第13話 我儘


「こちらベルハラ。10時の方向、岩陰にモンスター発見。種類は『ジャイアントサーペント』と見られる。迂回するか?」


 先導するベルハラが、討伐任務とは関係ないモンスター、『ジャイアントサーペント』を発見した。


「こちらルリ。ジャイアントサーペントはB級だ。中隊の初陣にしては重い。迂回を頼む」


「分かった」


 ルリは安全策を取り、ジャイアントサーペントに刺激を与えないよう、迂回するよう伝えた。

 その指示を受けたベルハラは、右手に進路を変更した。

 すると、後続の第1小隊もそれについて行く。


「こちらレオ。何かあったのかい?」


 レオからルリに通信が入った。


「10時の方向、岩陰にジャイアントサーペントがいるようだ。右手に迂回して回避する」


「数は?」


「1体だと思う。群れないタイプのモンスターのハズだ」


「じゃあ討伐しよう」


「……本気なのか?」


「この中隊は、本来はB級以上を倒すために作られたんだ。倒さない理由がない」


「今回はフォーンの討伐だぞ」


「じゃあ何? 見逃して、スタンピードでコイツが現れたらどうするんだい? 明日かもしれないんだよ?」


「確かに一理あるが、隊員たちは心構えと準備ができてないだろ」


「ん? 何言ってるんだ。2人で倒すんだよ?」


「……は?」


「じゃあ先行ってるから。周りに被害出したくないなら一緒に戦うんだね! 君、騎兵に止めるように言ってくれ」


「おいちょっと待――」


 ルリが答えを出す前に、レオは通信を切った。


「どうした? 何かあったのか?」


 その様子を見たジャズが通信の内容を聞いてきた。


「ジャイアントサーペントを倒すと言いやがった」


「は?」


「ベルハラ聞こえるか? こちらルリ。今すぐ止まってくれ」


 ルリはすぐにベルハラに進行を止めるよう指示を出した。


「おいおい、まさかやる気なのかよ!」


 ジャイアントサーペントを討伐することを察したベルハラは、声を荒げる。


「悪いが少し離れていてくれ。俺とあのバカでやる」


「なっ……分かった。本来はフォーンの討伐だからな。怪我はするなよ」


「ああ、じゃあドア開けるぞ」


 通信を切ったルリは座席から立ち上がり、ドアを開けた。


「お前ら、何かあったら頼む」


 後ろを振り返り、近接部隊7人にそう言った。

 それに対し、7人は強く頷いた。


 ルリはガシャンと音を立て、力強くドアを開けて外に飛び出した。


 さて、アイツと軽くでも動きを話しとかないと……。


 第1小隊の車両を見るが、姿は見えない。


 どこいったんだアイツは。


「おっ! 早く早くー!」


 こちらに気づいたのか、どこかからレオの声が聞こえた。


 ……ちょっと待て。

 その方向はまさか!


 バッと声のした方を向くと、レオはジャイアントサーペントの目の前にいた。


「キシャアアアアア!!」


「…………はぁ」


 これから戦うというのに、ルリからはため息が出た。




『ジャイアントサーペント』

・難易度B級

・青色の体の巨大なヘビのようなモンスター。

・群れを好まず、岩陰に潜んでいる。

・全長8〜10m。

・猛毒を纏った牙で攻撃してくる。毒は皮膚に触れただけで、かなりの重傷を負ってしまう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る