第16話 ロジータ、実年齢に驚かれる
なんとシルビアさんは、私の亡くなった両親のことを知っていました。
昔、シルビアさんが冒険者時代に何度か一緒に仕事をしたことがあったそうです。
「ミリアのマジックバッグには助けられたのは、1回や2回じゃないわ」
懐かしそうに目を細めながら、シルビアさんが言います。
特に長期のダンジョンアタックの際、大量の食料や野営道具一式を運ぶのに、母のマジックバッグが重宝したのもさることながら、母自身も魔法も上手かったそうです。
一方の猫獣人の父も、剣の腕前は相当なものだったそうです。
私の記憶にあるのは、穏やかな表情の両親だけなので、少しだけ不思議な気がします。
「ロジータがミリアの娘だっていうのなら、49階まで落ちても無事だっていうのも、なんか納得してしまうかも」
私が無事に済んだのは、もしかしたらエルフだった母から何かしらの加護か魔道具でも持たされてたのかもしれない、と言われました。
実際には、そんな魔道具なんて持っていなかったし、その母からの加護なんていうのもついていません。でも、こうして前世の記憶が戻ったことが、その加護の結果だったらいいなと、少しだけ思ってしまいました。
「そもそも、そんな深いところから無事に戻って来れたことのほうが奇跡でしょ」
「だよな? 魔物には会わなかったのか? そんな深い階層の魔物なんて、想像もしたくはないが」
「は、はい。運がよかったんだと思います」
私は『フロリンダ』時代の魔道具諸々で色々ズルをしている気がしているので、アハハ、と笑って誤魔化すしかありません。
シルビアさんは、大きなため息をつきながら、私の顔を残念そうに見つめます。
「彼らが亡くなったって聞いたのは、私がこのギルドの副ギルド長に決まった1年前かな。あの二人が亡くなるなんて想像もしてなかったけれど……まさか、こんな大きな子供がいたなんて知らなかったわ」
「シルビア……ロジータ、いつくだと思ってるんだ」
しみじみと言うシルビアさんに、ホーマックさんが聞きました。
「えっ、14、5歳と違うの!? シジャークダンジョンに入るくらいだもの、それくらいじゃなきゃ……」
「はぁ……ロジータはまだ10歳だ。それも、ついこの前、冒険者登録したばっかりの、ど新人。ちゃんと見ろよ」
呆れたようなホーマックさんの言葉に、慌ててタブレットで何やら確認しています。
私は私で、そんなに年上に見られてたのかと思って、ちょっとだけ、ショックです。
「……本当だわ。え、なんで? なんで新人の子の、それも一番最初の仕事なのに、ダンジョンのポーターなんかやってるのよっ!」
「だからぁ、それ、俺も変だと思ったからここに来たんじゃねぇか」
すっかり、言葉が元に戻ってしまったホーマックさん。
「それも指名依頼だってんだから、おかしいだろ」
「はぁ? おかしいなんてもんじゃないわ。いきなり初依頼に指名なんてありえないわ。誰よ、そんな馬鹿な依頼を受領した奴は……って、もしかしてさっきホーマックが聞いてきた……」
「正解。アマンダだよ」
「あんの、尻軽馬鹿女がっ!」
シルビアさんが、『般若』の顔になって完全にキレました。
こ、怖すぎですっ!
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