を引っ張ってしまったので、ちょっと心苦しい・・。タニカル夫妻とモニカも宴会に混ざっていた。タニカルはファルスの言うとおり、オーガの里に生活必需品を持ってくる大事なお客らしかった。

モニカもオーガの子供達に楽しそうに話していた。


 すると、モニカが近づいてきた。


「ルシア様、すごいのですね。ファルスさんとお二人であの『剣狩り』を倒すなんて!」


「モニカも「剣狩り」を知っていたのだね。」


「ええ、邪悪な魔術師が、英霊ロナワを連れ去ると時にここにいたので・・・。」


少し、悲しそうな顔をして話す。あっと、連れ去られる時に、被害がなかった訳ではないか・・・。


「ま、まあ、「剣狩り」を倒したのはほとんどファルスだから、俺はそんなに・・・。」


「そんな事ないですよ、窮地に陥って、逃げずにファルスさんを見捨てずに立ち向かい、機転を利かせて、ピンチをチャンスに変えてしまうなんて、すごい事です!」


 モニカが興奮して、握り拳を作って力説する。


 ああ、恥ずかしい。自分的にうまく転んだが、自分のミスがなければ、ファルスが押し切っていたと思っているので、とても心苦しい・・・。


「あと、ルシア様は自分の命をかけて、私の命を救ってくれました!」


 モニカが救われた時の内容を本人は知らないだろう。両親から聞かされた事を、大袈裟にオーガ達に話す。あれも、モニカを命がけで助ける気もなかったし、ただ魔法の暴走で、自分の命を削る羽目になっただけで、そんな聖人の様な物ではないので、さらに心苦しい。


 でも、基本ヘタレなので、落胆されるのも辛いので、誤解を解くこともできない。

そこにファルスが来て、女性を連れてくる。


「ルシア、俺の、・・・、俺のだ!」


 「奥さん」の人族語が出なかった様だ。


「ルシア様、ファルスの妻のイヨンです。」


 奥さんは人族語を流暢に話す。


「ファルスを助けて頂いて、英霊ロナワを救って頂いて有難うございます。あなたはこの里の勇者です。」


 イヨンに悪気はなかったのだろうが、ちょっと嫌なことを思い出した。出来るだけ、表に出さず。それほどじゃないとお茶を濁す。


「それで、ファルス!うまい酒はどれだ!飲もう!」


 誤魔化す様にファルスに振る。


「おう、飲もう。」


 すると、俺もつがせてくれ、俺も俺もとオーガが集まってくる。


「まずは、私からつがせてくれ!」


 宴会の最初に紹介があった長老のバロアだった。長老と言われているが、めっちゃムキムキで、おじいさんってイメージは全くない。


 長老の立場がなければ真っ先に、英霊解放に向かっていたと言っていた。オーガ達を見るにとても慕われている様だ。確かに感じの良いオーガだ。


 小人族には大きすぎる杯を出そうとすると、まだ杯に半分ぐらい残っていたので、それを全部飲み干して、そして杯を差し出す。前世の上司との飲みを思い出して、酒飲みに酒を継がれる時、杯を空にすると喜ばれるので、癖でついやってしまった。


 卑しい奴と思われたかな?と思ったが、酒飲む文化はどこも同じらしく、バロアはとても喜んで、酒をあふれんばかりに注ぐ。


 おっとっとっと、と溢れそうなお酒に口をつけて飲み干す。オーガ達は皆、大喜びでつぎにくる。楽しいが、これは死ぬかも・・・・、だがこれはこれでありだ!


 ファルスが私を右肩に座らせ、拳を高らかに上げながら、私の杯とファルスの杯を打ち付けて酒を飲み干す。やばい、楽しい!生きていてよかったと心から思う!ファルスの肩で自分も杯を高々にあげて叫ぶ。


「うおぉぉぉぉー」


 なんか何でもよかった。叫びまくって食べまくって飲みまくって。本当に楽しい宴会だった。



 うう、気持ち悪い。流石にやりすぎたか、身体中が酒臭い。起きると宴会場で、みんな酒に潰れたのか、大の字で寝ていた。タニカル夫妻とモニカ、イヨンや他の女オーガは居なかった。


 はっちゃけたのは長老を含めた男どもだけらしい。あまりに気持ち悪いので、自分に『浄化』をかける。そしてルーティーンの『水作成』で水飲んで顔を洗いスイッチを入れる。


 なんかバタバタしていたので、状況を確認してみるか。魔法の暴走から開いていなかったし。恐る恐るステータス画面を開く。魔法の暴走なんかやっちゃったし、最悪、魔力や体力や他のパラメータが下がったり、さらに悪い能力が増えてたりしないだろうか・・・。


能力値

筋力:6

器用さ:12

敏捷さ:12

体力:7

魔力:11 (10→11)

