第31話 双子の秘密(2)

 そもそも、レインデルス王国と私が今いるワインハイツ王国はかなり離れているというのに、なぜ、この国の孤児院に双子が捨てられていたのでしょう。

 単純に捨てるだけであれば、国内でも問題なかったはずです。

 なぜなら、双子にはレインデルス王国の王族特有の色がないのです。

 王族特有の色とは、髪なら宵闇のような青黒い髪、瞳の色は黄金。どちらか一色がない者は、王家の血が入っていないと言われます。

 この二人にはその色がないのに、どういうことなのか、私にもわかりません。

 それよりも、問題は呪いです。10歳まで生きられないなんて、どういうことでしょうか。


 ――私が解呪できれば良かったのだけど。


 一応、私のステータスには光魔法と聖魔法、両方とも記載はされているものの、カッコ付きでまだ使えません。ただ、カッコ付きでも記載されているということは、その『能力の芽』はあるということです。


 ――でも、魔法書を読まないと取得できないのよね。


 火魔法や風魔法のような基本の属性魔法は、生まれつきできるモノがほとんどです。

 他の魔法は、魔法書を読んで取得するしかありません。そうして取得できる魔法も、『能力の芽』がなければ、いくら読んでも取得することは出来ませんが。


 ――その魔法書も、レインデルス王国の場合であれば、魔法学園に入ればなんとかなるけど。


 ここワインハイツ王国も同様なのでしょうか。

 しかし、今のロジータが魔法学園(この国でも同じ言い方なのかはわかりませんが)に入学できる可能性は無いに等しいでしょう。大概の魔法学園は貴族がほとんどで、平民の、それも魔力がないと思われている獣人では、試験ですら受けさせてもらえないと思われるからです。


 ――タイムリミットは5年。


 けっして長い時間ではありません。

 教会で司教や聖女に解呪のお願いをすることも方法の一つではあります。しかし、『看破』しなければわからない呪いなどが解けるようなレベルとなると、そう多くはないでしょう。

 教会が頼れないとなると、私自身がなんとかして光魔法と聖魔法を使えるようにならなければなりません。


 ――そのためには『フロリンダ』の隠れ家に行くしかないわね。


 今は『魔の大森林』に埋もれたエルフの王国、アークライ王国にある『フロリンダ』の隠れ家には、あらゆる魔法書を保存した図書室がありました。

 国が森林に浸食されたとはいえ、『フロリンダ』の結界が破られるとは思えません。

 どちらにしても、一度は隠れ家を確認しに行くつもりでした。問題はレインデルス王国を経由するのが最短距離だということです。

 私はすでに『フロリンダ』ではないので気にする必要はないでしょうけど、双子に関しては何があるか予想ができません。

 レインデルス王国を避けて、南か北の国を経由して遠回りするのが無難なのかもしれません。

 それ以前に、まずはこの国から出ないことには話になりませんが。



「ロジータ姉ちゃん、どうしたの?」

「どうしたの?」


 色々考え込んでしまっていたようで、駆け寄ってきた双子が不思議そうに見上げていました。


「ううん、なんでもないよ。さぁ、馬車の中を案内するね」

「うんっ!」

「やったー!」


 双子は何の疑問も持たずに私の説明を聞いている姿に、絶対になんとかしてみせる、と思うのでした。 

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