第6話 荷物整理します

 現状に打ちひしがれている場合ではないのです。

 一応、インベントリの中には、多くの食料が入っているはずです。インベントリは時間経過はしませんから、どんなに時間が経っていようとも、それが400年であろうが関係ありません。

 しかし、母から譲り受けたマジックバッグはそうではありません。時間経過を遅くする機能はありますが、生ものなどは放っておけば傷んでしまうのです。


 とりあえず、マジックバッグから食料関係を床の上に出していきましょう。

 元々、あのパーティ(5人組)から預かっていた食料や水は1週間分。固パンや干し肉、木の実類など。その他に、攻略中に手に入れた魔物の肉がいくつかと、ダンジョン内に生えていた果樹の実。それに、薬草も見つけては採っていました。それらを全てインベントリの中へと移動させます。

 他の物は、攻略中に拾った魔石(極小・小)と刃こぼれした古びた剣や、魔物の毛皮や牙、爪など。そして、私個人の財産……といっても、小銭がいくらかと、解体用のナイフ、木製の食器類に、大判のハンカチと、父さんからもらったブローチ。ブローチはちょっと大ぶりで派手なデザインなので、クエスト中はしまっていました。

 失くしたくないブローチだけインベントリへ入れると、残りはそのままマジックバッグに保管です。


「さて、インベントリの方は……調べるのもいやになるくらい入ってるよね」


 何せ、『フロリンダ・デジール』は、大陸中のダンジョンを攻略したのです。

 多くはソロで攻略しましたが、大規模ダンジョンでは他のパーティと共闘したものでした。最後のあのダンジョンもその一つでしたが……。

 いえいえ、もう過去のことです。それよりも今です。

 

 インベントリの中には、最後に攻略していたダンジョンでのドロップ品で溢れています。特に最後のボス部屋までの下層部のドロップ品は、今、世に出したらきっとヤバいヤツです。それくらい、今の私でもわかります。

 さて、そんなダンジョン攻略しまくった『フロリンダ・デジール』ではありましたが、今入っているこのダンジョンは初めてです。恐らく、死んでから400年の間に出来た新しいダンジョンなのでしょう。 


「さてと、このダンジョンから、抜け出さないとダメなんだけど」


 正直、今の私の状況では、単独でこのダンジョンから抜け出すのは厳しいと思われます。

 そもそも、ポーターの私。戦闘向きな格好じゃありません。


 ▶現在の装備品

 

 ▷キャスケット

 ▷少し生地の厚めなシャツ

 ▷横幅太目のズボン

 ▷ハーフコート

 ▷使い古されたぼこぼこの革靴(穴あり)


 どれも中古で買ったり、父さんのお古(ハーフコート)だったりと、一般的な平民の服です。何一つ、加護も付与もついてません。こんな格好じゃ、一角ウサギに突撃されただけでイチコロです。


「なんかあったかなぁ」


 インベントリのリストを遡っていきます。


 ――あー、『パソコン』みたいに『フォルダ』に分かれてたら便利なのに!


「うわ」


 画面が一瞬光ったかと思ったら。


「あら、やだ」


 なぜかちゃんと種類ごとに分類されて表示されていました。

 無意識に思い浮かんだ言葉でしたが、なるほど、これが『フォルダ』ということでしょう。


 ▶装備

  ◆防具

   ▷頭

   ▷身体

   ▷腕  

   ▷足

   ▷アクセサリー

   ▷その他

  ◆武器

   ▷剣

   ▷鈍器

   ▷槍

   ▷弓

   ▷暗器

   ▷杖

   ▷その他


 ――うん。いっぱいある。


 このフォルダごとに、きっと色々入っているんだろう、と思ったら、遠い目になってしまいました。

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