第35話 街道を進もう
翌朝も早い時間に宿を出て、街道を馬車で走ります。
オレンジ色の朝日に照らされながら街道を走っているのは私たちだけのようで、澄んだ空気が気持ちいいです。
昨夜は、私の手作りのココーンのスープと、キャン(葉物野菜)とワイルドコッコの肉の炒め物、それにアーカンスの街で買い込んだパンで夕飯にしました。
一人で作るのは初めてでしたが、思っていたよりもできたのは、孤児院で院長先生のお手伝いをしていたおかげかもしれません。
料理の味は、そこそこ、でしょうか。双子も喜んで食べてくれたので、ギリギリ合格というところでしょうか。パンはやっぱりおかみさんのパンのほうが美味しかったけれど、これは仕方がありません。
宿のベッドは、孤児院のベッドよりはいいですが、馬車の床やテントのベッドを覚えてしまうと、ちょっと……と思ってしまいます。
これから先、村や町に寄るたびにかかる双子の入町料や宿泊費を考えると、野営したほうがいいのかもしれません。
とりあえず、情報を仕入れたり、食料などの必需品を買う時だけは寄っていくのが無難でしょう。
御者台には私だけではなく、両サイドに双子が座っています。二人の手には、今朝、宿のおばさんがくれたパムパン(ホットドッグのようなもの)があります。
「すごーい」
「はやーい」
今日も馬車の中で遊ばせておこうかと思ったのですが、どうしても御者台に乗りたいというので、人の少ない早い時間であればいいかと思い、座らせています。
「ほら、はしゃがない。おばさんにもらったパムパン食べちゃいな」
「はーい」
「(モグモグ)」
私も食べたいところですが、もう少し先に休憩所があるので、そこまで我慢です。
「あ、むこうからばしゃだ」
パムパンを食べ終えたダニーが声をあげます。
「え、どこ、どこ?」
サリーは目を眇めていますが、見えないようです(可愛い顔が台無しです)。
獣人の私の目で、かなり先ではありますが馬車の影らしきものが見えます。私は目を身体強化して、再度確認しました。確かに大きな馬車が1台走ってきます。
「本当だ。凄いね、よくわかったね。ダニー」
「へへへ」
ダニーも褒められたのが嬉しいのでしょう。満面の笑みを浮かべます。
あちらの馬車まではまだ距離がありますが、女子供だけの私たちに手を出すような輩だったら大変なので、風魔法を解除してから馬車を停めて、双子たちを馬車の中に戻らせました。
再び馬車をゆっくりと動かします。
まだ向こうの馬車の姿は、だいぶ先ですが、あちら側にもこちらがわかるくらいの距離はあります。ここで横にそれるのも変に思われるかもしれないので、少しだけ街道の端によりながらも、そのまままっすぐ進みます。
――随分と急いでいるみたい。
私の馬車よりも一回りは大きそうな馬車がだんだん近づいてきたかと思ったら、凄い勢いで砂埃を巻き上げながら、通り過ぎていきました。馬車の壁には何やら紋章が描かれています。
――冒険者ギルド?
チラリとしか見えなかったので、見間違いかもしれません。
御者台には結界機能もついていたので埃をかぶることはありませんでしたが、あの馬車、あんなに急いでどこへいくのでしょう。
――まぁ、うちとは関係ないか。
「さぁ、ダーウィ、お願いね」
ブルルルル
私は風魔法を馬車全体にかけると、再び街道を進み始めました。
+ + + + + + + +
この時点では、『黄金の獅子』はダンジョンから抜け出せていません。
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