第7話 懐かしの味と、完全防備

 いつの間にか寝落ちしていたロジータ、10歳です。

 静かなのと、ほどよい温度管理のおかげか、ベッドの脇の床で寝てました。ダンジョンの中のはずなんですが、この床の心地よさからは、下が地面だなんて思えません。

 さて、時間がどれくらい経ったのか、今の私にはわかりませんが、お腹が空いたのは確かです。

 インベントリの中の食料を探してみると、何やら懐かしい物を見つけました。

 フロリンダの時は、料理が壊滅的だったものですから、当時の馴染みの宿屋のおかみさんに、いつも大量のスープと、お気に入りのパンを作ってもらっていたのです。


「やだ、嬉しすぎる」


 ドンっと取り出した寸胴は、私の腰くらい高さのあるもので、当然、私の力では持ち上げられないくらいの重さです。蓋を開けてみれば、懐かしい匂いに、ほろりと涙が零れそうになります。


「いけない、いけない。さて、食器を出して、っと」


 使い慣れた木製の食器をマジックバッグから出します。

 これは両親が生きていた頃から使ってる物で、孤児院に入ることになってからも持ち続けていました。


「いやぁ、やっぱりママさんのは美味しいなぁ」


 もう400年も前の人なのに、私の思い出した記憶は、つい昨日のような感覚です。これに慣れるのは、しばらくキツイかもしれません。

 食事を終えて汚れた食器類を『クリーン』で綺麗にすると、マジックバッグへと戻します。寸胴鍋は当然、インベントリの方へ。

 そして、再び、装備のことを考えます。基本、残っている防具や武器は、大人が使うようなサイズばかり。たとえ、見かけは10歳には見えないとはいえ、大人の獣人にしては大柄な方ではないので、使えそうな物は限られてきます。


「うん、だったら、これで行くしかないか」


 私は、防具一式とアクセサリー、使う武器を決めました。


 ▷頭  キャスケット

     疾風のブローチ(速さアップ)

 ▷身体 少し生地の厚めなシャツ

     グリーンドラゴンの革の胸当て(防御力アップ+サイズ自動調節)

     横幅太目のズボン

     アイアンスネークの革のベルト(回避度アップ)

     ハーフコート(父さんのお古。生地はレッドワイバーン)

 ▷手  オークキングの革の籠手✕2(腕力アップ+サイズ自動調節)

 ▷足  レッドフォーンディアの革靴(速さアップ+サイズ自動調節)

     風の魔石付きのアンクレット✕2(速さアップ)


 ▷アクセサリー

     虹彩の魔石の指輪(魔力保管・満タン)

     黒龍の爪のネックレス(魔物除け)


 ▷武器 アイスドラゴンの刃の小刀✕2(氷結魔法付与)


 たぶん、鑑定できる人が見たら、絶句することうけあい。

 鑑定ができるようになるまで気付かなかったけれど、父さんのお古のハーフコートが、思った以上にいい生地を使ってたことには驚きました。

 もっといい物もありましたが、今の私の身体のサイズに合わせられるのは、これくらいしかありません。とりあえず、できるだけ目立たないように、コートの下とかに隠しながら行動するしかないでしょう。

 まぁ、今、どこにいるかはわかりませんが、確実に下層部分だとは思います。

 今、攻略している最前線は34、5階だったはずです。下手をすると、先行組と遭遇する可能性がありますが、一々説明が面倒なので、スキルの『隠蔽』を使いながら、進むのが一番だと思います。

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