第68話 おばさんエンペラーイーグル、プレゼンする

 さて、どうしたものか、と倒れている1匹と1羽に目を向けます。

 白虎のほうは小さくなれるので連れ歩くのも、なんとかなりそうですが、こっちのエンペラーイーグルは、さすがに大きすぎます。

 それに、エンペラーイーグルを従魔にしたら、白虎のほうも、という話になるでしょう。


「うーん、悪いけど、ただ言葉が話せるようになる程度じゃ、私の方で従魔契約するメリットがないような?」

『いやいや、会話だけではないよ。こうして』


 目の前のおばさんエンペラーイーグルが、グーンと小さくなって、普通の鷹くらいの大きさになってしまいました。


『こうして身体の大きさも変えられるようにもなるんだよ』

「……へぇ」


 小さくなると、野太かったおばさんエンペラーイーグルの声も、甲高い声に変わる不思議。


『それに念話もできるようになるし、どんなに離れていても、主の場所はわかるようになるんだよ』


 それは一緒にいなくても大丈夫、ということでしょうか。餌のことや、世話をするのが楽であるなら、少しは考える余地はあるでしょうか。


『それに、大きくなれば』


 グーンと再び同じ大きさになりました。


『こんな山くらいは、一飛びで越えられるわよ?』


 その言葉に、耳がピクリと動く。

 

『うちの息子なら、子供三人なんて軽々よ~』

『お、俺だって、3人くらい運べるぞ!』


 いつの間にか気が付いた白虎が、元気に反論しだしました。


「それだと、ダーウィが残されるから、ダメよ」


 ダーウィを残していくという選択肢はありません。

 少し離れたところにいるダーウィたちに目を向けると、背に乗っていたダニーが、泣きそうな顔でダーウィの首に抱きついています。サリーはギロリとおばさんエンペラーイーグルを睨んでいます。


『あらぁ、だったら、その子を掴んで運ぶこともできるわよ?』


 ――掴む!?


 それを想像して、ダーウィが可哀想すぎて、首を振りました。


「無理でしょ。絶対、怖がるわ」

『そうかしら。あなた『スリープ』は使えないの?』


 首を傾げながら、おばさんエンペラーイーグルが言います。彼女が言う、『スリープ』は闇魔法の一つです。今の私は、まだ闇魔法は使えません。たぶん、MPの最大量が足りないせいだと思います。


 ――あ、そういえば、アレがあったか!


 私は慌ててインベントリを開いて、アレを探しました。たくさんの雑多なものから、ようやく見つけたのは。


「眠り香!」


『ねむりこう?』

「ええ、これを使えば、ダーウィも眠れるはず」


 これも『フロリンダ』時代に、王宮勤めの薬師だった友人から貰ったモノです。何のために貰ったのかは忘れてしまいましたが、これならダーウィを眠らせることができるでしょう。


「……そうね。上手く私たちを山の向こうまで運んでくれたら、考えてもいいわ」

『そうこなくては』

『ず、ずるいぞっ!』


 白虎が尻尾を立たせて文句を言ってきましたが、おばさんエンペラーイーグルのひとにらみで、無言になってしまいました。年季の違いか、迫力があります。


『そうと決まれば……息子よ、さっさと起きんかいっ』


 バシッとおばさんエンペラーイーグルに蹴られた息子さん。

 ……怪我してないといいのですが。

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転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!  実川えむ @J_emu

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