第30話 双子の秘密(1)

 馬車の中に乗り込むと、双子たちは走り回っています。それくらい中は広いのです。


「ねぇねぇ、ロジータねえちゃん、このドアはなに?」

「まどからはそとがみえるのね」

「うわ、このあみ、うまくのれないっ」

「はー、ゆかがもこもこ~」

「ほら、落ち着いて。ここの使い方を教えるから」

「はーい!」


 私の声に、目の前に駆け寄ってくる双子に笑みが零れます。

 今の双子は孤児院にいた時のようなボロな格好ではありません。昨日古着で買った服の上には、昨夜急いで作ったお揃いの緑色のポンチョを羽織っています。


 ――なんだって、こんな可愛い子を捨てたんだろう。


 私は昨夜双子が寝ている間に見た彼らのステータスのことを思い出します。

 これから一緒に行動するうえで、何ができるのか、どんなスキルがあるかを確認するために『鑑定』スキルで双子のステータスを確認したのです。

 最初に確認できた情報は、こちら。


 ▶名前 ダニー(*****・*****)

 ▶種族 人族

 ▶年齢 5歳


 ▷HP 15/15

 ▷MP  5/ 5


 ◆スキル

  身体強化


 ※状態異常:呪い


 ▶名前 サリー(*****・*****)

 ▶種族 人族

 ▶年齢 5歳


 ▷HP 10/10

 ▷MP 15/15


◆魔法

 生活魔法 水魔法  


 ※状態異常:呪い


 まさか双子が呪われているとは思いもしませんでした。

 しかし、呪われているとはいえ、特段病弱だったりも、身体のどこかに不具合があるわけでもなく、至って普通の子供なのです。

 ただ気になるのは、それぞれの名前の脇に、カッコで括られている部分が不明なことでした。もしかしたら、彼らにはちゃんとした名前があるのではないか、と思い、『鑑定』スキルの上位スキル、『看破』を使ってみました。

 すると、とんでもない情報が表示されました。


 ▶名前 ダニー(ダニエル・オラ・レインデルス)

 ▶種族 人族

 ▶年齢 5歳


 ▷HP 15/15

 ▷MP  5/ 5


 ◆スキル

  身体強化


 ※状態異常:呪い(10歳で死ぬ)


 ▶名前 サリー(サラスティア・オル・レインデルス)

 ▶種族 人族

 ▶年齢 5歳


 ▷HP 10/10

 ▷MP 15/15


◆魔法

 生活魔法 水魔法 (聖魔法)


 ※状態異常:呪い(10歳で死ぬ)


 二人とも姓にレインデルス王国と同じ名前がついていることは、明らかに、レインデルス王国の王族なのでしょう。まさか、こんなところで国の名前が出てくるとは思いもしませんでした。

 そのうえ、ミドルネームがついているということは、すでに王族として洗礼を受けていたはずなのです。なぜなら、レインデルス王国の貴族や王族は、生まれて1週間以内に教会で洗礼を受けることになっているからです。200年でその風習が変わっていなければ、ですが。


 ――厄介な。


 双子が、『フロリンダ』との因縁のあるレインデルス王国の関係者とは思いもしませんでしたが、それ以上に呪いのほうが問題です。


 ――子供にかける呪いじゃない。


 王族であれば、それこそお抱えの魔術師や、教会の聖女を派遣させるなどできたでしょうに、その彼らでも解けない呪いだったのでしょうか。

 そもそも、どういったいきさつで呪いなどがかけられたのか、まったく情報がないので判断がつきません

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