ペルソナの九尾 ☆引っ込み思案だけど…恋のためなら!二人で守ります!闘います !! ☆

左近ピロタカ

しっ尾1本目 ムリこわい

「いいか、ゆい。おばあちゃんの言うことを良く聞くんだぞ」

「うん…。ごめんね。パパ、ママ。一緒いっしょに行けなくて……」

 わたし、望月もちづきゆいは両親と都会へ引っ越すのをやめました。ゴールデンウィーク最後の月曜日の今日、家の前でパパとママとのお別れの朝。


「いいんだよ。ゆいにとってこの家が一番いいからね。おばあちゃんのそばなら安心だよ」

「そうね。それに…この家の、望月もちづきのおキツネさまが、きっとゆいを守ってくださるわ」


「うん…ママ……」


「パパとママの方こそごめんな。ゴールデンウィーク、転勤の準備でどこにも行けなくて」


「ううん……いいの。家にいるのが一番安心だから…。知らない所ってムリこわい………」


「そうか…。それじゃあ行くよ母さん」

「お義母かあさん。この子をよろしくお願いします。ゆい、良い子にしててね」


「ええ。転勤先で落ち着いたら、すぐゆいに電話するのよ」


 行っちゃった。車がもう小さくなってる…今日から、看恵みえおばあちゃんと二人暮らしになるんだな……。

 ホントにごめんね。パパ、ママ。あんなわたしで…。

 だって、知らない都会で転校するなんて絶対ムリこわいもの…。

 新しい学校で知らない人と話せない、ムリこわい。今のクラスでも、みんなと話すのこわいのに……。何も気にせず話せるのって、パパとママと、おばあちゃんだけ……。

 それに…。好きな人に告白できないで、ココをはなれるなんて絶対ムリ!

 明日の火曜日からまた学校か……でも、やらなきゃ。今日こそお願いしなきゃ。昔からうちにあるおキツネさまに……。

 どんなお願いもかなえてくれる、キツネお面ペルソナに…。

 だって、勇気が出ないもん。ちっちゃい勇気だけど……。神様頼かみさまだのみなんて勇気じゃないかもだけど………。

〈私の恋が、クラスメイトのかりおもてせいくんと両思いになれますように〉って。

 ──看恵みえおばあちゃんは、勝手かってにお願いするのはダメって言うけど、〝恋のお願いに使いたい〟なんて言ったらきっとしかるんだろうな……優しくてもきびしいから、そんな軽いお願いはダメって。でも仕方がないよね。わたしの人生がかかってるんだもの。

 コッソリ持ち出して今夜、神社でおいのりしよう。

 ──勝手に持ち出すのもダメだけど……。


「いきなり都会に赴任だなんて。ここからだと遠いわね」

「さて、わたしはお買い物に行ってくるわ。ゆいさみしくならないように、今夜はご馳走ちそうを作るわね。お留守番、お願いね」

「うん…アリガト、おばあちゃん」

かぎはしっかり掛けるのよ。じゃあ行ってきます」

「…行ってらっしゃい」

 看恵みえおばあちゃんの車も小さくなった。いつもなら一時間くらいで帰って来るけど、ご馳走ちそうの材料を買うならもっとかるはず。今のうちに!


 急いでリビングに。いつもならテレビボードの中の…あった。クッキーの青い缶。ソーっと取り出して開けて。

 キツネお面ペルソナ。あらためて見るとそれは銀色みたいな白で、耳の中と先が赤くて。ほほにも赤い線が入って、赤いアイラインがある目はつむってる。普通は開いてるはず…なんか、女の子みたいな顔。

 でも何で、クッキーの缶に入ってるのかな…?〝大切なじん〟っておばあちゃんはいつも言ってるのに。ホントは神棚かみだなとか、ほとけさまのそばとかに置いておくものよね?


 ──ホント、何でテレビボードの中に置いてあるの?

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