知力:10

直感力:12

精神力:15(13→15)

最大生命力:80 (体力*10+レベル*10)

最大魔法力:160 (精神力*10+レベル*10)

物理防御:3(体力/2)

魔法防御:7(精神力/2)


 な、何じゃコリャーーー。魔力が1、精神力が2も上がった。嬉しいが、これは暴走したからか?いや、魔法の深淵を除いたからか、わからんが嬉しい。が、怖い、この世界はパラメータが上がりにくい(らしい)。


 この上がり方、確かにほぼ死んでもおかしくない状況でギリギリ生き残ったが、死にかけて○豆食べたサ○ヤ人かよ。ステータス画面には出ないが代わりに寿命とか減ってそうだが。パラメータが増えたからと言って、もうあんなことは絶対しない!

絶対に!今度こそ自分ファーストだ!衝撃的な事実を見て、喜びより危機感を感じ、気を引き締める私だった。


 そういえば、今着ている服はどうしたのだろう。荷馬車に揺られていた時から来ていた様に思う。と言うことはタニカルさんに頂いたのだろう。なかなか上物っぽい、お礼をしないと。


 服は人としての尊厳を失わずに居られる大事な概念だからな。その前に、身体を洗いたい、酒臭いし、最近体を洗っていないはずだ。思ったより綺麗なのは、ぶっ倒れている時に服を着せてもらう時に拭いて貰ったのだろう。ルモアさんやモニカにして貰ったとしたらちょっと恥ずかしいな・・・。


 まあ、あっちは別種族だし、子供の身体を拭くぐらいたいして気にしないだろうが・・・。


「ファルス、起きろ、身体を洗いたい。」


 だが、ファルスに返事はない。死んだ様にガーガー寝ていやがる。


「仕方ない、起きている人に聞いてみるか・・・。」


 天幕を出て、女オーガ達が英霊ロナワの像を掃除しているのが見えた。男どもはぶっ倒れているのに、女達は真面目に働いている。そういう、役割なのかと思ったが、昨日のファルスとイヨンの関係を見ていると対等な感じに見えたので、男どもに呆れながら働いているのだろう。


「すまない、身体を洗いたいんだが。」


 すると、像を吹いていたオーガが振り向く。イヨンだった。


「あら、ルシア様、お酒強いんですね。飲みっぷりもすごかったですが、朝まで響かなかった様で。」


「そうでもないよ。あと、「様」はよしてくれ。大したことはしていない。くすぐったいから、できればやめてほしい。」


「ですが、ルシア様はこの里の英雄で救世主なので、里の皆で話し合わないと・・・。」


 そこまでの事なのか!?誇り高い戦闘民族ということか、守神、英霊を救った英雄か。確かに、ファルス一人では『剣狩り』との相性は最悪だったが、もし、魔法の剣を手に入れていたり、魔術師を雇っていたりしたら、私は必要なかったはずだし、助けもしたが、あしも引っ張ったんだ。英雄ではないよ。


 でも、これ以上言っても面倒なので、当初の目的をいうことにした。


「わかったよ、好きな様に呼んでくれ、それより、身体を洗いたいのだが、そこか水浴びできるところはないだろうか・・・。」


「それなら、温泉があります。案内しますわ!」


 まあ、と手を合わせて、嬉しそうに言う。仕草かわいいな、デカイけど。そう言って、ヒョイっと私を持ち上げて、お姫様抱っこの状態で歩いて行く。


「あ、こ、これは、いや歩けるから。」


 最近、こんなのばかりだ。だが小人族だと慣れないといけないのかもしれない。


「申し訳ありません、ルシア様の足では少し時間もかかりますし、うっかり誰かに蹴飛ばされかねませんので、我慢してください。」


 確かに、この里はオーガの里、人族のモニカとかならまだしも、小人族の私など、ちょっと大きな荷物を持って足元があまり見えない時、蹴っ飛ばしたり、踏みつけてしまう可能性があるか・・・。


 しかし、イヨンも美人だな、逞しさに美しさも兼ね備えていて、正直ファルスが羨ましい、リア充爆発しろ!


「ルシア様、着きましたわ。」


 山に囲まれている里の北側に絶壁があり、そこに木でできた建造物がある。隙間から湯気がモヤモヤと出ていた。建物の中に入ると、カゴや布がたくさん積み重なって置いてあり、洗濯屋を思い出した、そしてそのさきにおそらく温泉があって、ここで着替えて、着替えを置いて行くのだろう。


