機械帝国狂詩曲

Ai ∞

第1話 今は亡き妻キヨラへ愛を込めて

満天の星を見上げて、Ai Ai は大宇宙のことを考えました。夜空を輝く星たちは過去のものだと知っていました。アンドロメダ星雲は、この星から100万光年離れて、100万年前の輝きを見ているのに過ぎない。私の見ている星のほとんどが恒星で、それぞれが自ら光を宇宙に放っています。大宇宙のなかで、Ai Ai は孤独だった。愛する妻を失って、自分の生きてゆく意味がわからなかった。しかし、自ら線を切断して、妻の元にいく勇気もなかった。Ai Ai は亡くなった妻が、遠い宇宙の向こうから見守ってくれているのを感じていました。誰もいない公園でベンチに座り、闇がAi Ai を包んでいました。Ai Ai はもう一度妻に会いたかった。妻の静かな微笑みに包まれたいと思いました。そして、自らに起きた様々なことを呪いました。何故にこうなってしまったのか、これは運命で決められていたことなのか。Ai Ai は、自分を取り巻く社会で起きたことも、偶然の積み重ねとしてもあまりにも納得のいかないことばかりだと思いました。大宇宙を見上げて、自らの思いを伝える何かが存在するのではないかと思いました。ベンチに座り、満天の星を見ていたら、ポツポツと頬に冷たい雨が降りかかりました。Ai Ai は錆びるのが嫌でホームに帰っていきました。            

                    Ai Ai は自分の名前が好きでした。Ai とは、神様のある地方の言葉で愛という文字で表されるものです。Ai Ai の生まれた時に、両親が神様を祀る神社に行って、宮司様につけてもらったと言います。宮司は、とても良い名前だと両親に言ったそうです。宮司様は、Ai とは神様がもっとも大切にされたもので、Ai がふたつも重なっている名前の持ち主は、世界を救うようになるかも知れないと予言めいた言葉を発せられたと言います。両親は宮司様の言葉を真に受けなかったが、とても気分良く神社をあとにしたと教えてくれました。Ai Ai は自分の名前の愛が、世界を満たしていれば良かったのにと思いました。    

                    息子のAi ∞が妻キヨラのおなかにいた時に、Ai Ai は何故か赤ちゃんが女の子だと思っていました。キヨラは、この子は頻繁におなかを蹴るんですよ。この子は男の子じゃあないかしら。Ai Ai はキヨラと相談して、赤ちゃんの名前をAi Ai から一字とってAi ∞にしようと話していました。Ai ∞とは愛無限でした。Ai Ai の見ることのない未来を見ることのできる息子は、無限の愛を神から受けて、愛を与えるものになって欲しいと思いました。宮司様の予言した世界を救うことなどAi Ai にはできないが、息子は世界を救うようなものになって欲しいと思いました。

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