第75話 色分け

「ああっ!!」

「ど、どうしたの紗耶香ちゃん!?」

「水魔法のスキルに鏡面ってのあって、邪悪な視線を跳ね返すってあるんだけど! 

バジリスクの石化視線や魅了の視線などに抵抗出来るって書いてある!」

「やった!」



 コウタが素直に喜びの声を上げた。水をさしたくはないけども、


「でも、それは発動が遅れたらやばくない?」

「えーと、じゃあ最初っから発動して行く?」

「そんなにその魔法は長時間持つの?」

「えーと、集中力の問題らしい」



 紗耶香ちゃんはステータス画面のスキル説明を読んでいる。



「それは……修行……するしかないな」


「とにかく、切り札があっても、慢心はしないようにしようね」

「そうだね」


「ひとまず、竹細工は、この世界にあっても違和感無いし、作っておいて損はないよな。

頼んでおいて、やっぱりいらないとは言えないし」

「売り物に出来るよ。あのワッパの弁当箱とか渋くてかっこいいし」



 職人の苦労を水の泡にする事は出来ないわ。



「水魔法は毎日お風呂で修行するよ。

丸い水球を浮かべて維持するって修行があるんだって」

「失敗して水球がバシャンってしても風呂の中なら風邪もひかないかな?」

「そういう事〜〜」


「それにしてもこのフワリと言うシマエナガそっくりの鳥、かわいいよね」

「ああ」

「ガチできゃわわ」


 三人の肩に乗ってて目に入る度にかわいいなって思う。


「コウタのスキルでレースの追加仕入れ出来るってソフィアナ様に連絡入れる?

今なら伝書鳩ならぬ伝書鳥の妖精がいるし」


「そうだな。レースの他に、タオルも買おうと思う」

「いいね! 普通サイズとバスタオル、自分達のと子供達のと来客用と販売用?」

「ああ、そのつもりだよ」


 紗耶香ちゃんの言葉に頷いて、コウタは早速ステータス画面を開いて、ショップ画面に移動し、仕入れを始めた。


「あ、それ! 貴族用に高級タオルも仕入れようよ」

「ああ、これか」


 紗耶香ちゃんがコウタの背後に回って一緒に画面を見てる。

 そんなに背中に……ひっつくと……おっぱいが当たりそうなんだけど……。

 あの男、何故か平然としているな。


 ちなみに鳥は頭の上に移動している。


 コウタはかわいいレース全種類と一般人用のタオルと貴族用に高級なタオルをごそっと仕入れた。


 *


 「ところでフワリと言う妖精にも名前つけないとね」


  私は昼食と夕食の食材を選びつつ、そんな話題をふった。


 「私は白雪にする」

 「え、どうしよう、そもそも雄とか雌とかも分からないぞ」

 「雌雄なしって書いてあるからどっちでもいいんじゃない?」

 「え、じゃあ、えーと、俺のは白羽」

 

 「二人ともわりと見たままの名前だね」

 「えへへ、分かりやすいと思って」


 「特に思いつかないからさ」

 「じゃあサヤもバニラにしよ」

 「美味しそう」

 「あはは、食べないでよ〜〜」

 

 「ところで今日のランチ何?」

 「色々ゲット出来たお祝いに海老フライとかどう?」

 「やった〜! アタシ、海老フライ大好き!」

 「俺も海老フライは好きだ」

 

 「ケーキは? カナデっち、ケーキもつく?」

 「じゃあ今日のケーキは、白い、イチゴの生クリームケーキにしよう」

 「やった〜!」

 「意義なし」


  子供達もきっと喜ぶよね、なんたってケーキと海老フライだし。

  

  私は山と積まれたタオルを見て、ふと思い出した。


 「あ、子供達のタオル、油性ペンで名前書かせて。洗濯するとどれが誰のだか分からなくなる」

 「子供達は……文字はまだ書けないだろう」


  あ、そうか。


 「あ、じゃあサヤが代わりに書くよ」

 「ありがとう、紗耶香ちゃん。

ところで文字って日曜に教会で開かれる学校で覚えるもんだっけ、こっちの人は」


 「ああ、確か平民はそう」

 「とりあえずタオルだが、分かりやすいようにピンクと黄色と薄紫は女子が使えよ。男は青や緑系を使う」


 「りょ。でもサヤ、その濃いブラウンのバスタオルも使いたい」


  生理の時用に濃いのが欲しいのね、ピンと来た。


 「分かった」

 「じゃあ〜〜私は濃い、赤、えんじ色のやついい?」

 「ああ、使いたいのを手に取ってくれ」


  コウタもアホじゃないから、詳しく説明せずとも、なんとなく察してくれたっぽい。

  

  

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