点を描く

 生暖かい風の吹く、昼過ぎの授業だった。

 暇だった。

 開いたままのノートに僕は黒い点を描いた。なんとなく──意味なんかない。本当になんとなく、ぐるりと時計回りに点の数を増やした。

 白い紙の中で一塊のありのように見えた。ひどく寂しそうに見えたので、僕は点を描き足し続けた。

 ノートの一ページが黒点で埋まるころに終了のチャイムが鳴った。

 僕は偏執的な抽象画のようなノートを見て、どうしてこんなことをしたんだろう、と首をひねった。

 次は数学か。

 ノートを閉じようとしたら、描かれた点が全て目になって、僕をじろりと見た。


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