第16話 死神


 ルリは、これから共に任務を行う自分の部隊の隊員を集めていた。

 お互いの顔を知るために、首から上はスクラープの外に出している。


「それで、このメンバーになったと」


「ああ」


 第4小隊からは、ラト、ミーナを含めた、近接部隊メレー2名、砲兵ガンナー2名、狙撃手スナイパー1名がルリの部隊に参加。


「一応この部隊内の第1小隊代表、パトリッドだ。よろしく頼むよ」


 金髪の明るそうな男が話しかけてきた。

 ルリの目の前には、左手が差し出されていた。


「どうした? さっきの戦い見てたけど、左利きじゃないのか?」


「本当にレオアイツの部下か?」


「ん? どういう意味だ?」


「いや、気にしなくていい」


「?」


 他の第4小隊の隊員も、少し動揺していた。


「それで、第1小隊の隊員の情報が欲しいんだが」


 ルリは話を切り替えた。


「ああ。第1小隊からは、近接部隊が2名、俺を含めた砲兵が3名、狙撃手が1名だ」


 合わせて11名か。


「分かった。次に陣形を決めるか」




◇ ◇ ◇




「よし、全員揃ったかな? 早速行こうか! 僕らはこちらの方角だよ」


 レオの部隊も全員揃ったらしく、早速出発しようとする。


「ちょっと待て」


 今回レオの部隊に所属することになったスーリンがレオを呼び止める。


「どうしたんだい?」


「お互いにどの役割を担うかの確認をするべきだ」


 そう、レオは隊員を集めた後、挨拶もなしに討伐に行こうとしたのである。


「そんなに必要かな? まあ一応言っとくか」


「ね、ねぇ、本当に大丈夫かな?」


 同じく部隊に配属されたダルカンが、スーリンに耳打ちする。


「やってみないと分からない。あと私の後ろに隠れるな」


 第4小隊から配属された隊員たちは、レオのことを不安がっている。

 ちなみに第4小隊からは、近接部隊が2人、砲兵が2人の4人だけである。


「えーっと、第1小隊からは、僕含めた近接部隊が3人、砲兵が5人かな。えっ? 砲兵が4人で1人は狙撃手?」


 本当に大丈夫だろうか。


 第1小隊の砲兵の1人から訂正されているレオを見て、さらに不安は大きくなった。


「まあそういうことだから。よろしくね」


 と言ったと思うと、ターボグライドを稼働させた。

 軽く作戦会議をすると思っていた隊員たちは、急いでスクラープを完全装備した。


「ではレオ部隊、任務開始さ」


 そう言うと、レオが走り出した。

 隊員たちも置いてかれないように、ターボグライドを稼働させ、走り出した。


「ルリが言ってたのはこういうことか」


 自分がしっかりしなければと、スーリンは思った。




◇ ◇ ◇




「えーっと、今日この部隊を率いることになりました! 第4小隊近接部隊、ラギルスと言います! よろしくお願いします! 第4小隊から近接部隊2名、砲兵3名、狙撃手1名が参加します!」


「やった。ラギルスと同じ隊だ」


「フッ、俺もいるぞ」


「アンタは数合わせでしょ」


「あ?」


 どうして犬猿の仲であるアリナとジャズが同じ部隊なのだろうかと、ラギルスは心底思った。


「ふぅ……。それでは、第1小隊の皆さんのことを聞きたいのですが」


 ラギルスは、第1小隊からの参加者の情報を教えてもらおうとした。


「じゃあ私が」


 そう言いながら、1人の女が手を挙げながら出てきた。


「ありがとうございます! 貴方のお名前は何と言うのですか?」


「私はトーカ。第1小隊じゃあ狙撃手代表をやらせてもらってる。私たちは計9人だ。近接部隊4名、砲兵3名、狙撃手2名だ。よろしく頼むよ」


 トーカと名乗る女隊員は、頼れる雰囲気を感じた。


「ありがとうございます! トーカさん! よろしくお願いします!」


「ああ!」


「では次の方どうぞ!」


「え」


「おいおいラギルス。お互いの情報分かったんだから早く出撃しようぜ」


 ジャズがラギルスに出撃を急かす。


「ダメです! 1人1人紹介しなければ! あっ、もちろん第4小隊もですからね?」


「えぇ……」


 ラギルスの部隊はすぐには出撃できなさそうだ。




◇ ◇ ◇




「この部隊をまとめることになった。第1小隊近接部隊所属、グラルバだ。全員の所属は把握している。陣形や作戦も決めてあるから説明する。1回しかしないから聞き逃さないように」


 第1小隊、第4小隊の残りの隊員たちがいる部隊を仕切るグラルバは、淡々と説明をしていく。


「ちょっと待てよ!」


 この部隊に所属するマルクが話を遮った。

 その横にはファラグもいる。


「なんだ?」


「勝手に話進めてるけどよ。本当に俺達のこと――」


「第4小隊近接部隊所属マルク。武器は剣。少し短期な所があるが、同じ所属のファラグとの連携はピカイチだ。今回お前らのペアはかなり重要だ。いちいちキレて体力を削がないようにしろ」


 グラルバは、マルクの長所や短所などの詳細を話した。


「……チッ」


 何を言っても反論されると察したマルクは舌打ちを皮切りに口を閉じた。


「では作戦を伝える」




◇ ◇ ◇




 中隊が討伐の準備を進める中、森の中では、群れからはぐれてしまったフォーンが1体いた。


「……?」


 早く群れに合流しようとするフォーンの周りで物音が聞こえた。


 ザッザッザッと、まるで人間の足音のようだ。


「フォォオオオオッ!!!」


 フォーンは臨戦態勢並びに、威嚇の咆哮を上げた。




◇ ◇ ◇




「ん? アッチの方から声が聞こえた。行くぞ!」


 早々に出撃をしたレオは、フォーンの咆哮を耳にとらえた。


「おい! そんな1人で突っ走るな!」


 部隊が追いつかない程のスピードを出したレオを、スーリンは必死に呼び止める。


「クソっ……。部隊各員戦闘態勢! レオを筆頭に、フォーンを討伐する! そこの砲兵! 討伐中周囲の警戒を頼む。鳴き声からするにそこまで数はいないはずだ! 素早く仕留める!」


「お、応ッ!」


 スーリンの的確な指示により、部隊はまとまろうとしていた。


「何体いるか……なっ」


 一足先に鳴き声の元に向かったレオは目の前の光景を見てターボグライドを止めた。


「どうした! 何かあったのか!」


 スーリンと他の隊員たちもレオに追いついた。

 そしてレオの前にあった光景は――。


 あの倒木のように、綺麗に首が切られているフォーンの姿だった。




【グラルバ】

・性別:男

・役割:第1小隊近接部隊(メレー)

・年齢:19歳

・藍色の髪で、身長175cm。

・頭が切れ、状況判断も早いので、第1小隊で司令塔のような役割を持っている。

・武器:槍(スピア)

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