「では。」と言って、イヨンが私をおろし、自分の服を脱ぎ出そうとしていた。


「いやいやいやいや、どうした、なぜイヨンも脱ぐのだ。一緒に入るのか?」


「ええ、温泉はルシア様には少し深いと思うので、私がついていきます。お背中もお流ししますよ!」


「いやいやいやいや、いいです。一人で入るよ。泳げるから大丈夫。」


「でも・・・。」イヨンも食い下がる。


 どっかの風俗ならともかく、一応友としているファルスの嫁さんと風呂に入るのは気がひける。なんか、ファルスと顔を合わせられなくなりそうだ。貞操観念は必ずしも前世の世界とは違うかもしれないが、それでも私が嫌だし、やっぱり恥ずかしい。


 私もそういうお店は嫌いではない、おじさんなので吉原や堀之内とかも行ったことがある。でも、それはお互いそういう行為をお金で、契約をむすんでいるから良いので、こういうのはちょっと・・・。と、ヘタレが炸裂してしまっている。


「すまない、温泉はゆっくり浴びて、色々と瞑想とかしたいのだ。あと、小人族は沈まないから安心してくれ(知らんけど)」


 イヨンもルシアが普通の魔術師ではない事をファルスやモニカから聞いているので、そういう事もあるかもと思って、納得してくれたようだ。


「わかりました、確かに私も何かで悩んだ時、温泉でゆっくりしていると、落ち着いて良い案が浮かぶ事もありました。ルシア様もそうなのですね。」


「そうそう、そうなんだ、お湯にゆっくり浸かると落ち着いて、頭もすっきりして、色々と考えがまとまるんだ。」


「それでは、また迎えに来ますので。」


 そう言って、イヨンは外に出る。ふう、助かった。イヨンの裸は見てみたかった気持ちも少しあったが(おじさんなので)でも、死地を共に切り抜けた友の嫁さんのだと、多分罪悪感で鬱になる自信あるわ。


「とにかく!風呂だーーー!」


 洞窟内は湯気で視界が悪かったが、篝火のおかげである程度の位置はわかった。

一応、身体を洗ってからゆっくり入りたい。


「木の桶はあるな、デカいけど。」


 ああ、人族用もあるじゃないか、タニカル家族用かな?ちょっと使わせてもらおう。お湯をすくって、浴びる・・・。


「くーーーーっ、効くーーーーっ。」


 ちょっと熱めだが、気持ちいい!お湯で身体を洗うなんて、前世ぶりだ!洗い場の様なところに、何かの植物の灰と、何かの油を混ぜた粘液質のものが、大きめの桶に入っていた。石鹸か何かか・・・。


 おお、泡立つ!匂いも悪くない、柑橘系だ。オーガーは風呂文化が高そうだ。

温泉が近くにあるから発展したのか?温泉・・・、ここ火山の麓か!?ちょっと怖いが、それより温泉!


 灰の石鹸で髪も全部洗って、お湯で洗い流す。そして、念願のお風呂に恐る恐る入る。


「くーーーー、ふひーーーーー。ふはーーーー。気持ちええーーーー。」


 先ほどイヨンに適当な事言ったが、体は浮きやすかった。小人族は沈まないのか・・・。まあ、前世でも別に泳げない訳ではなかった。得意では無かったし、息継ぎが下手くそで、クロールで25メートル泳げない事もあったが、立ち泳ぎとか平泳ぎはできた。


 小人族の体で試してみたが、溺れることはなさそうだ。


「ふへーーーー。やばい、溶けそうだ。」


 しばらく背泳ぎでプカーと浮いている。ちょっと寝ていたかもしれない。人が近づいてきている事に気付けなかった。


「ルシア様、ご一緒してもよろしいですか?」


ルモアさんとモニカが胸までバスタオルの様な厚手の布を巻いて、浴槽のへりまで来ていた。


「わわわ、いや、ちょっと。」


 びっくりして危うく溺れそうになる。


 あかんに決まっている!


 でも、服も脱いで来ているのに、ダメだから戻れともいえないし・・・。そう、悩んでいると、その後ろからタニカルさんが現れる。


「イヨンさんに聞いたら、考え事があるのでそっとしておこうと言ったのですが、モニカがどうしてもってうるさくて。あとルシア様は小人族にしては奥ゆかしく、貞操観念がある方なので、ルモアが家族一緒なら良いのではと、それで家族みんなで来たのです。ご迷惑でしたか?」


 ああ、うう、まあ、タニカルさんもいれば、間違っても間違いは起きないだろうし、起こす様な人はいないだろうし、大丈夫か・・・。


「わかりました、構いません。一緒に入りましょう。」


 ちょっと上ずっていたかもしれない。ルモアさんは、金髪美人でめちゃスタイルが良い!子持ちとは思えなく若々しく、それでいて逞しさもあった。


 そしてタニカルさんも、引き締まった体に、刀傷も多く、商人とは思えない体をしていた。


「お二人は冒険者だったりするのですか?」


 しまった、年齢的には自分より年下だから、うっかり上から言ってしまった。子供の姿ですごい違和感じゃないだろうか、あと失礼じゃ無かっただろうか。しまったと思ったが、別に気にされなかった様だ。


