第12話 共同任務


「……」


「ん? どうしたんだそんな顔して」


 結局こうなるか......。


「そんなに第1小隊僕らと組むのが嫌なのかい?」


「かなり」


 今日は難易度C級の『フォーン』の討伐任務を、第1小隊と第4小隊が受け持つことになっている。

 今は準備中であり、スクラープを探しているルリにレオが絡んでいた。


「まぁそう言わないでくれよ。確かにC級との戦闘経験は浅いが、どちらにしよ今後は常に戦うことになるんだ。いい経験になるだろう」


「……死んだら意味ないがな」


「死なせないよ。この僕が」


 自信満々にそう言って見せた。

 その様子を見たルリは、何も言わずにスクラープの元に向かった。

 レオも絡むのをやめ、自分のスクラープの元に向かった。




◇ ◇ ◇




 準備が整ったお互いの隊は、それぞれの車両に乗り始めた。


「おーいルリ!」


 ルリも車両に乗ろうとしたとき、またもやレオが絡んできた。

 レオのスクラープも量産型とは違い、カスタムが施されている。

 金色と赤色の2色で塗られており、いかにも王国の騎士のような見た目だった。


「お前の隊はこっちじゃないぞ」


「分かってるさ。改めて挨拶しておこうと思ってね」


 そう言うと、レオは右手を差し出した。


「第1小隊小隊長レオ、これからよろしく頼むよ」


「……」


 ルリは少し間を置くと、ゆっくり右手を差し出して握手を交わした。


「俺は左利きなんだがな」


「知ってるさ」


「フンッ」


 握手を数秒交わすと、ルリの方から手を離した。


「とりあえず俺らが先行するから、その後をついてきてくれ。標的を確認したら連絡する」


「分かったよ。それじゃ」


 レオは元気よく返事をし、自分の隊に戻っていった。


「……ねぇルリ、アイツ行ったんなら早く乗ってよ」


 ラトが入口から覗き込み、ルリに早く乗車するよう促す。


「ああ」


 ルリが乗ったことを確認すると、第4小隊の車両は、基地のゲートに移動を始めた。


「あの〜」


 近接部隊が乗る車両の中で、ラギルスが口を開いた。


「レオさんってどのくらい強いんですか?」


「うーん、ルリなら分かるんじゃないかな?」


 ダルカンはそう言って、質問をルリに流した。


「アイツはいい奴だ。だがこの世界じゃいい奴過ぎる。苦手、というより嫌い。だから俺もあんまり知らないが、確かスクラープの出力レベルは……」


「常に6だ」


「マジか……」


「そんな強かったんだアイツ……」


 かなりの強さに、ジャズとファラグは驚きの声を上げた。


「だが問題があってな……お前らアイツに挨拶されただろ? 準備の最中に」


 ルリの問いにみんなが頷く。


「じゃあラギルス。アイツをどう感じた?」


「え? どうって……言葉1つ1つに自信が詰まってるというか、キラキラしてて見蕩れるような、スクラープの見た目もあるんですけど、英雄や勇者のように見えました」


「そう。アイツはカリスマ性に溢れてる。更に強い。説得力もある」


「いいことじゃないですか」


「だからこそ、お前らはアイツに飲みこまれないでほしい」


「それってどういう……」


「まぁそのうち分かる。俺たちは俺たちの戦い方でいけばいい」


 緊張が走る車両は、目的地へと向かっていった。


『フォーン』

・難易度C級

・巨大な角を生やしている、シカのようなモンスター。

・群れで行動しており、ナワバリ意識が高い。

・全長3~4m、高さ3~5mほど。

・直線に、ものすごいスピードで突進する。

→パターンを覚えればかなり楽だが、数体がまとめて四方八方から攻撃を仕掛けてくるので、かなり厄介である。

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