第10話モフモフのヨナガ
部屋の奥に進むと煉瓦作りの暖炉がある部屋に通された。暖炉に火はついていないが、暖炉の前にヨナガが座るには大きいロッキングチェアがあった。誰かと一緒に住んでいるのだろうか?
暖炉とは反対側の壁にダイニングテーブルと2人分の椅子があった。片方の椅子にはクッションが二、三個積み上げられており、ヨナガはその上に飛び乗った。どうやらそこが彼の指定席らしい。他に部屋にあるものといえば、壁に取り付けられた二つのフックだ。普段はそこに何か掛けてあるのだろうか?
「そっちの椅子に座りなよ。お茶を入れてあげたいけど、僕は犬だからね…」
ヨナガに促され、椅子に座る。
「いろいろ話を聞く前にまず君の名前はなんて言うの?」
「わたしは…」
言いかけたところで頭が真っ白になった。私の名前、そう名前はみんなそれぞれにあるもの。難しいことじゃない、ただ答えればいいの。あれ、でも、どうして何も浮かんでこないの?
そのまま俯いていると、視界に白い毛が入ってきた。
「大丈夫?僕を抱っこする?」
ヨナガが前足をちょこんと載せる。
「えっ?あ、大丈夫。なんかまだ頭が混乱しているのかな、うまく思い出せなくて。。」
「僕を抱っこするとリラックスできるかもしれないよ。お前を抱っこすると落ち着くってよく言われるんだ。さあ、どうぞ。」
抱っこしないと引いてくれなそうだ。ゆっくり両手でヨナガを抱き上げて、膝の上にに載せる。
「この町にくるまで、何してた?」
ヨナガは質問を続けた。確か、教室にいて、嫌いな奴から逃げたくて図書室に行って絵本を見つけた。それから私は屋上に。。。
そこでハッと顔を上げた。
「わ、わたし、屋上から飛び降りたのに。。これは夢なの?死んでも夢をみるの?それともここは天国なの?地獄なの?」
頭に酸素が通らないツンとした感覚に襲われる。すると、モフモフで温かい毛並みが手に触れた。
「大丈夫。ゆっくり整理していこう。君はここではない場所にいた。そして、何故か分からないけどこの場所に着いてしまった。合ってる?」
「そう、気づいたら道に倒れてて、あの変な奴らが追いかけてきて。あいつらは何なの?」
「僕らはあいつらを鬼って呼んでる。でも普段はあんな風に誰かを襲うことはないんだ。ただグルグルと街を回ってるだけ。僕もあいつらの事はよく分からないけど、近寄らない方がいいことは分かってる。」
なんで、私のことを襲うの?
疑問がぐるぐると頭を巡っていると、玄関の扉が開く音がした。
「あ、狩人が帰ってきた。」
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