今夜はあなたとずっといっしょに(その③)

「どんな星よりも、どんな宝石よりも、どんな花よりも、、、君が美しい」

そんなことを言う男こそが私の夫だった。没落貴族の落ちこぼれ、当時の彼は本当にどうしようもない人だった。すべて与えられてきたからか何もできず、貴族だったことを忘れられないからか、変なプライドを捨てられないような人だった。ヨーロッパを追われた彼がたどり着いたのは、山の中腹の別荘。

「僕は必ず金持ちになってやる!!お前らはここで汚らしい泥にまみれて農作業でもしていろ!!」

当然、異郷の地でそんないけずな人が周囲から慕われるわけもなく、彼は別荘に一人で寂しそうに住み、人と接することを嫌がった。

人と接するのを怖がるからか、現実から逃げ、小説を書くことに夢中、いや盲信してしまったのかもしれない。そんな彼を、私は遠くからひっそりと見ていた。私の人生はこの男と似ているように感じたんだ。気づいたら私は彼のもとへ通っていた。最初は田舎の読書の好きな田舎娘と外国から一人で来た青年が、最初から仲良く話せるわけはなく、初めのうちは近くにいるのにお話はしない微妙で絶妙な距離感があってもどかしかった。そんなぎこちない雰囲気が幾分か続いた後、

「何読んでるの?」

それは、小説の恋物語と比べたら、実に質素で素朴なものだった。

「それは、、、、、、、、?」

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