しっ尾2本目 キツネが生えた

 ──やっと夜になってくれた。ペルソナを持って急いで神社に来たけど。だまって家を抜け出して、おばあちゃんにバレてないよね。

 うーん。近所だからすぐ来ることできたけど、暗くてほとんど見えないな。昼間なら、まわりは木に囲まれていてとりが建ってて、境内けいだいまでの石段が続いているのが見えるのに。

 持ってきたライトで足元を照らして…ゆっくりがろう。

 もう一つのとりをくぐって。やっぱり境内けいだいは、シンとしているな。聞こえるのは風の音とゆれる木の音だけか。

 良かった、お賽銭箱さいせんばこがライトアップしてて。


 やっぱり夜の神社は、ムリこわい……。ううん、ダメダメ。せっかくここまで来たんだから、キツネのペルソナにお願いしなきゃ…。ガンバレぇわたし。

 お賽銭箱さいせんばこの上にあぶらげとペルソナを置いてっきな鈴を鳴らして…。ええと、たしか二回お辞儀じぎして二回、手を打つんだっけ……。


 ジャランジャラン ぺこり、ぺこり パンッ パンッ


「どうか、わたしの恋が実りますように。クラスメイトのかりおもてせいくんと両思いになれますように……」

 最後にもう一回、お辞儀じぎをして…。


 ぺこり


 これで良いはず……。

 かりおもてくん…。いつもわたしに、挨拶あいさつしてくれて良く話しかけてくれて……。ごめんね。返事がじょうにできなくて……。こんなわたしに優しくしてくれて…ありがとう。

 だから好きになったんだっけ。…ちがう。同じクラスになった時、ひとれしちゃったわよね、たしか。

 いけない、ペルソナを元にもどさなきゃ。早くしないと、おばあちゃんにバレちゃう。──って?

「アレ? ペルソナってこんなに明るい白色だったかな?」

 ──ちがう。ペルソナが光ってる! 光が、だんだん強くなってる!

「えええええ? ペルソナ……浮いた!」

 体が固まっちゃって目がはなせなくて。ながめていたらペルソナの裏からけむりが下りてきた。お賽銭箱さいせんばこの上に…うん? 何かの形に見える。……犬?


(ワタクシを呼んだのは、ダレ…だ? あ…な…た…?)


 ──わたし、走ってた。こわい。ムリこわい。もっとげなきゃ、アレから!

 なんでなんでなんで! こっそり持ち出さなきゃ良かった。だまってお願いしなきゃ良かった!! キツネお面ペルソナにお願いしただけなのに!

「なんで! なんでこうなるの!!」

 暗くて石段が見えない。ライト置いて来ちゃった! 走りにくい!

「お待ち!…に」

「来ないで! だれか!」

 もっと早くげたいのに!!

「お待ち!…にな」

 しゃべってるし!

「助けて!」

「なんでキツネお面ペルソナから! キツネが生えてくるのよぉぉー! ムリこわい!!」


「いえ! お待ちになってくださいましぃイィい!!」


 えッ 変な日本語!?

「キャッ!」

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