第67話 焼き芋とお蕎麦。

 紗耶香ちゃんはあと、レベル10上がればマニキュアが買える。

 私らも鍛えに行かないとね。

 って事で、森へ修行に来た。


 リックさんとは焼き芋やるって約束してたので、ついてきて貰った。

 リックさんは今回もラウルさんを呼んでくれてた。


 何故かって言うと、我々が新人のくせして、敵を匂いでおびき出すとか言うから、心配して来てくれたらしい。

 そうだよね、普通に無謀だって思うよね。


 川の側で焼き芋をすることになった。

 かなりここならそこそこ周囲も見渡せる。


 私達は落ち葉を集めてアルミホイルで焼き芋を包み、落ち葉の中に投入した。


 これから火を点ける。


「焼き芋を焼くので、周囲の警戒をお願いします」



 こんなに緊張感がある焼きが、かつてあっただろうか?



「浅い場所ならそんな凄い敵が出たりはしないと聞いたので、イケると思ったんで」


「そうは言うがな、たとえゴブリンクラスでも数が多いと大変なんだぞ」

「そうですが、敵を探して回るのも時間かかるなって」

「魔獣狩りってそれが普通だぞ」



 コウタは先輩冒険者と一緒にそんなトークをしつつも、集めた落ち葉達が燃えていく。


 火の消火用の水も、川がそばにあるので、まあ、大丈夫でしょう。

 草の上じゃなくて土や砂利の上だし。



「ところで、その銀色の紙は何なんだ?」


 リックさんが当然のように聞いて来た。

 やばい。


 アルミホイルはコウタのスキルで買ったものだけど、ラウルさんにまで、聞かれた。

 俺も気になっていた、と。


 なんとかごまかそうと、私は口を開いた。


「アルミホイルって言って、料理に使えます。

とある錬金術師の作品なんですよ〜〜」


 と、言う事にしておいた。


「へえ~、凄いな」



 納得してくれた。


 良かった。


 そうして、敵襲もないまま、焼き芋は無事に焼けた。


「焼けました! 食べましょう! 周囲の警戒はしつつ!」

「おう!」

「ヤッター! 焼き芋! テンアゲ!」



 紗耶香ちゃんもテンション上がってる。


「これは……甘い! そして美味い!」



 リックさんが最初に驚きの声を上げた。

 次にラウルさん。


「こんなに甘い芋は初めて食べたな!」

「ああ、驚いた!」



 我々は森の中で、美味い、美味いと、ホクホクで温かく、ねっとり甘い焼き芋を堪能した。 


 食物繊維を摂取した!



「甘いのの次に、お蕎麦をどうぞ」

「この細い紐みたいなのを黒い汁につけて食べるのか?」

「はい」


 我々は大丈夫ですよ! のアピールで先に食べて見せた。


 美味しい。

 薬味はネギときざみ海苔と、生姜。

 竹の器やコップが早速役に立った。


「む、こっちも美味いな」

「ああ、美味すぎて戦闘訓練どころかピクニックに来たみたいだ」

「食べたら、その後は頑張りましょう!」

「ああ、そうだな」


 ライ君がさっと麺つゆの入ったコップを地面に置きながら言った。



「何か来ます、上です」


 私も慌てて蕎麦を食べ終えた。

 元々今日は早食い気味だった。


 来た! 本当に上から!


 ぎゃー! 巨大トンボが二匹飛んで来た! 


「よりによって虫系じゃん! 最悪なんですケド!」


「ムカデより若干マシ!」

「ホントにマシ!? 飛んでるけど!」

  

「見た目の話!」

 

 私と紗耶香ちゃんがキャーキャー騒いでいる間も、男性陣は、ちゃんと巨大トンボに攻撃をしている。

  

 襲って来た所を確実に返り討ちにしている。

 大きな羽根が切り落とされ、地に落ちる。 


「ほら! 水木さん! カナデ! トドメ!」



 見れば男性陣が巨大トンボの胴体を足で踏みつけて、もはやトドメ待ちの状態になってた。


「キャーッ!! マジごめん!」



 沙耶香ちゃんは叫びながら斧でトンボの頭部の付け根を攻撃!


 私もナタで首?を攻撃!


「頭取れた!」


 怖い! 自分でやったけど!

 


「ピロロン!」



 沙耶香ちゃんが自分の口でそう言った。

 つまり、レベルは上がったんだね!


 トドメ刺しの美味しいとこだけありがたく貰ってしまったけど!


 私の方は……今回は鳴らなかった。

 レベルが低い方が上がりやすいとかが、多分有る。


 私は最近クレリックのジョブがついたばかりだし、こんなもんだろう。


 コツコツ積み重ねでまたそのうち上がると思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る