第24話 死神戦(3)


 死神は驚いていた。

 急に現れたと思いきや、様々な読み合いを瞬時に制し、たったの2振りで傷まで負わされたのだから。

 強さはそこまでかもだが、戦い方が上手い。

 何よりこの男の深さが分からない。


「ウオオオオッ!!!」


 この男は危険だ。

 死神は本能に従い、全力で倒すことにした。


「フンッ!」


 大鎌と戦斧の刃同士が激突した。

 周囲に、けたたましい金属音が鳴り響く。


「ッ……!!」


 ここまで力が強くなるのか!


「ぐっ……」


 ルリの力及ばず、体ごと弾き飛ばされてしまった。


「クソッ……」


 ルリは倒れることなく、着地を決めた。

 そして次の攻撃を警戒する。


 真っ向勝負は得策じゃないな。

 考えろ。

 頭を回し続ければ勝てる。

 今1番危険なケースは何だ。


「ガアアッ!!」


 死神は、考える時間を与えてくれないようだ。

 あっという間に距離を詰められた。

 ルリはなんとか防御の姿勢を取る。


「なっ!?」


 しかし目の前で死神の姿が消えてしまった。


 瞬間移動ワープしたということは――。


「裏だろ!」


 ルリはターボグライドを器用に扱い、無駄なく振り返る。


「ガアッ!」


 ルリの読み通り、背後に瞬間移動していた死神は、大鎌を振ってきた。


 ガキンと金属音を響かせ、死神の攻撃を戦斧で受け止めた。


 おかしい。

 なぜ攻撃の指導がこんなに遅い。


 ルリは、瞬間移動後の死神の攻撃が遅く、余裕をもって防御することができたことに違和感を感じた。


「アアッ!」


 死神は刃を押し付けあっていたが、先ほど同様ルリを弾き飛ばした。


「くっ……そういうことか」


 ルリは瞬間移動能力をある程度理解したようだ。


 あの瞬間移動能力は、きっと移動する距離に比例して体力を消耗する。

 アイツの様子を見たら分かる。

 そして直線状にしか移動できない。

 これは確実なようだ。

 しかも瞬間移動後の攻撃の遅さ。

 アイツそのまま体が移動するだけで、体の向きもそのままなんじゃないか?

 でなければ、何回傷を負わされていたか。

 唯一の難点は、呼び動作がないことだな。


「ウオオオッ!」


 死神は、つかさず攻撃してくる。


 誘導すれば行けるか?

 だがこの相手だと、相当リスクになるが。


「ガアッ!」


「チッ!」


 間一髪のところで、死神の攻撃を避ける。

 そのまま、死神との距離を取った。


 考えている暇はない。

 やるしかない。


「グオオオオオッ!!」


 死神も早く終わらせたいのか、一層加速して迫ってきた。


 今だ。


「フンッ!」


「!?」


 死神が驚くのは無理はない。

 なんとルリは、今まで使っていた戦斧を死神に投げつけたのだ。


 この戦斧を避ければ、ルリの武器はなくなる。

 それを確信した死神はすぐさま、ルリの背後に瞬間移動をした。


「ガアッ!」


 そして振り向き、武器なしになったルリを真っ二つに――。


「?」


 いない。

 瞬間移動した位置は確かにルリの背後のはず。


 死神が戸惑っていると、視界の両端から手が伸びてくるのが見えた。

 と次の瞬間、誰かに首を絞められた。


「ガッ……!」


 もちろん絞めたのはルリだ。


「スクラープを着ているということは、体の構造は俺たちと同じだろっ」


 ルリは、さらに絞める力を強くする。

 死神は苦しみながらも、大鎌を上手く使い、背中に張り付いているルリを刺そうとする。


「させるかっ」


 ルリは両足を上げ、上腕の部分を押さえる。

 ペラッペラの装甲のおかげでもある。


「グッ……ウゥ……」


 死神はかなり苦しんでいる。


 ここで落とす。

 瞬間移動は多分俺も一緒に移動される。

 これだけ密着しているんだ。


「グググッ……」


 首の部分と言え流石に硬いな。

 死神の首からはメキメキと音を鳴る。


「早く……落ちろ……」


「グッ、グガガアアアアッ!」


 死神は最後の力を振り絞り、苦し紛れの咆哮を上げた。

 足て押さえていた上腕も、少しずつ開かれていく。


「させるか……」


 ルリも最後の力を振り絞り、絞め上げる力を強くする。


「グガアアッ、ガ、ガァァ……」


 次第に死神の力が抜けていくのを感じた。


 勝った。


 ルリは勝利を確信したとき、奇妙なことが起こった――。


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