ゲームっぽい世界の屍姫にTS憑依した私は、チート鑑定能力[確認]で生き抜き、主人公と交代する。

ランドリ🐦💨

第1章 ガルト王国編

この世界を知る

第1話 天空から墓穴へ一直線

 天空から墓穴へ一直線

 

 ~~~???


 夢を見ている。

 飛行夢を見ている。

 巨大な山々通り過ぎて。

 輝いてみえる遠海を目指す。


 ふと視界の端にある大樹の緑の森に興味を向けると、なにかにぶつかってバランスを崩し、墜落してしまった。


 そして……。


 まばゆい光に夢が焼かれた。

 

 暗い……。


 何も見えないために、他の感覚が研ぎ澄まされる……。


 強烈な匂いがする……。


 なんと言うべきだろうか。


 ずっと着替えていないような、とても嫌な匂いだ。


 今、俺は仰向けの体勢になっているようだ。

 背中には布越しに硬い床の感触がある。


 そんな場所で寝ていた?からだろう、どうも身体中がきしむ。

 体を伸ばしたいところだが、視界が塞がってるのが、いただけない。


 慎重に…まずは身の回りを探ろう。

 硬い床に腕を突き出してグッと起き上がろうとする。


 と、すぐ頭にコツンと硬いものがぶつかる。


 ……。


 手で慎重に回りを探る。


 ペタペタと硬いものに、どの方向も阻まれた……。


 ……!!?


 まさに八方塞がりなので、パニックになり暴れる。


 色々ぶつかって痛いが、それどころではない。

 しかし、暴れていると、前方が少し動いた!

 動いたことに希望を感じたので意識を集中し、前を塞ぐ板状のそれをグイグイ持ち上げ、そのまま押しのける。


 すると


 ぼんやりながら視界が戻ってきた!


 〜〜〜


 暗室の中、何かが暴れている。

 中心にある木製の長い箱からバタバタと激しい音がしている。


 ガランっと木製らしきフタが動いた!


 フタはズリズリと音をたてながら動き、バタリと落ちる。

 大量の埃が舞いその存在は白い布を纏った体を起こした。 

 

 黒の長髪をゆらゆら、揺らしながら首を回す。


 そして青く目を光らせた。

 空のような青色が2箇所、埃の中で光る。


「ゲホ! ゲホッ! ゲフ! エエッ? アー? 髪!? 髪ナンデ? 人毛製? あナたの髪? オレ丿髪?」


 高めの声だが喋り方がおかしく聴き取りにくいが……。

 どうやら彼女? は自分の髪に驚いているようだ。

 少しくたびれている普通の黒髪をいじってはウンウンと頻りに頷いている。

 しばらく、目を青く点滅させて(!?)

 体をジロジロと確認した後、何かに納得したように一言。


「目覚めたら、なんでもわかる女の子になってた」


 意味不明な事を言いながら、ゆっくりと立ち上がり白い布を脱ぎ捨てた。


「これが嫌な臭いのやつだな、サラバだ」


 嫌そうな顔をして臭いらしい白い布と決別するようだ。


 スッポンポンで……。


「開放された! 自由だ!」


 ニコニコと腕や首を回しながら、動き出す!


 しかし彼女はずるっと、その場で物を踏んで転んだ。


「……」


 むくりと起き上がると、痛みにしばらく固まっているようだ。


 記念すべき第一歩を踏み出すのに失敗した。

 一歩目の失敗に表情をムスッとさせている。

 自分の周りにあった物品を掻き集め。

 ジロジロ、チカチカ、状況の把握に努めている。

 彼女が入っていたのは木製の箱の中だったようだ。

 ジロジロ見つめるたびに、目がチカチカ青くなる様子は怪しげである。


 棺桶の中の物を一通り見つめ終わったのか。

 次は外側だと、今度は横に落ちた箱の蓋をジロチカすると、彼女は固まった。


 しばらく固まった後、頭を抱えはじめる。


 ~~~マリィ?



 暗い場所で副葬品らしいカバンをいじくり回して[確認]しながら同じく副葬品の服を馴れない体で着直していく


 謎の服パーツを握りながら食いつくように自称? [確認]スキル? を使った。


 まあ、鑑定って奴だな。


[確認]こしぬの_布製_服に付属_巻いて末端ははさむ


 自分の入っていた棺をジロジロと[確認]すると……。


[確認]棺_木製_これはあなたの棺だ_棺の蓋を乗せる


 薄々と気が付いていた事実の確認に、棺! の縁に青白く頼りない小さな両手で寄りかかり、嘆く。


「俺ってば死人なの? 普通に暮らせるのか? 人外転生みたいな? 厳しくないかな? 棺の蓋を乗せるって何!? 死んでないから! 生きてるんですよ!?」


 そう不平や疑問を垂れ流しながら、チカチカと[確認]を止めない。


 [確認]は簡単な使い方・素材を教えてくれるので、何が有用なのか判断できない現状、少しでも状況を良くしようと足掻いている。


 自分の置かれた状況がわからない今の俺(今は女の子みたいだが)にとって[確認]は本当の命綱だ。


 しばらく見回していると、良い物を見つけた。


「いいもん、あるじゃねえか。」


 体の横に落ちていた鞘付きの短剣だ。

 刃渡り40センチほどでかなり大きいが、[確認]さんは使用可能な短剣だと言っている。

 グイグイと慎重に留め金を確認しつつ、鞘をこしぬのに挿す。

 その姿は布の服装備の新人冒険者! 街娘が剣を持っただけ、とも言うが……。

 スルスルと鞘と短剣の柄を固定している紐を外すと、引き抜いて刃に顔を映す。


「ご対面! って、若もんじゃねえか……。可哀想に、思ったより、若いな……」


 カッコ良い刃物に変なテンションになって雑な口調が飛び出すが、あんまりな若さに同情する。


 何か処理をされていたのか綺麗な刀身に、世知辛さにひん曲がった口元と下がった目尻が映る。

 目の光を受けて青い刀身には、頭に少し埃をかぶり、目の間に指を当てた灰色の目尻を下げている長い黒髪の少女が映っている。

 頭や副葬品を突っ込んだカバンから素早く埃を払うと、やけっぱち気味に立ち上がった。


「もう、ここに見るべきものは無いな! シレ~っと出れば大丈夫! 久しぶりの娑婆だぜ! みたいな? 我復活者ぞ?」


 望み薄だが内心でそういう世界であってくれ。

 と、散々荒らした自分の棺から祈る。


 編み上げの靴をキッチリ締めなおし。


 第一歩目で目に入った棺桶の蓋に、死亡時傭兵登録抹消済みと書いてあり固まったが、だいぶ前に死亡した元新人傭兵マリィこと俺が、復活なんて無いっぽい世界へ飛び出した。


 


 それ行け! マリィちゃん!


 …


 完全にモンスターだコレ!?



――確認とあとがき――

[確認]短剣_鉄製_戦士用_手に装備可


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