第18話 ドロップ品を買い取ってもらおう

 とにかく、ギルド長やアマンダさんに私のことがバレる前に、ポーターの完了報告をしてしまうことにしました。

 同行していた『黄金の獅子』のパーティについては、シルビアさんの副ギルド長権限で調べてもらったのですが、現時点でも転移陣の間で水晶を使っていないようで、戻ってきていません。

 14階には転移陣はないそうなので、転移陣のあるフロアまで戻らないとダメだそうで、3日で14階まで行ける実力があるのですから戻るのは楽なはず……と思っていたのですが、彼らの食料や水は私が預かっていました。

 でも、彼らのことですから、魔物のドロップでなんとかしのげるんじゃないかな、と思います。


「あの、一応、預かってた荷物とかあるんですけど、どうしたらいいですか」


 食料の他にも、攻略中に拾った魔石(極小・小)と刃こぼれした古びた剣や、魔物の毛皮や牙、爪などといった物があるのです。


「そうねぇ……」


 シルビアさんは、少しだけ考えてから二コリと笑いました。


「食料は、そのままロジータが持っていなさいよ。それとドロップ品は買取するわ」

「え、でも」

「だって、ロジータのバッグは、『黄金の獅子』のメンバーに奪われたんでしょ?」

「あっ!」

「例え、貴方が戻ってきていたとしても、バッグはないんだから文句の言われようがないと思うの」


 確かに、彼らの手元から消えたからといって、私が持っているとは思わないでしょう。そもそも、生きているとも考えてないかもしれません。


「いや、ロジータ、お前、ちゃんとダンジョンの転移陣の間を通ってきたんだろ?」

「はい」

「それって、到達フロアの件で騒ぎにならなかったのか?」

「あ、ああ……言われてみれば、水晶の誤作動を疑われて、皆、わちゃわちゃしていました」

「猫獣人の子供で49階から戻ってきたなんて、もしかしたらロジータが戻ってきてるんじゃないかって、あの馬鹿どもでも考えそうだもの」


 ――馬鹿どもって言っちゃうんだ。


 確かに、人の物を奪おうとする連中ですから、『馬鹿ども』と言われても仕方がありません。

 そして、私の存在に気付いたら……最悪、消される可能性もあります。今の私だったら、消されることはないでしょうけど。

 今まで以上に、早くこの街から出ないといけない、ということだけは痛感しました。


「とにかく、買取できる物は買い取るわ。ここに出してごらん」


 テーブルに出てくる物をチェックしていくシルビアさん。私の目から見ても、そう大した金額にはなりそうもありません。でも、まったくないよりもマシです。


「……そうねぇ。全部で銀貨43枚に、銅貨7枚、4370ギルってとこかしら」


 思ってたよりも少ないです。でも、今の相場としては、こんなものなのかもしれません。

 じゃらじゃらとお金が積まれていきます。

 さて、このお金で何がどれだけ買えるのでしょうか。


「それと、ポーターとしての賃金と、これは私からの気持ち」


 そう言って追加されたのは、銀貨が10枚に金貨が1枚。


「えっ!?」

「……太っ腹だな」


 驚いたのは私だけではありません。隣に座っているホーマックさんも、思わず声が出たようです。


「ギルドの迷惑料も込みよ。むしろ少ないくらいだと思うわ」


 今の私には、お金はあって困る物ではありません。


「……ありがたく頂きます」 

 

 素直にお金を受け取り、マジックバッグの中にしまいました。


          + + + + + + + +


ざっくりお金の価値をまとめました。


白金貨(1000万円) 1枚100万ギル:金貨100枚

金貨 (10万円)   1枚1万ギル  :銀貨100枚

銀貨 (1000円)  1枚100ギル :銅貨10枚

銅貨 (100円)   1枚10ギル  :鉄貨10枚

鉄貨 (10円)    1枚1ギル 


例)

300ギル(銀貨3枚)=3000円   

銀貨43枚に、銅貨7枚=4300ギルと70ギル 


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