第68話 剥ぎ取りとレベルアップ

「このトンボの魔虫は羽と眼球が素材として売れるぞ」


 ラウルさんが素材の事を教えてくれた。


「へえ、羽根はともかく眼球は何に使うんでしょうか?」

「確か薬の材料だ」


 ええ〜〜。

 何のお薬かは知らない方が良さそう。


 お花摘み(トイレ)と嘘ついて紗耶香ちゃんと二人で少しラウルさんやリックさんから離れた。

 その隙に紗耶香ちゃんはステータスを見た。


 でもいい加減、あの二人にだけは我々の事、洗いざらい全部話してもいい気がする。


「さっきのトンボでレベルが5上がったんで、あと、レベル5上がれば異世界人レベル30でマニキュアに届く件」


「なるほど」

「じゃ、戻ろうか、森で男子から離れていると心細いし」

「うん」


 *


 やっぱステータスなんて家で確認すれば良かった!

 仲間の元に戻る途中に一匹のゴブリンに遭遇した!

 はぐれゴブリン!? それか斥候!?


 ゴブリンは短いナイフを持って私達に襲いかかって来た!

 私は足元の土を蹴り上げて目潰し攻撃!


「ギャアッ!!」


 ゴブリンは悲鳴を上げ、怯んだ。


 紗耶香ちゃんはアイテムボックスから竹槍を出した。

 リーチが長い!


「やあっ!!」


 槍を手にしても突くという動きに慣れてないせいで、竹槍としては使い方がちょっとおかしいかもしれないけど、紗耶香ちゃんは頭部を狙って横殴りにした。


 バシッ!!


 槍というより竹刀を振り回しているっぽい攻撃だったけど、一応ダメージは入った!


「南無三!」


 頭を押さえ、よろめいたゴブリンの無防備な腹に、紗耶香ちゃんが槍を突き刺した!


「ギャアアア!」

「トドメ!」


 私は倒れたゴブリンの頭をナタでガツンとやった。


「え、絵面がホラー過ぎる!」

「あ、でもサヤ、今のでレベル上がった!」


 ピロロンと、私の脳内で音が鳴る。

 すぐさまステータス確認!


「とうとう異世界人レベル30! サヤ、これでマニキュア買える!」


「私も! いつの間にか異世界人レベル30! でも狩人のレベルはまだ7くらいだわ」

「せめて攻撃ジョブのレベルも30くらい欲しいよね〜〜」

「だね」

「ねー、カナデっち、バジリコの森って推奨レベルいくつくらい?」


 そんな美味しそうな森だったらどんだけ良かったか。


「バジリスクだよ、紗耶香ちゃん。推奨レベルは知らない。でもなんとなく狩人レベルも30くらい欲しい気がする」

「あ、そうだ、バジリスクだった」


「おーい! 二人とも! 大丈夫かー!?」

「あ! 私達を探してるみたい!」

「はーい! 今行きま〜〜す! 無事でーす!」


「ゴブリンの声が聞こえたから心配したぞ」

「なんとか倒したよ、出たのが一匹で助かった」


「あれ、そういや水木さん、竹槍なんか持ってたのか?」


 紗耶香ちゃんの手にある竹槍に注目してるコウタ。


「こないだ庭に置いてた竹のストックからライ君が作ってくれた。軽いから扱いやすいだろうって」

「そっか、ライ、ありがとな」

「ハイ」

 

「ゴブリンはどうやって倒したんだ? 二人ともビビりだから接近するの怖かっただろう?」


「コータ君、ビビりは余計だよ〜〜本当の事だけど!」


 紗耶香ちゃんがそう言ってほっぺを膨らます。可愛いかよ。


「生物共通の弱点は目だって本で読んだから、普通に目潰し、私がまず土を蹴り上げたんだよ。

それで怯んだとこに紗耶香ちゃんが竹槍で攻撃」


「なかなかやるじゃん、二人とも」

「まあ。これでも少しは経験値稼いでるからさ」

「だよね〜〜」


「どうする? 今日はこの辺にしとくか? まだ頑張るか?」



 ラウルさんが空を見ながら問うて来た。なんか雲が増えてどんよりして来た。

 コウタも空を見ながら口を開いた。



「帰り道も馬車を預けた所まで歩きだし、何か天気が曇って来たし、戻りましょうか?」

「いいの? コウタ」

「ああ、森を歩くだけでも多分体力はつくよ」



 多分女子の私達に気を使っているんだろうな。

 でも、無理するよりいいよね。命大事に。

 


「あのトンボの羽根って買い取り高いんですか?」

「羽根一枚で銀貨一枚だぞ」

「まあまあいいですね。俺達が四枚、リックさんとラウルさんが二枚ずつで良いですか?」

「俺は美味い飯食わして貰ったから別にいいけど」



 ラウルさんは報酬がいらないらしい。蕎麦と芋出しただけなのに。



「代わりに森から出てもう一回食わしてくれたら、俺もトンボの素材の取り分はいいや」

「そうなんですか、じゃあ、家でまた何か美味しい物を出しますよ」



 私の言葉に紗耶香ちゃんがすぐ反応した。



「今日の夕食何〜?」

「麺類は昼に食べたから、ご飯と焼肉にしよう。決め手はタレだよ!」

「やったー! 焼き肉!」



 紗耶香ちゃん、大喜び。



「タレがそんなに美味いのか?」


 リックさんはただの焼いた肉発言にガッカリしたのかな?


「はい! とっても! タレだけ飲んでも美味しいくらい」


「「そんなに!?」」


 ラウルさんとリックさんの驚きの声がハモった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る