第2話 世の中のどうでもよい真理

「夜な夜な刃物を持ったおばあさんが目撃されるって」

「むむ! そいつが犯人の可能性があるな」


「頭が割れたスイカで、血のようなものを垂れ流しながら浮遊している男もいるって」

「恐怖! スイカ割り男ってやつか!! 任せて幽子(ユーコ)ちゃん。だいたいその手のパフォーマンスは犯罪を隠すためのトリックなんだ。冷静に対処すれば、謎はすぐ解ける」


自称名探偵は整った鼻を膨らませて、興奮気味にハンドルを握りしめる。

推理小説マニアらしいが、こいつの推理が当たったためしがない。


「コナミくん、昨日の土曜サスペンス観た?」

「小袋警部ゆけむり殺人シリーズだね、もちろんだよ」


「犯人わかった?」

「毎回毎回、悩むのだけど…今回も小袋警部に一本取られちゃったね」


どうすれば、あんな簡単な推理を外せるのだろう? 見所は推理よりも、ゆけむりに紛れる熟女の温泉シーンのはずなのだけど。


「そう、あのシリーズは開始10分以内に出てきた、一番ギャラの高そうな女優が犯人よ」


あたしがあきれながら、世の中のどうでもよい真理を教えてあげると、

「それはサスペンス劇場に対する冒涜だな」

コナミくんは憤慨しながら、サービスエリアにハンドルを切った。


「トイレ?」

「いや、ガソリン。幽子ユーコちゃんはトイレ大丈夫?」


あたしが首を振ると、車はサービスエリア内のガソリンスタンドにゆっくりと滑り込む。その瞬間ヒヤリと背に冷たいものが走り・・・禍々しい空気がスタンド全体をおおった。



うん・・・。

あーまた、あたし、どうやらまたやらかしてしまったようだ。

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