虎のはく製

 金持ちの家に男がインタビューに行った。

 応接間には大きな虎のはく製がのっそりとこちらを睨みつけている。

「素晴らしい獲物ですね。これだけの大きさの虎を倒すには、やはり大変なご苦労を?」

「昔の話だ。あの頃は体力も、射撃の腕も全く問題はなかった。苦労というなら、兄を一緒にハンティングに行こうと誘い出すことの方が大変だったよ」

「同じ趣味のお兄様がいらっしゃったのですか。それは初耳ですね。今どこにお住まいで?」

 金持ちは葉巻の煙をゆっくりと吐き出して、言った。

「そいつの腹の中さ」

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