第31話 明かされる真実


「おーい着いたよ~」


「……んん」


 ルリはハナに起こされた。

 どうやら深い眠りに入っていたようで、気づけば基地に着いていた。


「これは?」


 ルリは体が動きにくくなってることに違和感を感じた。


「手当てが雑だったから、手直しさせてもらったよ」


 ハナがそう答えた。


 俺は起きなかったのか。

 そんなに疲れてるのか俺は。


「はぁ……」


「余程疲れてたんだね。全然起きなかったよ」


「そうか……」


 そのとき、ハッとしたように、ルリはハナの顔を見た。


「え? どうしたの?」


「なぁ――」




◇ ◇ ◇




「ねぇ、小隊長たち何してるの?」


「なんか、隊長に話があるらしいよ」


「周りもスクラープカスタムしてる人ばっかじゃん」


 女隊員たちが口々にそう言う。

 講堂には、このG17隊でも屈指の強さの隊員が集まっていた。

 第1小隊からはグラルバ。

 第2小隊からは、小隊長のエイリーンと、その部下の女性隊員の2人。

 第3小隊からは、小隊長のナグールと、その部下の男隊員の2人。

 そして第4小隊からは、ルリとラギルスの2人が参加していた。


「あら? レオはどうしたの?」


 エイリーンがキョロキョロしてそう言う。


「重傷で寝てる」


 グラルバが淡々と答えた。


「ところで、俺たちを集めて何をする気だ?」


 ナグールは腕を組んでそう言った。


「そうそう。片付けはみんなに任せてきたけど、報告会までには終わらせてよね。サボってるって思われちゃう」


「気にするな。元々隊長に用があるからな」


 エイリーンは、ルリの回答にハテナを浮かべた。


「ルリもかなりの重傷だ。それに戦死者も出ているのだろう? そんなに急を要する用事なのか?」


「ああ。俺たちは今日の任務で――」


 ナグールが、なぜ集められたのか聞いてきたので、ルリは今回の任務で起こった全容を話した。


「ふーん。なかなかヤバいね」


 エイリーンは、信じてないのか冷静だ。


「にわかには信じがたいが……」


 ナグールもそう言った。


「でも本当のことなんです!」


 ラギルスは声を張った。


「信じれなかもしれないなら、今から証明してやる」


 ルリはそう言うと、隊長の部屋へと歩き始めた。


「あっ、待って下さいよ!」


 ラギルスは置いてかれまいと、ルリと歩き出した。


「え? まさか確かめに行くの?」


 エイリーンはルリの行動に焦ってるように見えた。

 それもそうだ。

 まだ確証もないことに、隊長を巻き込もうとするからだ。


「まあそれがこの集まりの意味でもあるからな」


 グラルバもルリの後ろを歩き出した。


「え〜。まあルリが言うなら、行ってみるだけ行ってみるか」


 エイリーンは渋々、部下を連れて歩き出した。


「……俺らも行くぞ」


 ナグールも、部下を連れて歩き出した。




◇ ◇ ◇




「あれ......ルリとラギルスは?」


 物資の運び出しをしているラトは、2人がいないことに気づいた。


「大事な用があるって言ってた」


 ミーナが物資を持ちながら答える。

 体格に合ってない物資を運んでいるのかヨロヨロしている。


「なんかアイツさー。最近冷たくない? いつもよりさっ」


 アリナが、ミーナが持っている物資を半分持った。


「冷たい?」


 ミーナはアリナのお陰で余裕ができた。


「今回の任務だって、アラン死んじゃったんだよ? 遺体そっちのけで用事って」


「でも真っ先に助けに行ってたの、私見たよ」


「うん」


 ラトとミーナは、ルリは冷たくないと否定した。


「まあ昨日のうちに整理できた私たちはマシだけど、ちょっと危険な子も何人かいるんだよね……」


 アリナは難しそうな顔をした。


「まだ私は完全には立ち直ってないけど……」


「危険……」


「まあ、ルリがあの態度取ってるのを見たら、何かしでかすかもしれないし」


「じゃあその子たちのこと、私たちが気にかけないとね」


 ラトは、少し口角を上げてそう言った。


「任せて」


 ミーナは自信満々のようだ。


「「いやミーナは無理でしょ」」


「え」




◇ ◇ ◇




 ルリを先頭に、一行は隊長の部屋までやってきた。


「……」


 コンコンとノックし、部屋に隊長がいるか確認する。


「……誰だ? 報告会に行くには早いだろう」


 どうやら、中で書類整理をしているようだ。


「第4小隊小隊長ルリ。隊長に話したいことがあってきました」


「ルリ? もう物資は下ろしたのか?」


「スクラープだけ片付けました。それよりも重要な話があります」


「……いいだろう。入ってこい」


 隊長はすんなりと入室を許可した。


「ん? なんだお前たちまで……」


 ぞろぞろと部屋に入ってくる隊員たちを見て、隊長は目を見開く。

 隊長は、ちょうど書類整理を終わらせたところだった。


「今回の任務で不可解なことがありまして」


 ルリが1歩前に出た。


「なんだ? 言ってみろ」


「実は今回の任務、第1小隊から2人。第4小隊から1人。計3人死人が出ました」


「……そうか」


 隊長は目線を下に向けた。


「討伐目標であるフォーン以外の、S級と思われるモンスターに遭遇したからです」


「……なんだと」

 

 隊長の顔が険しくなった。


「そのモンスターが、二足歩行型。つまり人型のモンスターだったんですよ」


「……!?」


 隊長はガタっと音を立て、椅子から立ち上がった。


「しかもそのモンスター。戦闘して分かったのですが、スクラープを――」


「ちょっと待て!」


 ルリの言葉を遮ったのは、もちろん隊長だ。


「……やはり何か隠してるのでは?」


 ルリの後ろからグラルバが、核心を突く質問をした。


「くっ……」


 隊長は、歯を食いしばった。


「さあ、話して下さい。スクラープについて」


 ルリがさらに一歩前に出た。


「…………はぁ」


 観念したのか、隊長は椅子に座りなおした。


「今から伝えることは、他言無用だ」


 隊長は肘をつき、表情を変えた。


「スクラープのこと。スタンピードのこと……覚悟はできているのか?」


 再度警告をしてきた。


「……」


 ルリは無言で頷いた。


「まずはそうだな、俺のことから話そう」


「隊長のこと……?」


 ラギルスはそう言った。


「私、G17隊隊長ケイリスは、D8基地で起きたスタンピードの生き残りだ」

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