第2話 職を覚える
職を覚える
〜〜〜マリィ
うっすら明るい方へ階段を登ると俺は半地下の安置所の様なところから出てきたようだ。
周囲は暗い。
「ふーむふむ、若い傭兵、石壁に集団墓地ね。う~ん、死亡率高そう……」
外に出る前に周りをジロチカ伺うと、そこは丘をくり抜いて作られた集団墓地のようだった。
地面に木の棒や剣、槍が思い思いに突き刺さしてある。
俺も棺に良さげな剣が入っていたし、そういう埋葬文化なのかな?
やっぱり、我復活者ムーブはダメそうだ。
ゆっくり急いでコソコソする。
遠く離れたところに燈火が見え、ガッチリと組まれた石壁が照らされている。
街かな?
外敵がいるのだろうか?
心配事に眉が下がるが、どうにか引き締める。
今は、日の出前のようで、出来れば見つかりたくない。
レア復活者な俺には都合がいい。
自分の手を[確認]をしながら考える。
マリィ_人間_戦士_レベル1
状況的に人間的な暮らしは諦めていたが、[確認]さんが人間だと判定しているので希望が湧いてきた。
ご飯も食べられるし、寝ることも出来るだろう!
戦士、レベル、というのに不安を感じるが……。
「ヒトらしく健康で文化的な最低限度の生活を目指そうっ」
大目標を小さく声に出しておいた。目標は大事だ。
しかし、このまま街へ直行するのは悩む。
棺に積もっていた埃からして、この子は数年程度の棺暮らしではない。
かなりの長期間、永眠していたと思われる。
近くの街だと副葬品を整えてくれた知らない知人がいるかもしれない……。
この子の死を知っている、俺が知らない知人なんて、困ったことになるに違いない。
死んだはずの子が歩いている。
棺に入れてあった服を着て。
「レベル1って弱いよな?」
弱くて情報が無いうちに、ほぼ確定で困ったことになるか。
弱いけど、外敵のいるかもしれない外へ活路を見出すか。
という、二つの選択肢を天秤にかける。
朝日が昇ろうとしている。
石壁の色あいが燈火と朝日の光で競い合っているが、当然ながら朝日に軍配があがるだろう。
時間は無い。
半分寝ていたような見張りの衛兵が、交代なのか下がっていく。
脱出に最高の機会、なんともなしに周りを見回す。
!
記憶にある特徴的な植物を見つけた!
確認さんの判定は……。
よし、決めた。
この街は避ける。
#####
俺は朝日に照らされる街に背を向け街道?を行く。
足跡だらけで不思議な道だが、きっと作り直す金がないんだろう。
どこか他の街に行けば、知らない知人に会うこともあるまい。
幸いなことに、こちらには[確認]さんがいる。
食べ物に困ることは無い筈だ。
文字通り道草を喰う為クルクルと渦巻いた山菜や食べられる判定の草を拾いながら街道を行く。
調理の仕方はわからないが、副葬品に塩があったはずだ。
火を通して塩を振っておけば、きっと食べられるだろう。
んふふ、後で塩焼きにしよう。
生前の持ち物が全部放り込まれたのか包帯やら水筒。(酒が入っている!)
更には野営セット?が揃っていたので旅は順調だ。
茶色の革製カバンにフライパンや厚手の雨具、スコップが外付けになっている。
まさに冒険者っぽい装備品だ。
防具の前に、旅道具を揃えていたのはどうかと思う。
防具は葬式代に売られたのか?
それとも、形から入る人だったんだろうか?
知人さんが、この子の死後の旅路を思ってか?
この少女には、謎が多い。
だけど、俺が……私が旅をするのに都合が良い。
人に会った時の為に内心の一人称も統一しておく。
すると現金なことに、自分が自分になった気がする。
朝の内に小川から水を回収して。
山菜を焼いた後のフライパンで煮込む。
洗うついでに、煮沸というやつだ。
何処かで聞いたきせいちう?退治だ!
