しっ尾3本目 狐を被った狐(と書いて妖狐と読む)

「痛い……」

 石段を踏み外しておしりから転んじゃった。背中も痛い…石段の角で打ったみたい。

 もう動けない…終わっちゃった……。


「フー フー や、やっと追いつきましたわ。も…もももう、がしません、ですわ」


 変な日本語が後ろから聞こえる。こわい、というより………気味きみわるいい。

 痛みをガマンしてふり返ったら、赤い足。ハイソックスみたい。見上げるのも痛くてやっと……あ、ペルソナ。をかぶった顔? 鼻先はなさきも耳の先も赤くて、体は白い。というより、銀色? 尾っぽの先も赤い……。

 あぁ。死ぬ時は、冷静になれるんだ。さよなら、看恵みえおばあちゃん。さよなら、パパ、ママ。わたしの十年の人生。

 ……かりおもてくんに告白したかったな……。

「あの…その、ええと……わ、ワタクシをお呼びになられらっっ! ハウっ!」

 あ。舌かんでる。無理してていねいに言ってるからかな。それにみょうに横向いてしゃべるけど、なんで? ペルソナかぶってるのに。目をつむってるペルソナなのに? 見えてるの?

「なんか、痛そう」

 わたしは体が痛いけど……もう、死ぬんだからナンでも来いだわ。ヤケクソよ。


 ボソッ「…死なねえわよ…ですわ…」


「イエ、ししし失礼いたしましわ。わ…ワタクシはぎんと申しあげます。です…ですわ」

「このペルソナをお守りしております、ようでございますの」

「あなたの…お名前は?」

 ヨウコ…よう!? わたし、いまおそわれてるのよね? 頭のなかに〝?〟しかうかばない。おそってるようと自己紹介しあうのって、ハヤってるのかな。

 ボソッ「ンなわけ、あるかい。ですわ」

「は、はい? 今なんて?」

「ナナナ何でもございませんわ! 横を…向いているのは…そのー…事情がございまして…それに、しっかり見えておりますの。心の目で。ですわ」

「はい?」

 心、の目で……ですか。

「そう。──見るんじゃない、感じるんだ!……ですわ」

 それ…なんてコント? わたし今、おそわれてるのよねおそわれてるのよねおそわれてるのよね………。大事なことだから三回思いました…って、頭がコワレそう。

「ナンでやねん。ですわ」

「はい!?」

 ──このやりとり……も…しかして。わたしの頭の中、読めるの? やだ、ムリこわい!

「あ…あああ、これは失礼いたしましたわ。」

「あ…なた、さ…先ほどペルソナにお願いをされましたわよね?」

「ワタクシ、お願いをされた方のお考えがわかりますの…あの、お名前は?」

「………」

 どうしようどうしよう。思ったことが分かるなんて…考えちゃダメ考えちゃダメ考えちゃダメだ!

「だからナンでやねん。い…いえ、望月もちづきさま。あなたのお名前は?」

「! どうして! わたしが望月もちづきって分かるの!!」

「思っても、言ってもいないのに!」

 頭の中が全部知られるなんてムリこわい。変なことがドンドンおきてる…ホントどうすれば……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る