第23話 死神戦(2)
「アラン……」
死神の足元にある、斬り刻まれたスクラープと血の海を見つめてそう言った。
ルリから殺気が収まった。
「…………ご苦労だった」
何かを思い出すように、労いの言葉をかける。
直後、再び殺気を醸し出した。
「ッ……ウオオオオッ!」
死神は殺気に感づき、威嚇の雄叫びを上げる。
「最初からトばすぞ。スクラープ出力上昇。レベル6」
ルリのスクラープを、白い光が包み込んだ。
直後、ルリの姿は消えた。
「ウッ!?」
死神は急接近されることを警戒したが、ルリの取った行動は、周りの木々の間を全速力で駆け抜けることだった。
まずはアイツの能力を確認しないとな。
木々の間からチラチラとルリの姿は見えるが、死神は動けないでいた。
しかし、ルリはただ周りを走るだけ。
あらゆる方向から風を切る音が聞こえ、死神はキョロキョロと目を配り、ルリが茂みから出てくるのを待つ。
だが、一向に出てこない。
ただ走っているだけ。
いくら強いモンスターや人間であれ、集中力は長くは続かない。
「ウオオオオッ!」
痺れを切らした死神は、ある茂みに向かって、大鎌を振り上げ近づいた。
そこの茂みには、ちょうどルリの姿があった。
周囲の音から、なんとなくルリが来る場所を予想していたのだ。
そして見事にそれが命中した。
「……」
しかしルリは動じることなく、走るのをやめない。
ちょうどルリの姿は木の陰に隠れた。
「ガアッ!」
死神は、ルリが木の陰から出てくるのを読み、大鎌を振り下ろした。
ズドンという鈍い音が響き、砂煙が立ち込めた。
しかし、その音の中にスクラープとぶつかった金属音はなかった。
「?」
死神は、すぐさま木を見た。
その木の陰から、キラキラと光るものがはみ出しているのが目に入った。
ルリは急停止し、木の陰に身を潜めていた。
「ウガアッ!」
そう考えた死神は、左から右に大鎌を振り、その木を横に真っ二つにした。
だがやはり斬った感触がない。
木の陰には何者もいなかった。
キラキラと光るものは、先ほど殺した砲兵が持っていた銃だった。
「ヌッ……!」
してやられたと少し後悔した死神は、バッと振り返って背後を警戒する。
斬った木は、ゆっくりと死神の横に倒れていく。
「こっちだ」
木が倒れている方向からルリの声が聞こえた。
死神は少し首を回して声のした方を見ると、そこには倒れてきた木を踏み台に、戦斧を構えているルリがいた。
さあどうする。
ルリは死神と目が合った瞬間、戦斧を振り下ろした。
刃が当たる寸前のところで、死神の姿が消えた。
「なっ……!?」
振り下ろした戦斧は、そのまま空を切ってしまう。
ルリは周囲を見渡し、死神の姿を探す。
「これが
死神は少し離れた場所で、こちらに背を向け、肩で息をしていた。
発動条件があると踏んで不意を突いたが、何の呼び動作もなく発動するとは。
だがアイツの位置を見るに、直線での移動しかできないようだな。
攻撃を避けられたルリだが、死神の瞬間移動能力をすぐさま分析していく。
「ウゥ……」
死神は呻き声をあげながら、ルリの方を振り返る。
今の攻撃に、相当冷や汗をかいたのだろう。
「ア!?」
しかし振り返って捉えた視界には、先ほど斬り倒した木がコチラに飛んでくるのが見えた。
「ガアッ!」
死神は反射的に、その倒木をさらに縦に真っ二つにした。
木が真っ二つになって見えた奥の景色には、ルリの姿はなかった。
死神が唖然としていると、2つに斬った倒木の片方の丸太の陰に、黒い影が見えた。
「ッ……!」
丸太の陰から攻撃を仕掛けようとするルリにいち早く気づくことができたが、時すでに遅し。
ルリは戦斧を振りながら、死神に飛び込んだ。
死神に対応させる間もなく、脇腹目掛けて戦斧を振り切った。
「……チッ」
しかし、またもや瞬間移動により攻撃を躱されてしまった。
ルリは、姿を見失わないように、すぐに周囲に目をやった。
「ハァ、ハァ……」
死神は、今度はルリの背後に移動していた。
反撃する気はなく、息を切らしながら、脇腹を手で押さえていた。
死神の脇腹からは、紫色の血が流れていた。
「……傷は浅いが当たってたか」
息切れをしているあたり、瞬間移動は体力を消耗するようだ。
しかも攻撃するときに、腹に傷跡があるのが見えた。
レオが与えた傷だろう。
それもあってか、かなり消耗しているように見える。
「もう一押しか」
ルリは勝利が目前だと察し、次の攻撃を仕掛けようとする。
「グッ……ウゴオオオオオッ!!!」
死神は何かのスイッチが入ったかのように、雄叫びを上げた。
そしてルリと同じように、白い光が体を包んだ。
ルリは思わず足を止めた。
「出力上昇……」
レオが言っていたことは本当のようだな。
あの様子だとレベル6だと思うが、体への負担はさらに大きくなったはずだ。
戦う時間は、一気に縮小されるだろう。
俺もかなり出力上昇を保ってるから正直助かる。
「ウオオオオッ!!!」
「……行くぞ」
2人は同時に駆け出し、大鎌と戦斧を振りかぶった。
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