しっ尾6本目 わたし変わりましたムリヤリ

〝初恋の人を探す〟って……。

の人なんて、生きてません。とっっってもムリ! こわい!」

  だいたい、〈めん清助様せいすけさま〉って、だれ?


「…あのう。〈めん清助様せいすけさまの今〉というのは、〈清助様せいすけさまのごそん〉をお探しください。ということですわ」

清助様せいすけさまは、この町の山奥でワタクシをすくってくださった方ですの」

「いつも、ご自分のお子たちの先々さきざきを心配なさっておられました……」

「ご自身がくなられたのちのことを……」

 なんだ。それならナンとかなるかも……。この町にいた人なら。

「……分かりました」


「ホントに? ですわ」

「ホントに……」


「ホントに…ホント? ですの」

 ? ねんを押してる? まだ、なにかあるのかな。

「はい…ホントにホント」

「……これで〝約束やくそく〟は成立しましたわ」

清助様せいすけさまについては、おいおい詳しく話すとして……」

「ちなみに、ですけれども」


「「え?」」


 同時におどろいたわたしとぎんさんの間はだいたい1メートルくらい。そのちょうど真ん中にけむり? もやもやしたものが……。

「あのー…け、けむりがあるんですけど」

「…ワ…タクシにも見えますわ……ヒェっ」

「「なんか顔ーー!!」ですわぁ!!!」

 けむりの中にゆがんだ目と鼻とと口とととーー!

[ペルソナヲォクレェェーー]

〝ペルソナをくれ〟? 気持ち悪い声──。

「ドドドどちら様ですの!? だだだダメですわ! アナタさまのようなあやかしと〝約束やくそく〟なんて、デデデできません!」

 あやかしってぎんさんと同じ妖怪ようかい!? ぎんさんが呼んだ…は、ないよね。びっくりしてるし……こわがってるし。──ん? 

 ようなのに? 〈  〉も妖狐ようこしてるのに!? わざわざアナタさまって言ってるし!!

ぎんさん? 早く追い払ってください! 強いんでしょ!」

「それに〝ペルソナをくれ〟って、どういうこと? ですか!?」

「ぺぺ、ペルソナの妖力ようりょくを、感じて来たのですわ。この力は悪いあやかしたちに昔からねらわれてますの!」

「そ、それにこわくてワタクシには無理ですのー! ゆいさま、お助けを! ヒェっ来る!!」

あっ、走って逃げた。あやかしも飛んで追いかけて行っちゃった。──銀子ぎんこさんて、弱い。まるでわたしみたい…。


「お助けをーゆいさまぁー!」

ええ! こっち来た! あやかしも連れて来た!! イタイ、まだ体が痛い。このままだとぎんさんとわたしがぶつかる。イタイ、けきれない。

「ストップ、ぎんさん、止まって! ストーップうう!!」

「お助けーー!!」

 ぶつかる直前に──思わず目をつむっちゃって…ゆっくり目を開けたら。ぎんさんがいなくて……。


[クレェェェェェ]


 きゃっ! あやかしがコッチ来る! に、逃げ、逃げなきゃ! でも、足がすくんでダメ、動けない。来る、来る!


[クレェェェェェペルソナァァァ]

「来ないでぇ!! ムリこわい!」


パンッ


 ?破裂はれつした音?……あやかしが、いない。わたし、いつの間にか両方の手のひらを突き出してる。

「今の音は……何?」

(ゆ…ゆいさまあやかしを消したんですわ。はじけて消えた音のようですの)

ぎんさん? どこ、どこにいるの?」

 声が聞こえるけど、姿が見えない。なんか、頭の中からひびいて来るような。それに、わたしがあやかしを消したってどういう?

(あのお…もうわけございません。あまりにもおそろしくて……ゆいさまの中に、かくれてしまいました………)

「なん…だ、と……いやイヤいや、アンタなに言ってんの? ですかーーー!」

(スススすみませんスミマセンすみません! ワタクシ、気が弱くて弱虫であんで、どーしてもおそろしくて!!)

 わかるけど、わかるけどわたしの中に逃げるなんて。思わず頭をかかえちゃっ、、た!! わたしの


「みみ、わたしの耳! にある!」

(け、獣耳ケモみみですわ)

「うで! 赤い! ぶかい! 手が、にくきゅう!」

(も、モフモフでぷプニプニですわ)

「あし! 赤い! すね!」

(ももモフモフですわ)

「しっぽ、 えてる! 先っぽ赤い! しめなわみたいになってるー!」

(ふ、フサフサですわ)

「なんでー!!」

(ぞ、ゾゾぞんげません、ですわワワワ!)


ゆい。そこにいるの? ゆい?」

 おばあちゃんの声。わたしを探しに来たんだ。今、この姿を見られたらムリこわい……。でも。


「おばあちゃん! 助けて」

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