「ええ、実は以前はルモアと一緒に冒険者をやっておりましたが、右足をちょっと大きめの怪我をしてしまい、ダンジョンなどを冒険するのは難しいと判断し、引退し、冒険者時代のツテで交易をやっております。」


 魔法で何とかなる世界でも治せなかったとなると、切断とかか、魔法である程度再生できたかもしれないが、完治までは出来なかった所か・・・。


「モニカにも剣を教えていたのですが、この前は相手の実力を見誤って、飛び出して返り討ちにあって、あとはルシア様に助けていただく事になった訳です。」


と、頭をかいて、タハハと困った顔になる。モニカも縮こまっていた。


「あれは、1対1と思ったら、弓兵が隠れていたので対応ができなかっただけよ!」


「あれは完全に、弓兵の射線に釣る動きだっただろう!賊も技術が上がっているのだ、戦術教本は読んでいるのか?」


 モニカは耳を塞いでいる。モニカは勉強が苦手の様だ。


「ルシア様は直感で戦ったりしないのですか?戦略・戦術を組んで戦っています?」


 こちらに近づいて、乗り出し、今にも覆い被さろうとする様に聞いてくる。湯でほんのり赤く上気した顔で、近づいてくるのでどきっとする。


 オーガの巨大浴槽で、モニカ達は浴槽の中の岩場に腰を下ろしている。私もそこに座っているがギリギリ首が水面から出ている状態だった。


 モニカがこちらに近づくために立ち上がって来たので、見下ろされる形になる。私はもしかしたら、ちょっとエムっけがあるのだろうか、ちょっとドキドキする。


「ま、まあ、できれば安全で高い勝率に持っていく様に動くことは基本と思う。無駄に傷つくことなんて無意味だし。」


 私の場合、少々のダメージも死に直結するので、無駄に傷つかない様にするのは基本ではなく必須事項なのだが・・・・。


「やっぱり、ルシア様はそっち側の人なのですね。」

 

 モニカがしゅんとしてしまった。かわいいなあ、おい。


「私は魔術師だから、そう思うだけで、戦士なら直感を信じて動くのもいいかもせれないな。ただ、それは戦闘中であって、戦闘に入る時は、状況を把握して、戦況をみて、どう戦うかをイメージした方が、いいと思うぞ。もし、守りたいものがあるのなら、これからはそうしてみてはどうだい?」


 小さい子供に言い聞かせる様に、優しく諭す様に言う。だって、30近く離れているんだし、そういう口調になってしまう。この体の生態年齢は知らんけど・・・。


「すごい・・・、ルシア様ってこんなに可愛いのに、軍師みたい、すごい。」


 そう言って抱きついてくる。わわわわ、ほぼ裸の美少女に抱きつかれた!

や、柔らかい、いい匂い。無邪気にルシアの頭を胸に抱きしめる。やばい、両親の前だぞ!


「こ、こら、離れなさい!」


恥ずかしくなって、押しのけるときに両手が、モニカの胸を鷲掴みしてしまう。


「キャ、ご、ごめんなさい。」


 モニカが、胸を抱えて後ろをむく。まさか、私がラッキースケベを経験するとは・・・。柔らかかったな〜。


 しかし、私が可愛いというのがよくわからない、モニカの目は節穴か?小人族に転生しても容姿は普通、いや普通以下だと思う。モニカの心の色眼鏡に命の恩人補正が掛かってしまっているのだろう。あとはただの小さい物好きか。


「これ、モニカ、ルシア様が困っているだろう!申し訳ありません、ルシア様、お見苦しいところをお見せしました。」


 タニカル夫妻が深々と頭を下げる。


「モニカ、もう私たちは上がろう。ルシア様の貴重なお時間をいただきありがとうございました。また、あとでお食事の時にでも・・・。」


 モニカが「えーー」とか不満をあげているが、ルモアさんが無言の威圧を放っており、モニカも渋々出ていく。


「ルシア様、またあとでね!」


 ペコリとお辞儀をする。プルンとバスタオルを巻いた胸が揺れ、谷間が見える。私、今、にやけていないよな。タニカル夫妻に変にみられていないよな・・・。


 ・・・・・。


 タニカル夫妻が出ていくのを確認すると、打ち上げられた魚の様に、プカーと仰向けに浮かんだ。つ、疲れたー。ヤバかった、危うく、(危うく何だ?)とにかくなんか疲れた。


「俺には、異世界で俺つえーでハーレムとか絶対無理だな。ヘタレすぎ!」


 おじさんだけど、素人童貞、ずっと彼女なしだった私には難易度が高い。前にイチャコラしたいとか言ったけど、無理!無理です!あれも撤回だ!なんか色々撤回して、ブレブレな自分に自己嫌悪しながらぷかぷか浮いていた。

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