今夜はあなたとずっといっしょに(その②)
おじいちゃんのお墓は、おばあちゃんの家のすぐそばの小さい山にあった。小さな一つの灯りが僕の目に焼き付いた。小さな光だが、その灯りは決して弱くなかった。先ほどの後悔はどこへやら、僕はその灯りがある方向へ、僕は走り出していた。
「はっ、はっ、」
息がしずらい、空気を沢山吸おうと思っても、冬の夜の冷たいものが僕の肺を虐めた。やっとの思いで灯りのもとへ行くと、そこにはやっぱりおばあちゃんがいた。
「おかえり」
おばあちゃんは不自然なくらい穏やかだった。
「ひょっとしたら、来るのは今日じゃないと思ってしまったよ」
「あはは、一人で来るのは初めてだったから、ちょっと道に迷っちゃった」
「そうかい、家にいなくてごめんね、今日はおじいちゃんの命日だから、、、」
そうか今日はおじいちゃんの命日か、僕は全然知らなかったんだ。おじいちゃんのこと、そしてふたりのことも、、、。
おじいちゃんのお墓は普通のお墓じゃなかった。おじいちゃんのお墓は洋風のお墓だったんだ。
「ねぇ、おじいちゃんはどういう人だったの?」
僕は聞いてみた。おばあちゃんは優し気な、でも少し自慢げに言った。
「おじいちゃんはね、やさしい春の風みたいな人だよ」
「それってどう言う意味?」
お墓の周りにある杉の木はまっすぐ伸びている。その木一本一本が、まるで僕らのことを見つめているようで、無意識にそっちに意識がずれる。
「いい機会だろうからよく聞いときな」
その言葉が僕の意識を自分の中に連れ戻した。
たった一つの提灯の灯りしかないはずなのに、自分たちの周りは明るい。僕は自分たちを照らすものを探した。ちょうど空を見上げた時、それはそこにあったんだ。
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