第11-2回「二人っきりの宴席」
「アール君、もっと急いでよー」
うっすらと紫の色が
それを背にして、リリスはそわそわと体を震わせながら、早く早く、と
「ま、待ってよ。
「もう遅いってー。ほら、早くしないと締め切られちゃうよー!」
「ちょ、待っ・・・・・・わわっ!」
腰に付けたお金袋を
はあ、はあ・・・・・・。
彼女の足が止まったので、少しだけ
あの
「間に合った・・・・・・。ふう・・・・・・」
一つ大きく吐きながら、彼女はすっと視線を向けてくる。
「ま、間に合ったね。ははは・・・・・・」
「もう。着いたんだから、早く入ろうよ」
「そ、そうだね。ごめん・・・・・・」
つい今日の約束も忘れて、長話をしてしまった事も
中は、あの時よりも
それでも、聴こえてくる
そして、
ウェイターの方に2名だと伝えて
「
「そうだね。なんでもいいよ」
「分かった。すいません、冷たいお茶2つ」
注文を受けたウェイターさんは、ぺこりと頭を下げて、その場を離れていく。
「アール君はどこに座る?」
彼女の問いを受けてもう一度、机の周りへ目を向けてみる。
正直、どこに座りたいという気持ちはまったく無いのだが。
さて、どこにしよう・・・・・・。
「じゃ、私ここで」
彼女は隣の机に面している席に、ヨイショと腰掛ける。
それなら、ここはこう座った方が落ち着くか。
そう思いながら、彼女と向き合えるように対面の、柱を背にした側の席へと腰掛ける。
「アール君、どれにする?」
そうこうするうちに、今度は置かれたメニュー表を
言われるがままに、ずらりと書かれた料理の名前に目を通していく。
キャベツの酢漬けも、美味しかったな。
お茶から入るなら、ハムの盛り合わせなんかも、あったら良いと思うし・・・・・・。
気になっていた、南国瓜のポタージュも、今日を機に食べてみようかな・・・・・・。
「じゃあ、俺は・・・・・・。キャベツの酢漬けと、ハムの盛り合わせ5種にしようかな」
「いいね!私も酢漬けと、あとチーズにしよっかな。この5種の」
これでいこう、と選んでいった料理名に、彼女も笑顔を返してくれる。
これがきた後で、それからはどうしようかな・・・・・・。
と、またメニューと向き合いながら考えていると、頼んでいた冷たい麦茶が机の上に並べられていく。
その流れで、ウェイターさんにさっき決めた商品を注文していくと、彼女から、ある提案が飛んできた。
「アール君、ここのビール美味しいんだよ!せっかくだから、
「えっ、俺も?」
その言葉でふと、頭の中にこの前の、ぐでぐでに
それを呑んだら、俺もあんな事に、なるかもしれないのかな・・・・・・?
もしそうなったら、今日は2人だけなんだし・・・・・・。
頼んでも、大丈夫なのかな・・・・・・?
「う、うーーん。前みたいな事に、ならないかな?」
「大丈夫!私、初めて
「う、うーーーん・・・・・・?」
本当に、大丈夫なのだろうか・・・・・・。
でも、今日はせっかく、初給料で食べようって決めた、約束の場なんだし・・・・・・。
ここで断るというのも、なんだか嫌だな。
やけに自信を
「じゃ、じゃあ。ビール2つ」
「かしこまりました」
ウェイターさんの笑顔に、また不安な気持ちがよぎってくる。
本当に、大丈夫かな・・・・・・。
あんな形で、お互いめちゃくちゃに酔って、もう何もかも、分からなくなったりしたら・・・・・・。
俺、支部の皆に、顔向け出来ないぞ・・・・・・。
皆に迷惑をかけるような事だけは、絶対に避けないと・・・・・・。
「ほらアール君!そんな暗い顔しないで!楽しまないと!」
「う、うん。ははは・・・・・・」
なみなみに
こんな笑顔を向けられたら、とても後の心配だの、お酒が怖いだの、言い出せない。
リリスも、わざわざ誘ってくれたのは、こんな
なら、俺も今日は、パーッとやらないと。
「じゃあ
「お、おう!!」
突き出された容器に俺も
そのまま口をつけて、ごくごくと嬉しそうに喉を動かして飲んでいくリリス。
俺も、今は楽しくやる事を一番に考えないと、な!
胸の中でそう
グッと冷えた茶を、麦の香ばしい風味と共に、ごくごくと流し込んでいくのだった。
-続-
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