第63話 意外なご褒美

 馬車を引きとって森から家に帰る途中で、なんと女性のエルフを見た! 

 冒険者風の服を着ていた!


 金髪のサラサラロングヘアーにグリーンアイズ!

 超美しい!


 あっと言う間に馬に乗って通り過ぎて行ったけど!

 感激!! 今まで物語の中の存在だったのに、凄い!



「この世界、エルフがいたんだな!」

「私もエルフに会えて感動した! やっぱり凄い美女だったね!」

「マジヤバ、美しすぎる」


「主、ドワーフもイマスヨ」


「おお! やっぱりいるんだな!」

「マ!?」

「ライ君、ドワーフってやっぱり鍛冶屋にいるの!?」

「ハイ、デモ冒険者にもタマニイマスヨ」


 わー! 

 我々はエルフとドワーフの話題で盛り上がりつつ、帰路についた。


 森で偶然会ったクラスメイトの話題は、三人ともあえて避けた……。




 そして帰宅後。

 コウタは真剣な顔をして言った!



「冬支度用に豚肉買ってたし、圧力鍋も買った。

いつ死ぬか分からない修行してるから、とりあえず今日豚の角煮作って食おうと思う」

「それは……確かに」


 そんな訳で、圧力鍋で時短してコウタは豚の角煮を作った。

 私は米を炊き、紗耶香ちゃんはワカメスープを作った。



「豚肉ホロホロで美味しい!」

「味が濃厚、美味。今日はサヤ達優勝したね」

「うまーい!」

「美味しいデス」



 四人で角煮とご飯とワカメスープを美味しくいただいた。


 *


 食事の後で、ステータス画面を開いていた紗耶香ちゃんが、急に叫んだ。


「ああ────っ!!」

「ど、どうしたの!? 紗耶香ちゃん!」


「スキルショップになんか良いセールやってないか覗いたら、めちゃくちゃかわたんなレースが祝レベルアップ! 特別入荷! って書いてあって、レースが買えるんだよ! 美容品や化粧品じゃ無いのに!!」


「祝レベルアップ!? こっちのレベルアップを把握してそんなんあるんだ!

わあ! 可愛い刺繍レースだ! 自分でも欲しいけど貴族に売れるレベルの!」


「マジヤバレベルでかわたん! 買うしかないっしょ! 

1メートル300円。1デザインにつき5メートルまで。

かわたんレースが5種類あるよ。どんくらい買う?」


「全部だよ、買えるだけ全部。レベルアップ報酬の限定物なら買える時に買わないと!

チュールレースの両端に花の刺繍。このクオリティ、こっちじゃ見ないわ」

「おけ」


「しかし、どこで仕入れたって聞かれたらどう説明する?」


「えーと、たまたま偶然エルフの行商人に売って貰ったとか言っとく?」



 私は今日エルフの存在を知ったので、設定を捏造させて貰おうと思った。



「なるほど、行商なら移動してるし、次はおそらく無いって言えるな」

「カナデっち、でも名前聞かれたらどーすんの?」


「うんと……ディアンとでも言っておこうかなって」

「男のエルフか?」

「旅の商人エルフなら男の方がいいと思うから」



 紗耶香ちゃんはショップから購入ボタンを押した。

 しばらくして可愛いレースが魔法陣から出て来た。



「はい! 購入した〜〜! てか、このレース、貴族に売ったらやっぱりドレスに使うのかな」

「そうだね、やっぱりドレスとかリボンとかじゃない?」

「ぜひ着てるとこも見せて欲しいよね〜〜」


 だよね〜〜! と、私も同意しつつ、レースについて思い出した事がある。


「そう言えばあっちにいた頃、本で読んだけど、レースが手編みの時代は高価な物だし、ドレスからレースを外して侍女やらに下げ渡すらしいよ。

そんでレースは他のドレスに再利用。

このチュールレースに刺繍が付いてるのはちょい難しいかもだけど」


「へえ、貴族でもレースは再利用するんだ〜〜」

「手編みじゃ死ぬほど手間かかるもんね」

「あーね」


「明日も悪いが俺は修行の為にライと森に行く」

「一日くらい休まなくて大丈夫?」

「夜はしっかり寝るから大丈夫だ」


「じゃあ私達はリックさんが市場に来たら貴族に売りたい物があるって言付けよう」

「そうだね、ぶっちゃけこのレース、売らずに自分で持っていたいくらい可愛いけど、絶対高く売れるから……売ろう」



 紗耶香ちゃんも本当は売りたくないんだね。

 でもお金は大事だしね。



「またレベルアップ記念で可愛いのが来るといいね」

「うん。ところでさ、コータ君やカナデっちの方には何かレベルアップ記念で買える物ないの?」


「あ! そう言えばそうだね! 私も見てみる!」

「俺も」

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