第6話

改めて周りの人に挨拶しつつ自分の席に向かう。同僚たちは元気に返事してくれたり、ボソボソした声で返してくれたりまちまちだが皆一律に顔はパソコンに向かっている。僕の席は思ったより整理されていて乗っている書類やファイルの数は少ない。これならいけるかも、と思って勇んでパソコンを開くと大量のメールが届いていた。一瞬で覇気が萎えた。が、手をつけないわけにもいかず、わからないなりに処理していった。

悪戦苦闘しているうちに昼休みになった。この会社は食堂がなく、持参したものを食べるかその辺で買うかということになる。僕は後者を選んだ。外へ出るのはいい気分転換になるからだ。デスクワークで凝り固まった腰が重い。ストレッチをしつつパン屋へ向かい、サンドイッチとオレンジジュースを買う。勝手に祐介のお金を使っている。今は僕が祐介なので許してほしい。

ご飯を食べる幸せな時間は終わってしまい、また仕事が始まる。一回勝手がわかるとスイスイ話は進んでいき、順調に分量は減っていった。メールで返信する図表などを作る仕事は早々に提出したが、まだ直接上司に提出する仕事が残っている。その上司は一日目に僕に電話をかけてきた中林さんだ。どうしても気が向かない。しかしそれを終わらせないと僕は会社に釘付けだ。僕の中で盛大に論争が勃発している。うちへ帰りたくない犬さながらのスピードで僕は件の上司のデスクへ向かう。

「おや、旭川くんか。例の資料は終わったかね。」

「はい。こちらです。」

「ふむ。目を通すから自分のデスクで待っていてくれ。」

ひとまず第一関門、突破。

しばらくすると、中林さんがやってきた。

「うむ。問題ない。しかし、もっと早くに出してくれ。君のあとに何人の人が目を通さなくてはならないと思っているんだ。」

「はい。すみませんでした。」口では謝りつつ、僕は憤慨した。だって、その仕事、かなり前に始まっているのに前の人が留めていたから僕も遅れただけなのに。僕は半日で提出したのに、酷い話だ。そのままお説教は定時のチャイムが鳴るまで続いた。提示になって、「次からは気をつけるんだぞ。」というお決まりのセリフとともにお説教は切り上げられた。自分が帰りたくなったんだろう。

嫌な気持ちで僕は帰路についた。最後の出来事のせいでいい気分が台無しだ。帰りにスーパーに寄った。もう嫌なことは忘れよう。今日は僕の初出勤日なんだ。盛大な晩御飯にしよう。少しいいお肉を買って、僕はルンルンで家に帰った。

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