理系漫才   (Not意味怖)

「はいどーも、遠山ですー」

「金さんですー」

「二人合わせて」

「「『ぜにがたへーじ』です!!」」


「さて金さん。SFには『シュレーディンガーの猫』ってーもんがあるらしいですな」

「SFとゆーより有名な量子力学の思考実験ですね、遠山さん。まあよく引き合いに出されるけれども」

「外からは見えない箱の中に、原子が崩壊したら毒ガスが出る装置が取り付けてありましてね。まあ、1時間後に崩壊するかどうかは五分五分――50%の確率としましょう」

「その中に生きた猫を入れると」

「1時間後に原子が崩壊しているかどうかは外からは見えない。量子力学の考え方で行くと、観測されてない以上、原子は崩壊している状態と崩壊していない状態が重なり合っていると解釈しないといけない」

「普通の人にはわかりにくいところですねー」

「だからシュレーディンガーさんはミクロのふるまいをダイレクトに猫の生死に結びつけたんですね。つまり猫が生きてるか死んでるかわからない。1時間後の箱の中には『生きている猫と死んでいる猫が重なり合った状態』が存在するわけで」 

「観測者がふたを開けるとその瞬間に猫の生死が決まってしまう、とそういう話ですね」

「シュレーディンガーさんは『そんなわけねーだろ』ってこの話を持ち出したんですが、なんかヘンにウケて広まってしまった」

「まあそういうこともありますわ」

「あれね、いっつも思うんですよ。猫っていうのがまずかったんじゃないかなって」

「まあ例えとしてはよくなかったかもしれませんね」

「ライオンとかだったらカッコいいじゃないですか」

「カッコいいとか悪いとかの問題じゃないですけど」

「箱を開けたとたん観測者がガブーとね」

「食べられちゃった!」

「結局怖くて箱開けられないから結果がわからずじまいになる」

「それ実験の意味ないねえ」

「だいたい猫を殺しちゃうのもよくないですね。世の中猫派も多いですから」

「まあ思考実験ですけどね」

「生きてるかどうかより、起きてるか寝ているかどうかの方がいいんじゃないかと思いますね、猫だけに」

「猫しょっちゅう寝てますから」

「で、観測者がふたを開けてみると」

「どうなってました」

「目を開けて寝てました。この場合どうなるんでしょう」

「知らんわ」


「「ありがとうございましたー」」

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