しっ尾7本目 変身の意味ないじゃん

「ペルソナが? なぜ……。 その姿すがた…もしかしてゆい?」

 おばあちゃん、おどろいてない。

「わたしよ! おばあちゃん」

 バレちゃった。というか、自分で言うしかなかったけど……ひとで分かってくれて良かった。

「ペルソナと〝約束やくそく〟してしまったのね? でも、どうしたの……ぎんさま。おられるのね、ぎんさま!」

 ぎんさんを知ってる? 

「お…お久しぶり…でございますわ。看恵みえさま……ああ、お会いするのはですけれど、やっぱりきんちょういたしますの」

 えええ、わたしの口からぎんさんの声が。

「あのね、あのねおばあちゃん。ぎんさんが、わたしの中に逃げて、お化けやっつけちゃって、ぶかくなっちゃって!」

 わたしの声だ。でも説明せつめいできない。どうしよう。

「落ち着いてゆいぎんさまがあなたの中に?……」

「とにかくコレをかみしなさい。ようりょくかくせるから」

「わたしのかみかざり…かくせるって」

「〝結界〟よ。あなたのかみかざりでようりょくれないようにするのよ」

「さすが看恵みえ様。手ぬかりがございませんわ。これであやかしたちにはワタクシを感じられないはず」

 またぎんさんの声で。こんなの人が見たら、どう思うんだろう。

「あら? ちょっと遅かったようね。周りを囲まれてるわ」

 おばあちゃん……。


[くれ]

[クレ]

[くれぇ]

[[[[ペルソナくれ〜]]]]


「「ヒェっっえええ」」

 ぎんさんとキレイにハモった。なかなか面白おもしろい、じゃなくて。い、いっぱいいる。えと、ええとたしかこう!

「えい!」

 えない……。

唯子ゆいこ? 何をやっているの?」

「先ほど、唯子ゆいこ様が両手を押し出すようにしてあやかしはじき消しましたの。さ、ゆいさまもういち!」

 言われなくても。

「えいえいえいえいえい。えい!」

 ダメだ…消えてくれない……ドどうしよう。

ぎんさん! ナンとかして! ようなんでしょお!」

「そう言われましても! ムリムリムリ無理! ムリこわい!」

「わたしのしないでよ、ください!」

「だから落ち着きなさい。それにしてもゆい、ハキハキしてるわねえ。ぎんさまも」

 パシッ パシッ

 この音。あやかしたちがペルソナをつかろうとしてるけど、かえされてる。

「結界がいてるわね。今のうちに、げましょう」

 おばあちゃんの結界ってすごい。こんなこともできるんだ。それならあやかしたちを押しのければ。

「おばあちゃん。わたしが先に行くから、ついてきて」

 って。あれ? 重い…大っきな岩を押してる見たい。

「動けない!」

「おかしいですわ? ワタクシのパワーなら、ぞうもないはずのに……」

「数が多すぎるのね、多分。……上へ逃げるしかないわ」

「おばあちゃん。上って、どうやって?」

ぎんさまなら、高くジャンプが。できますか? ぎんさま

「おまかせください」

ゆい、わたしをかかえてジャンプしなさい。ぎんさまと二人で、きっと上手うまくいくわ」

 ええと。かかえるって、こう?──おばあちゃんをお姫様ひめさまっこしちゃった。

「えいっ!」

 べた! すごすぎ。どこまで上がるんだろう。と、下は……。お賽銭箱さいせんばこを中心に、鎮守ちんじゅ全部妖あやかしたちで埋まってる!

「「やだキモい。ムリこわい!」」

 またぎんさんとハモっちゃった。

「あらあ。これじゃ動けないはずだわ」

「それにしてもゆいっこされるなんてね。長生きはするものね」

 ハハ。わたしも10さいでおばあちゃんをっこするとは思ってもみなかった。なんか、れる。

「もっと長生きしてね、おばあちゃん。もっと大きくなってわたし、っこ、いっぱいするから」

「それは楽しみだわ」

「あのう……和気わきあいあいのところ、申しわけありませんがあやかしが追いかけてきますの」

 ホントだ。空を高く飛べるのもいるんだ。

「急ぎなさいゆいぎんさまもお願いします」

 「「はい」ですわ」

 でもこの姿…〝変身〟っていうの? テレビとかなら、強くなって相手をやっつけるのに、ケモ耳娘になってげるだけなんて。


「〝変身〟の意味ないじゃーーーん!!」

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