第2話 癖と癖

勤め先の雑貨屋は朝11時開店、19時閉店。

定休日は水曜日。

その日以外は毎日店にいる。


社員は2人。オーナーがふらっと度々来る。


「調子どう?」

「腹減ってないか?」

「昨日何してた?」


あんまり仕事の話はしない。



あの日、結月を家に泊めた。

その翌日は定休日。

結月と昼頃、お昼ご飯を食べて出かけた。

一人暮らしをしてるので基本自由。


取りに行きたいものがあるからと、結月のアパートに寄ると、


「上がってって」と。


そこで2時間ほど過ごした。


女の子の匂いしかしないその部屋で僕はずっとソワソワしてると、


「おちつけ」と笑われる。


そして僕に後ろから抱きついて、


「ずっとこうしたかった」と。

「ゆづ、俺も」と言うと、

「涼ちゃん。大好きだよ」と耳元で囁かれると

押し倒したくなった。


でも我慢した。





――――――――――――次の日。


今日は結月がシフトの日。

たまたま事務所で作業をしていると、ある男子大学生に言い寄られている結月を見かけた。



「遊塚さん、彼氏とかいるの?」

「えー。いますよー。」

「へー。どんな人?」

「年上です。」

「年上かー。じゃあつまんないじゃない?歳近い方がいいこともあるよ。今度、一緒にどっか行かない?」


僕は、無言で机を拳で叩いた。


すると、一気に空気が凍りついて、男子大学生が事務所を出ていった。


出ていったのを見て、


「痛ってぇえ。やりすぎた。」と笑いながら結月を見ると、


結月は僕の傍に来て、


「ほら見せて。ばかでしょ。気に入らないのはわかるけど、怪我するよ。」


と、天使の様な顔をして僕の手を包んだ。



「ゆづ、嫌なら言って。怖いなら言って。いい?」という僕が聞くと、


結月は静かに

「わかった」と返した。



僕は結月の手を引いて、


地下へ向かった。


ここは、僕しか知らない。



書類や、イベント用のグッズが沢山入ってる。いわば倉庫のような場所。



僕は、僕より少し背の低い結月を本棚に押し付けて、首に手をかけた。


「さっきの覚えてる?」

「うん。」

「なんて言った?」

「嫌なら言え。怖いなら言えって言われた。」


声色は2人ともいつもと変わらない。


「約束は守れてるか?」

「守れてる。」


僕は、結月の顎を掴んで、キスをした。



「お前は俺のものなんだよ。誰にも触れられたくない。俺の宝物なんだよ。」


「わかってる。涼太がそういう人だって事もわかってる。それでもいい。……ううん。これくらい言われたい。」


「俺はしつこい。何度でも確かめるから。」


そう言ってキスして頭を撫でた。

キスして…優しく抱きしめて、、、。



「上、戻ろっか。の邪魔になっちゃう。」


そう冗談混じりに言うと、


「そうだね。」


そう返して、僕を引き寄せてキスした。



そう言えば、『好き』とか『愛してる』とか言ってないかも、とふとそんなことを思いながら事務所へ戻った。



戻ると、オーナーがそこに居て、


「式いつよ?」と笑いながら聞いてきた。


僕は苦笑いしながら、

「2年くらいは付き合ってたいですね」

というと、


「そんな耐えられる?」と結月が口を挟んだ。

「え?」と聞き返すと、


「そうだな。換気くらいちゃんとしとけよ。」

とまた僕をいじってくる。


「なんもしてませんって!」と言うと、

「まぁいいんじゃない?暇な時間なら。」とまた冗談みたいに笑って去っていった。


「ゆづ」と結月を呼ぶと、

「あたしは」いつでもいい」と僕を見た。


「衝動ではしたくない。……結月、俺は、愛しくてたまんなくて……そんな時にしたい。……今そんな感じ。」


すると結月は僕を椅子に座らせて、

「今日、待ってるから」と耳元で囁いた。


僕は、結月を抱き寄せて、身体を震わせた。


「結月……ダメだって。出ちゃう。」

「あー勿体ない。まだ出さないで。」

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