第104話 ギャルとオタクのお友達
〜紗耶香視点のお話〜
これは、サヤが休憩時間に賄いの白身魚のあんかけとかを、やや遅いお昼ご飯として食べていた時の話────。
いわゆるたわいもないダベリ……雑談中ってトコ。
「紗耶香ちゃんと奏ちゃんは、わりとタイプが違う気がしたんだけど、二人はどうやって仲良くなったんだろうって」
コータ君のお父さんに、そんな事を聞かれた。
確かに以前はもっと派手なタイプの子とつるんでた。
カナデっちは昔は地味に髪の毛を後ろで一本に結んでて、顔かわいいのに、もったいない事してた。
ラウルさんに会って、かわいくした方がいいと言ったら、わりと素直にポニテなどに変更した。
仲良くなったキッカケね、隠すような事でもないし、アタシは今は遠い、学校での事……過去を思い出しながら話す事にした。
「高校の美術の時間にクジ引いてー、ペアになった相手の似顔絵を描くって授業があって、カナデっちとペアになったんですケド、すっごく絵が上手かったんです。アタシの事、すごく綺麗に描いてくれて嬉しくて、ありがとって言ったら、顔が整ってる人は描きやすいから、こちらこそありがたかったって、言うんで! なんか感動して、いい子だな! って思ったんで!」
「ああ、なるほど、似顔絵かあ。
食堂のメニューの手描きイラストも上手だよね、カナデちゃんは」
「そーなんですよ、絵が上手いし、かわいいし、料理も出来るし、サヤが男なら嫁にしたいくらいですヨ〜〜」
「あいつ黙っていたら清楚系にも見える、わりとかわいい顔してるけど、口を開くとけっこうアレだよ!」
ランチを食べて、お茶を飲んでいたコータ君が口を挟んで来た。
「こうやって、コータ君はたまに憎まれ口を叩くけど〜〜、多分仲良い証拠ですヨ」
「ははは、そうか、いい子達が友達でいてくれてよかったな、浩太。
でも女の子をけっこうアレとか言っちゃダメだぞ」
「まあ、そうなんだけど〜〜」
そう言ってやや不貞腐れるコータ君はなんだか軽く拗ねてるような……久しぶりにお父さんとゆっくりたわいもない会話ができて、甘えているのかもしれない。
逆にたしなめてほしくて変な言い方した可能性まである。
ちなみに今、カナデっちとコータ君のお母さんはクリスとライ君のお迎えに、日曜学校に行っている。
読み書きと簡単な計算くらいは出来た方が良いから。
「そろそろ休憩時間も終わりだ、食堂に戻ろう」
「は〜〜い」
本当にね。カナデっちは良い子だよ。
コータ君がいくら両親を早く助けてあげたいからと言って、一気に経験値稼ぎたいからって、ドラゴン退治に参加するって言った時は、正直正気かな!? って思ったケド、目は限りなく真剣だった。
カナデっちも、そんで、そんなコータ君に、仕方ないなあって、ドラゴン退治なんかに、付き合ってくれるんだから。
とっても、優しいよ。
マジで友達、幼馴染? を、ほっとけないんだなって。
ぶっちゃけ食材買うスキルと治癒スキルだけでも、もうこの世界で生きていけたと思うしね。
見捨てる事も出来ただろうに。
だからアタシも、本当に良い子の友達は、大事にしないと。
見た目だけじゃなくて、ホントに、優しい子だし、守りたいって思う。
家と違って、愛されて育って来た子だと思う。
アタシの家はどうしようもない父親は女作って逃げたし。
水商売の母親は料理しないし、小銭放られて、育った。
料理に興味無かったとかもあるかもだけど、きっと疲れていたんだし、小銭をたまにくれるだけでも、マシだった。
学校の外で会った年上の友達が、よくご飯を食べさせてくれた。
流石に同級生にただで食べさせて貰う訳にもいかない。
男の人は食事を全部奢ってくれた。
ファミレスでも近所のラーメン屋だって美味しく食べられるトコならなんでも良かった。
サヤがかわいいからって。
両親とも、容姿は良かったから、その遺伝子にだけは感謝してる。
そのうちバイトを始めた。
コンビニとかスーパーとか、コンビニは昔、廃棄貰えてよかったな。
食べ物扱っているトコなら、安く手に入る事が有るから。
そんな昔の事を思い出しつつ、今日のまかない。
白身魚のフライもあんかけも、美味しく食べた。
さて、仕事だ、仕事。
ウエイトレスの仕事は嫌いじゃない。
皆んな賑やかで、うちのお店の美味しい物を食べて、幸せそうだ。
──ま、国中今は喪中なんだけどね!
これに懲りたら、新しく王様になる王子様は、異世界から勇者召喚するのは、ガチでやめて欲しいよネ。
アタシみたいなのならともかく、愛されて育った子が、親から急に離されるのは、可哀想だし。
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