第39話 慣れない物
翌日、まずは街並みから慣れようと純から提案され、買い出しをしながらお昼までには戻ると父親に告げ、2人で街へと繰り出す。
初めは恥ずかしいと断っていた純だったが、あまりにも車にびくつくジェフリーを見兼ねて、手を繋ぎ歩き出す。
歩道の歩き方、信号の渡り方まで、まるで幼い子供に教えるように一つ一つ教えながら2人は歩く。
商店街へ入ると、ジェフリーの服を2人で選び、スーパーで買い物をし、途中で暖かい飲み物を買って、帰り道の公園でベンチに座る。
少し疲れた表情のジェフリーを、心配そうに見つめる純に大丈夫だと返す。
「無知は恥ではない。知らなければ、学べばいい。そんなに心配するな。だが、あの車と言う物は慣れる気がしない」
ため息を吐きながらそう呟くジェフリーに、純は微笑む。
「それなら、出かける時はいつも一緒にいましょう。こうして手を繋いで、どこかに行くときは僕も一緒に行きます。それなら、何も怖くないでしょ?」
純はジェフリーの手をぎゅっと握ぎると、嬉しそうに微笑んだ。
「そうだな。ジュンがいれば、何も怖くない。そうしてくれるか?」
握られた手を引き寄せ、手の甲にキスをしながらジェフリーは優しく微笑み返すと、純は顔を赤らめ、小さく頷いた。
自宅に戻ってから、少し休むように促す純を他所に、ジェフリーは働きたいと申し出る。
ゆっくりでいいと言う純としばらくの間押し問答していると、父親から喫茶店に出るように言われ意気揚々とジェフリーは出ていく。
「ほら、お昼ご飯だ。ご飯を食べながら仕事の事は決めよう」
父親から急に食事を出され、ジェフリーは促されるまま席に着く。
「ジェフリーくん、実はね、純一が怪我をしてから、純一には他の仕事をしてほしくないと言っているんだ。それよりは、何か対策を考えて喫茶店を盛り上げる方がいいと思ってね。ジェフリーくんが良ければ、ここで接客をしながら力仕事をしてくれると助かるんだが、どうだい?」
父親の提案に、ジェフリーは笑顔になり、力強く頷く。
「接客というものがよくわかりませんが、力仕事なら得意です。それに、ジュンと一緒に働けるなら本望です」
「そうか。接客については追々覚えていけばいい。力仕事というのはコーヒー豆や、食材を倉庫に運んだりする仕事だ。私も体を壊してから、なかなか重い物を運ぶ事ができずに、純一に任せていたんだが、なんせ、この通り体が小さいものだから心苦しく思っていたんだ」
「父さん!」
突然、体の小ささを指摘され、純が顔を赤らめ怒り出す。
それを見て父親が苦笑いをする。
「すまない。だが、心配だったんだよ。色々我慢させたせいか、たださえ健二より体が小さいのに、力仕事も他の仕事もさせてしまっていつか倒れてしまうのでは無いかと思っていた。そんな矢先にあの怪我だ。無理をしてほしく無いんだよ。このままでは母さんに顔が立たない」
悲しそうに言葉を繋ぐ父親に、純も口を紡ぐ。
ジェフリーはすぐさま立ち上がり、父親へと真っ直ぐに視線を向け口を開く。
「父上殿、これからは私を頼って欲しいです。ジュンは私の伴侶だ。そして父上殿も家族です。家族を、伴侶を支えるのは私の役目でもあります。まだ色々と覚えていかないといけない事があり、何かとご足労をかけると思いますが、力を尽くします」
そう答えるジェフリーに父親はにこりと微笑む。
「そう言ってくれるとありがたい。そうだ、まず最初にその丁寧な言葉使いをやめよう。君の言う通り私達はこれから家族になる。遠慮は必要ない」
「承知した」
ジェフリーは短く返事をして微笑む。すると、純が隣からぼそっと呟く。
「伴侶って、僕がお嫁さんなのかな・・・・?」
その声を聞いたジェフリーと父親が声を出しで笑う。
そしてジェフリーはそっと、純の手を取り、キスをして微笑む。
「私はどちらでも良い。ただ、伴侶というのは何も嫁という意味だけではない。生涯を共にするパートナーだと思えばいい。ジュンは私の生涯の伴侶だ」
ジェフリーの言葉に純は満面の笑みを浮かべた。
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