ミセス・オレンジ   (Not 意味怖)

 道を歩いていると、ミセス・オレンジとすれ違った。

 彼女は近所のごく普通のおばちゃんなのだけど、ただ一つ違うところがある。頭のカチューシャの上に、オレンジ一個まるまる乗っているのだ。

 前に理由を聞いたことがあるのだが、『こうしとくと頭皮からビタミンが取れるのよ』ということだった。

 頭皮からビタミンが取れるならジュースでもかけときゃいいんじゃないかと思うけれど、そう言ったら馬鹿じゃないの、という目で見られた。理不尽だ。

 道を曲がるときにちらりとミセス・オレンジの方を見たら、知らない人と立ち話をしていた。

 その人の頭にはトマトが乗っていた。

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