そうしてお湯は、水筒に流し込み、水を確保する。
酒?は糞まずいので石碑に捨て……お供えした。(ありがたい)
飲料可とあったのに、味の保証は無いらしい。
驚いたのは発火器とやら。
調理のための火がワンタッチで出るのだ。
これが、いつまで使えるのかわからない。
だが、これがある間は調理用の火の心配はない。
おがくずか何かを種火として灰に包んで歩く羽目になると思っていたのだが、ラッキーだ。
発火器は、金属の小型七輪みたいな見た目で良い火力だ。
何を燃料にしてるやら。
昼までは、街道を進みながら拾った山菜の整理をする。
山菜には、うまいのとまずいの、辛いやつ、そして甘いやつがある!
まずいのは酒と同じで、やけに多い石像や祠に捨てて……お供えしてあげる。
なんだか、ポイポイ捨てるのも嫌な感じなので……。
作法はわからんから、仏教風にパンパンと拍手。
気持ちだから!(良き心掛けだ。同行しよう)
後、ついでにやってるのは、やけに多かったリボン?やら、護符?やらの布製装飾品を解して糸の確保だ。(目を覆う)
服が柔くてすぐにボロになるので、繕うために補充だ。服の色とかけ離れたキラキラカラフル糸だが、糸は糸だ。(首を傾ける)
昼になったら、山菜のうまいのと辛いやつをまとめてフライパンに放り込み炒めて塩を振る。
外敵にも、人にも、だーれにもあわないので、恥辱心を捨てて歩き食いする。
(貴公、傾いているな)
夜は雨合羽に体を包み出来るだけ高めな場所。
木の陰になる場所で眠る。
雨が降ったことはないが、高所からの索敵に有利な気がしたし見晴らしもいい。
毎回出来るだけ、同じ条件の場所で休んでいる。(それで良い)
――そうして数日の間街道を旅した――
通り道には村のような木製の要塞じみた場所もあった。
だけど、弓を持った歩哨が見張っていて物騒だったので、大回りして回避した。
あんな重武装の村意味わからんし、隙あらば盗賊にジョブチェンジする事だろう。
私は詳しいんだ。
でも街道外の道は何だか心細くて。(街道は外れるな)
おやつに焼いて貯めていた甘い山菜をもちょもちょと、しゃぶってしまったが、また拾えばいい。
ここで現状確認をしていこうとおもう
私は戦士らしい。
[確認]さんが、そう言っている。
とんでもなく体力があることは自覚している。
蘇生明け?で即旅立って寝るときや調理中以外、一日中街道を進んでもピンピンしてる。
素人なので旅慣れていない事で起きるはずの怪我やらの問題を多分、自然回復でゴリ押し出来てしまっている。 (怪我なんてしてたか?)
山菜採りや糸作りに服の繕いなど、旅以外の行動をどんどんやっても元気いっぱいだ。服が妙にカラフルになってしまい、調味料が恋しいが……。
オシャレ!オシャレだから!(貴公、傾いているな)
旅生活はなんとかできてるので、次のステップ。
戦う力を見つけなければならない。
まだ敵には遭遇していないが、ここまで、ふぁんたじーな女の子(決して服装のことではない)になったなら、敵も現実離れした代物だろう。
敵が弱かったら?
まぁ、人間以外はお肉になって貰う予定だ。気軽に行こう。(勝つ前提かよ)
訓練といえばキックボクシングのスパーリングだと考えた私は、いい感じに朽ちた倒木に向かってビュンビュンとキックやパンチを繰り出す。
キックだパンチだ! と、繰り出した音がすでに頼もしい。
(業物の短剣は破損が怖いのか素振りしかしていないが、鏡代わりに毎日磨いてピカピカだな)
インパクトの瞬間、足が光り輝く!
[キック]で 枝を破壊!(ンンンン?)
腕ぐらい太さの枝が砕け散ったのを見て、自分の戦う力であるキックを自覚した。
キックか! ヒーロー味が有って宜しい!
必殺のキックで敵を討つ、だ!
れべるいち せんしって すげぇ〜 (初士の力では無いな)
――確認――
[確認]ぜんまい_山菜_新鮮_可食
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