第5話 まずは現状把握です(2)
私の両親はすでに亡くなっています。
約2年前、私を置いて、さる貴族のダンジョンアタックに同行した際に、亡くなったそうです。当然ダンジョンなので、遺体などは残っておらず、遺品らしい物もありませんでしたが、辛うじて母さんのマジックバッグが私の手元に現れました。その時点で、母さんが亡くなったのは確定だったのでしょう。
そんな私の記憶の中の父さんは、確かに身体の大きな猫獣人でした。柄は確か、『ハチワレ』というものだった気がします。自分以外の猫獣人に会ったことがないので比較はできないですが、もしかして猫獣人って、もっと身体が小さいのでしょうか。
一方の母さんにしても、そういえば、耳が尖ってたかも? 今にして思えば、ですが。普通に人族だと思ってました。
ちなみに、獣人の場合、種族が違っても子供が産まれるのは番同士の場合だそうです。
ということは、父さんと母さんは番同士だったわけで、ちょっとだけ、本当に、ちょっとだけ憧れてしまいます。だって、番同士は裏切らないのですから。ただ、問題なのは、人族の場合。どうも、人族は浮気性らしく、番になっても裏切る者もいるのだとか。母さんがエルフでよかったです。
ふと思ったのは、私の種族が違うのは『先祖返り』かもしれない、ということ。
実際、見かけは父さんのような『ハチワレ』ではなく、黒一色。目の色は『オッドアイ』というヤツで右目が黄色、左目が緑。年齢の割に猫獣人にしては大柄なのもそのせいかもしれません。こればかりは、予想でしかありませんけれど。
さて、次に気になることといえば、『MP(マジックポイント)』です。
本来、獣人は魔法は使えないと言われています。
ただ、身体強化は戦闘系の獣人にはよくあるスキルで、これがMPを利用するとは聞いたことがあります。
私のスキルにもありますから、そのためかな、とも思ったのですが、風魔法の『フライ』が使えてしまったのは、獣人としては不思議なことなのです。
しかし、このステータスを見ると、魔法が使えるようになってます。
というか、『HP(ヒットポイント)』と『MP』の値の後ろのカッコ付きの値はなんなんでしょう。
そもそも、値の存在自体、一般的ではない上に、9999とか∞とか。
カッコ付きということは、成長とともに増えていくのでしょうか。
それにスキルもおかしいです。
ふと、ギルドで初めて冒険者登録をした時のことを思い出します。
受付のお姉さんが登録情報の確認のために、私のスキルの一覧を見せてくれたのですが、その時との情報量の違いにびっくりです。
あの時は、『体術 小太刀術 身体強化』の3つしかなかったのです。当然、『生活魔法』などもありません。それが、獣人としては普通のことなのです。
なのに、新たに追加されている魔法やスキルの多いこと。
◆魔法
生活魔法 地魔法 水魔法 火魔法 風魔法
(光魔法)(闇魔法)(聖魔法)(精霊魔法)(召喚魔法)
◆スキル
料理 裁縫
宮廷マナー
農耕 解体 採取 採掘
鑑定 看破 隠蔽 探知
夜目 (精霊眼)
精神攻撃耐性 状態異常耐性
インベントリ<無限収納・時間経過なし>
なんとなくですが、これって複数の前世を思い出した結果じゃないか、と予想します。
『料理』や『裁縫』など、フロリンダ時代、最も不得意なモノでしたし、特に『宮廷マナー』なんて、フロリンダの時ですら、王宮になど数回呼ばれたくらいで、スキルになるとは思えません(今世でも、使い道はなさそうですけど)。
括弧付きのものは、まだ使えないもの、なのでしょうか。
今すぐ必要なものではなさそうなので、後で確認することにしましょう。なかなかに、厄介そうです。
問題はギルドの魔道具です。
HPやMPの情報はありませんでしたが、あの魔道具にどれほどの情報収集能力があるのかわかりません。次のカードの更新の時、気を付けないといけませんね。
だって、子供の猫獣人には、ありえない状況なんですもの。
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