チズルの願い

 Side 白鳥 チズル


 私は今日もパワーローダーを身に纏い、畑を耕す。


 どうして皆、争うのだろう。


 どうして皆、手を取り合って国を豊かにしていこうと出来ないのだろう。


 どうしてこの国はこんな風になったのだろう。


 その答えは最近知った。


 日本は自滅したのだと。


 政治に関心を持たない国民。


 国民に圧政を敷く政治、官僚。


 その二つが今の時代を招いた。


 だが、それが分かったところで今の時代が良くなるわけではない。


 今日と言う日を必死に生きるだけだ。


☆ 


 私の友人は変わり者だ。


 佐倉 ユキ。


 ピンク髪で子猫のような可愛らしい華奢で小柄な女の子。

 色んな物を収集していてる。


 漫画、アニメ、ラノベ、映画、ゲーム――まあ色々だ。


 インターネットもやりたいと言っていたがインターネットは電波妨害システムの関係で使えないらしい。


 普段はパワーローダーの整備の手伝いとかをしている。


 私に色々な事を教えてくれる女の子。


 私が図書館に入り浸る理由を作ってくれた女の子でもある。


 =昼・図書館=


 私はユキと一緒に昼間から図書館に入り浸る。

 農業は忙しい時は忙しいが、暇な時は暇なのだ。

 パワーローダーの御陰で農作業が効率化しすぎたせいもある。

 

 それでも町の警備とか狩りとか色々とやる事はあるが、池神市のコミニティでは十代半ばの少女は出来る限り学生らしい生活を義務付けている。


 何故そうするのか昔は分からなかったが、時が経つにつれて大人達は私達のような子供を気遣ってくれているのだと感じた。


 ユキはその事をどう思っているのか知らないが、アレコレとお喋りする。


「――大丈夫?」


「ごめん、最近悲しいの」


「なにが? チズルって色々と溜めこむタイプ?」


「それはどうか分からないけど――ユキは今の時代どう思う」


 ユキは「んー」と考えこみ。

 そしてこう言った。


「分かんない」


 と。


「物心ついた時から日本は今と変わらない感じだったしね」


「そうね」


「チズルはこの国を変えたいの?」


「出来るなら」


「だよね。日常的に殺し合いしてるもんね」


 そう。

 この国は何時も何処かで殺し合いをしている。

 

「ユキが見せてくれた漫画みたいに、生きるために殺し合いする必要がなかった日常が欲しいと思った」


「どうすればいいんだろうね」


「わかんない」


 幾つか方法は考えた。

 だがどうしても沢山の血が流れる。

 

 それはイヤだった。


 なによりも耐えられない。


 その度に思う。


 昔の日本の人達はどうしてこんな風になるまで放置していたのか。


 この国を変えようとしなかったのか。


 私には分からなかった。

 

「チズル」


 そっと私の手に両手を置いてユキはこう行った。


「一歩一歩、進んで行こう」


「一歩一歩?」


「確かに今は辛い時代だけど、だけどそれでもチズルが目指したい道は、きっともう分かっている」 


「私が目指したい道――」


 ハッとなった。

 いつも自分が言っていたことだ。

 

「手を取り合って復興を目指す」


 単純な事だ。


「それがチズルのやりたい事だよ」


「そうね――」


 そこで警報が起きた。


 コミニティに襲撃者が来たのだ。



 私はパワーローダー、ヴァンガードを身に纏い戦う。

 

 私の考えている事は今の時代は理想論かもしれない。

   

 でもその理想のために私は戦おうと思う。


 それが例え矛盾だとしても。 

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【短編】荒廃国家日本 MrR @mrr

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